モロシになりそう。
~元妻
夢の中の広い部屋に、明石家さんまがいた。彼と私の間には、小さなテーブルのようなものがある。彼は、私の左にいる男と面会している。話題は、別れた妻のことらしい。二人は、黙りこくっている。左にいるのは吉本隆明か。さんまの元妻と吉本が結婚したらしい。さんまは吉本に彼女の近況を尋ねているらしい。だが、おかしい。吉本の妻は、女優ではない。いや、元女優だったか。知らない。
夢から覚めて、考えた。なぜ、吉本なのか。彼が友人の元妻と結婚したことと関係があるのか。あるのかもしれない。吉本新喜劇と関係があるのか。ないな。
彼女が誰なのか、勿論、ちゃんと知っている。近頃、テレビ・ドラマの再放送があって、それに出てくる。
私は、彼女のことがあまり好きではない。『男女七人秋物語』のラストがわざとらしくて、がっかりしたせいかもしれない。当然、彼女のせいではない。理由は他にもありそうだ。ドラマのラストが、後に、私生活のラストに似てしまったからかもしれない。彼女のせいではない。さんまが狡かったのだ。
彼女を初めて見たのは、映画だった。題名は忘れた。脇役だったが、あまりにも達者なので、その印象が強すぎて、映画の内容を忘れてしまった。ところが、やがて演技が過剰になり、悪達者で、鼻に付くようになった。
有名人なんだから、調べれば、名前ぐらい、すぐに知れる。だが、わざと調べなかった。〈ネットで検索をすると記憶力が鈍る〉という記事を読んだことがあるからだ。何事であれ、忘れたことを調べないようにしている。
さんまの元妻の名前が思い出せないまま、一週間が経過した。
ところが、夢を見て思い出した。
広い和室に、黒い和服を着た男たちが横一例に並んで座っている。動かない。目覚めてから、ヤクザ映画で観た襲名披露の様子に似ていることに気づいた。名前の関連で出て来たイメージだろう。
私は、彼らの向かい側にいる。私の前にも男たちが座っていそうだが、そうした姿は見えない。私の左に誰かいる。大竹まことらしい。
目覚めつつ、思った。彼女の名前は〈大竹〉かな? でも、違和感がある。彼女は、大柄ではないからだ。また、私が〈大竹まこと〉のことを〈大たわけ〉と呼んでいるからでもある。彼女は〈たわけ〉ではない。
〈大竹〉かもしれないが、下の名が思い出せない。
昼過ぎになって、突然、〈しのぶ〉という名前が浮かんだ。しかし、まだ、納得がいかない。彼女に平仮名の名前は似合わない。では、〈忍〉か。違う。〈中山忍〉ではない。〈中山美穂〉のように可愛らしくもない。
〈大竹しのぶ〉で合ってるのかな?
自信がない。
「京都にいるときゃ忍と呼ばれたの」(『昔の名前で出ています』)は、関係ないか。
間違っていないとしたら、納得するための何かが足りないのだろう。何が足りないのか?
中山美穂に死んでほしくなかったからか。
でも、私はミポリンのファンじゃない
「忍」という名の男優がいる。あいつ、大嫌い。
(終)