ヒルネボウ

笑ってもいいかなあ? 笑うしかないとも。
本ブログは、一部の人にとって、愉快な表現が含まれています。

『冬のソナタ』を読む 「道に迷う小鳥」(下p5~23)

2024-12-19 02:03:52 | 評論

   『冬のソナタ』を読む

   「道に迷う小鳥」(下p5~23)

1 ベンチ

柔らかいサンヒョクが硬くなり、強かったミニョンが優しくなった。

ユジンのせいだぞ。

ミニョンとユジンは並んで雪の上を歩いた。すでに長いこと外のベンチに座っていたユジンの体は冷え切っていた。寒いことも忘れてしまうほど、何をそんなに考えこんでいたのだろう。ユジンのそんな姿はミニョンを切なくさせた。

(下p8)

で、どうする? 

ミニョンは自分のマフラーを首に巻いてやった。

(下p8)

マフラーだよね。

ミニョンにはユジンが何を悩んでいるのかがわかっていた。生きていると必ずぶつかる多くの分かれ道。人々はその分かれ道に差しかかったら、辛く苦しくても、一つを選択しなければならない。ユジンは今、その選択の分かれ道に立たされているのだ。

ミニョンがユジンの手を握ろうとした。その手を避けるために後ずさりするユジンに、ミニョンは一歩近づいて手をしっかり握りしめた。そうすべきだと思ったのだ。

「決めづらいときは、摑(つか)まえてくれる方に行くのも悪くないですよ。今みたいに」

ミニョンは何も強要しなかった。決めるのはユジンがすることだ。

(下8)

本当は決まっているんじゃないの? 

(終)

 


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(書評) 『今だから話せる『冬のソナタ』』(ワニブックス)著者・キム・ヘスク 翻訳・うらかわひろこ

2024-12-13 00:03:29 | 評論

   (書評)

   『今だから話せる『冬のソナタ』』(ワニブックス)

   著者・キム・ヘスク 翻訳・うらかわひろこ

チュンサンは死ぬべきだったのか。

主人公の死で物語が終わるという構成は、安直だろう。

しかし、チュンサンは主人公ではない。主人公はユジンだ。

ラスト・シーンをどうするかということについて、ユン・ソクホ監督は相当悩んでいらっしゃいました。

『秋の童話』では主人公のソン・ヘギョさんだけでなく、ソン・スンホさんも死んでしまう終わり方だったので、今度はチュンサンを死なせていいものがどうしようかと、ぎりぎりまで悩まれていたんです。

最終回の外島(ウェド)のシーンを撮り終えたのは、放送日ぎりぎりだったそうです。朝一番に島へ渡って撮影し、戻ってすぐに編集しなければ間にあわないほど、最終回の放送日が迫るプレッシャーの中で、制作が進められていました。

確か最後の放送は、スタッフやキャストが江南(カンナム)のどこかのお店に集まって、打ち上げを兼ねてみんなで放送を観た記憶があるんです。最後がどうなるかは、その撮影に参加した人しか知らなかったので、外島が映ると「これはどこ1!?」と騒然となりました。あまりにも美しい風景だったので、外国なのかと思った人もいたんですよ。そもそも、私達はチュンサンが死ぬのか死なないのかもその時までわからなかったので、1シーン1シーン息を飲むように見守りました。

本当に何も知らされていなかったものですから、“不可能の家”でチュンサンの足元がアップになっても、なぜそんなカットが入るのか、また彼がなんの為にそんな行動をとっているのか、最初はさっぱりわからなかったんです。

やがて、チュンサンの目が見えなくなってしまっていたことがわかって……「神様、なんてこと!」と思って泣きました。チュンサンとユジンが再会したシーンでも嬉しさのあまりボロボロと涙が。当然みんなも泣いているわよね……とあたりを見回すと、感極まって泣いていたのは、なんと私だけでした。

 (「第1章 「冬のソナタ」秘密のエピソード」)

『秋の童話』で二人が死ぬのは、無理ではない。

「汝を許す」

熱狂的なファンからはウンソの救命運動だけでなく、ウンソとジュンソンのハッピーエンドを願う声とウンソとテソクが結ばれることを願う声が集まり、連日HPの掲示板は大賑わいで、あまりのアクセスの多さにサーバーダウンすることもあった。

(韓ドラ・フレンズ『韓国ドラマの謎『冬のソナタ』愛の真実』)

『秋の童話』型だと、ユジンも死ぬことになる。そんな話は無理だろう。

『冬のソナタ』の最終回が近づく頃には、KBSのホームページ掲示板に連日一万件近くの書き込みがあった。そのほとんどがチュンサンを殺さないでという助命やチュンサンとユジンの愛を成就させてあげて欲しいという嘆願で、なかには「ハッピーエンドでなかったらKBSを爆破する」といった犯罪まがいの脅迫文すらあった。

(中略)

実は『冬のソナタ』も本来はかなり悲惨な結末を迎える予定だった。なんと、チュンサンは二度目の交通事故の後、ガンで死んでしまうことになっていたのだ。

(韓ドラ・フレンズ『韓国ドラマの謎『冬のソナタ』愛の真実』)

チュンサンは罪を犯した。だから、罰されねばならない。

では、どんな罪を犯したというのか。

母親を裏切ったからか。サンヒョクからユジンを奪ったからか。

違う。

ゆっくり歩んで来たユジンを迎えたジュンサン。二人は向かい合った。

――神様! ……お許しください。

ジュンサンの心の叫びが、聖堂の中にこだました。

(『冬のソナタ 下』「悲しい男」)

「神様」は許してくれなかったのだ。

(終)

 

 

 

 


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『ひらがな暦』(新潮社)著者/おーなり由子

2024-12-10 01:08:10 | 評論

   『ひらがな暦』(新潮社)

   著者/おーなり由子

 こういうのを読んで、女たちは擽ったそうに、くすくす、笑うんだろうな。小学生も、ばあさんも。

急にやってきた友達に、おやつがなんにもなくて、里芋を蒸し器で蒸して出してみた。そうしたら、ふたを開けたとき、立ちのぼる湯気にうれしそうな顔。

熱いほうじ茶をたっぷり入れて、バターと塩でほくほくと食べる。

湯気ごと。

湯気って、ごちそうだったんだ。

(「十二月四日 湯気と里芋」)

湯気なんか、要らん。芋をくれ、芋を。

(終)


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(書評)365日のスプーン』(大和書房)著者/おーなり由子

2024-11-30 23:48:26 | 評論

(書評)

  『365日のスプーン』(大和書房)

    著者/おーなり由子

女たちは、11月8日、チャイを淹れる。

冬の気配がする夜

ミルクパンでチャイをつくる。

 ・シナモンで。

 ・カルダモンで。

 ・ジンジャー(すりおろす)で。

 ・みーんないれて。

ミルクチャイ

 沸騰したお湯に

 茶葉とスパイスをいれる

 色がでたら、ミルクをたっぷり

 すこし煮立てて、火をとめる

 冬がさむい国の甘味、

 メープルシロップで

私はチャイなんか、飲まない。

だから、誘ってくれなくていい。

(終)


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(書評) 『モモ MY DEAR DOG』(新潮社) 著者/おーなり由子

2024-11-28 23:16:45 | 評論

   (書評)

  『モモ MY DEAR DOG』(新潮社)

   著者/おーなり由子

 「モモ」は犬の名前。

子どもの頃、私の家にも犬がいた。その話は『いろはきいろ』に書いたと思う。

モモは

わたしに

背をむけて

ゆうやけに

しっぽを ふる

 

少しはなれたところで

話でも するように

しっぽを ふっている

 

「モモ、何が見えるの? 

何か聞こえるの?」

と いうと

そばに来て やさしく

手の甲を なめた

 

モモのおでこをさわると安心する

 

「帰ろうか、モモ」

私の犬の名前はクマ。

(終)


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