(書評)
『モーラとわたし』
著者 おーなり由子
私にも「モーラ」のような何かが見えていた時期がある。
*
モーラは
おとうさんと
おかあさんには
みえない
だから ごはんのとき
モーラが
となりに すわっても
きがつかないの
(『モーラとわたし』)
*
私に見えていたのは変な物体だった。それに名前はない。それは縛られているのか、手足がないみたいで、ある部屋の天井から50センチほど下、一本の縄か何かで吊るされていた。人間のようだが、よくわからない。よく見ないからだ。見たくなかった。それが生きているのかどうかも、わからない。
それは、私がある部屋に独りでいる時、必ず現われるのだった。独りでいる時にしか現れなかった。私は、本当は、それがいないということを、ちゃんと知っていた。しかし、怯えた。
色は黄色だった。
GOTO ミットソン『いろはきいろ』『いろはきいろ』トップページ
(終)