ヒルネボウ

笑ってもいいかなあ? 笑うしかないとも。
本ブログは、一部の人にとって、愉快な表現が含まれています。

モロシになりそう。 ~靴

2024-10-23 00:50:34 | エッセイ

   モロシになりそう。

    ~靴

靴がきつい。ちょっと。ちょっとだけど。冬が来るから、下駄箱から出した。古い靴だ。もう何年も、十何年も前から、冬に履いている。これまできつく感じたことはなかった。なかったと思う。思うんだけど。

靴下が厚すぎるのか。いつも薄い靴下を履いていたのか。そんなはずはない。冬だから。

靴が縮んだ? まさか、足が膨らんだ? 

この靴は、私の靴ではないのか? 見つめるうちに、何だか、見たことがないように思えてくる。似てはいる。だから、どこかで間違って履いて来たのかもしれない。そうだとしも、そのときに違和感が…… 

いや、あったのかもしれない。思い出せないが、あったような気がしないでもない。

どこで? 

自宅以外で靴を脱ぐ場所といったら、数か所しかない。あそこか。あそこか。あそこか。

靴を間違えられた人は、どう思ったろう。嫌な感じがしたか。間違えた私を呪ったか。その人は、私の靴をどうしたろう。仕方がないから履いて帰ったか。帰ってから捨てたか。どこに捨てた? 溝か。川か。ごみ袋か。

捨てるなよ、人の物を。

さて、私はどうしよう、この靴を。捨てるか。気を変えて、自分の靴だと思うことにして、とぼけたふりして履き続けるか。でも、気持ちが悪いな。水虫か何かがうつりそう。

この靴の本当の持ち主と、あそこか、あそこで、出会って、「ああ。それ」と、咎められたら、どうしよう。泥棒呼ばわりされたら、さあ、どうしよう。ぺこぺこ。そして、「私の靴はどうしましたか」と聞くか。すると、相手もぺこぺこ…… 

誰かが私の家に来て、間違えて帰ったか。

同じ靴が二足並んでいたら、よく確かめるはずだから、二足並んでいなかったわけだ。彼も私と同じような靴を持っているが、その日は別の靴を履いて来たのに、私の靴を見て自分の靴だと勘違いして…… 

彼は、なぜ、自分の靴を履いて来なかったのだろう。まだ冬ではなかったからか。

彼は、誰だろう。

彼は何をしに来たのか。私に何の用があったのか。何を話して帰ったのか。何も話さなかったのか。話すとしたら…… 

もう一度、靴に足を入れてみた。するりと納まった。

思った通りだ。

(終)


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モロシになりそう。 ~ドロンパ

2024-09-10 21:48:08 | エッセイ

   モロシになりそう。

                                                                                                                   ~ドロンパ

「論破はいけない」と言う人々がいる。だが、「論破はいけない」と断定するのも論破の一種ではないのか。だったら、自己矛盾だろう。

パワハラ政治家の弁解を論破してもいけないのか? いけないのかもしれない。反論は自由でも、論破は禁止なのかもしれない。だが、論破を避ける反論など、お遊戯、ままごと、馴れ合い、癒着だ。

彼らの禁じる「論破」の真意は何か。〈ほぼ暴言〉か。フワちゃんの「死んでくださ~い」は論破だ。暴言ではない。

「論破」を禁じる彼らは本心を隠蔽しているのだろう。例えば、〈「教育勅語」を論破してはいけない〉と言いたくないから、「論破」だけを抽出して…… 

ああ、嫌だ。考えたくない。

彼らの胸中を察しようとすると、頭がおかしくなる。苦しい。

「困ったときがチャンスです。頭の良くなる、えへん、チャンスです」(出典忘失)

困ったときは『広辞苑』だな。

議論して他人の説を破ること。言い負かすこと。

(『広辞苑』「論破」)

「言い負かす」のは罪か? 

ことばで争って相手をへこます。言いふせる。「先輩を―・す」

(『広辞苑』「言い負かす」)

「へこます」について調べよう。

相手をやりこめる。へこませる。「親を―・す」

(『広辞苑』「凹ます」)

「やりこめる」について調べよう。

論じ詰めて相手をだまらせる。言いこめる。言いふせる。「子供に―・められる」

(『広辞苑』「遣り込める」)

相手が「先輩」や「親」の場合、「論破」は不道徳なのかもしれない。「先生を―」(『明鏡国語辞典』「凹ます」)のもよろしくないらしい。

では、相手が目下なら、どうか。パワハラになるのかな。

被告人の供述が論理的に破綻していても、証拠がない限り、疑わしきは罰せずということになるのか? あるいは、論破しないまま、罰してしまうのか? 被害の証拠がありさえすれば、自称被害者の説明を論破してはならないのか? 

裁判は別か? 別だとしたら、なぜか? 

議論によって相手の説を破ること。「邪説を完膚無きまでに―する」

(『明鏡国語辞典』「論破」)

この例文の「論破」には、「綿密なデータを示し、彼の説を論破した」(『類語例解辞典』013-08)の場合と同様、マイナスの価値は含まれていない。

「彼女は相手を論破することに快感を覚えている」(『オーレックス和英辞典』「論破」)という場合、よろしくないのは「彼女」の心根であって、「論破」そのものではない。この文の前提には〈「論破」をしてもいいけど、悪用はいけない〉という考えがある。

さて、「説を破る」とは、どういうことか。

他の説を言い負かすこと。ときやぶること。ときふせること。論破。

(『広辞苑』「説破」)

曖昧だ。

「政道を輔佐し輔佐し、邪法を説破(セッパ)させ給ふべし」(『太平記』)という例文が『日本国語大辞典』「説破」)に挙げてある。「説破」は「説得」の同義語だ。『新和英大辞典』「説伏」)参照。

よく話して納得させること。「―力がある」

(『広辞苑』「説得」)

こんな説明は要らないよね。要るかな? 

コミニュケーションによって、受け手の理性や感情に働きかけ、相手の自発性を尊重しながら送り手の意図する方向に受け手の意見、態度、行動を変化させること。

(『ブリタニカ国際大百科事典』「説得」)

この「説得」は洗脳みたいだ。催眠とか、詐欺とか。とにかく、怪しい。

〈思想改造〉を意味する中国語に由来。程度の差、手法の巧拙はあれ、あらゆる教育が洗脳である。

(『百科事典マイペディア』「洗脳」)

『夏目漱石を読むという虚栄』〔7300 教育は洗脳〕参照。(未定)

中華人民共和国成立後、数年間にわたって旧体制の知識人などを共産主義体制に適合的な人間に改造する作業が繰り広げられたが、こうした作業を中国外の反対者は、非難の意味を込めて洗脳brain washingとよんだ。その後、このことばは、共産主義社会における強制的な政治的社会化を意味する用語として西側諸国に定着した。

(『日本大百科全書(ニッポニカ)』「洗脳」)

「洗脳」は悪口だ。つまり、もともと、マイナスの価値が含まれている。しかし、「論破」は、そうではない。この違いは大きい。知識人は、この違いを無視するのだろう。そんな知識人と話し合いはできない。彼らは、言葉の意味やニュアンスなどを勝手に取り替えたり作り替えたりするからだ。

情けない、ああ、こんなことを書いてしまうなんて。

「論破」について、私なんかより、もっと、きちんと知っている専門家がいくらでもいるはずだ。彼らは沈黙を守っているのだろうか。あるいは、何か発信してはいるのだが、無視されているのだろうか。どちらでもなくて、専門家は知識人を軽蔑して〈馬鹿と阿呆の絡み合いに関わるものか〉と気取っているのだろうか。

知らない。私はほとんど何も知らない。調べる気もない。とにかく、五月蝿い。

もう、へとへとなんだよ。

要するに、〈反対してくれてもいいけど、優しくね〉ってことかな? 

“Killing me softly”

「論破」の反対語は〈悩殺〉かな? 

いくら考えても、結論など、出そうにない。

でも、苦しいから終わる。

もろ死にそう。

(終)


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モロシになりそう。 ~泳ぐ前に浮け

2024-09-06 00:23:50 | エッセイ

   モロシになりそう。

    ~泳ぐ前に浮け

出来るから分かっているとは限らない。

オリンピックの水泳のメダリストが就学前らしい児童に水泳を教えていた。

だが、指導ではなく、虐待だ。とても見てられない。

その児童は25mを、溺れそうになりながらも何とかクロールで泳ぎきったが、水から上がっても喜んでいる様子はない。無表情で、突っ立ったまま、動かない。動けないのだろう。疲れただけなら、座り込むはずだ。

その児童は、泳ぎを習う前、「水が怖い」と言っていた。25mぐらい泳げても、怖さは消えない。むしろ、漠然とした怖さに実感が生まれたことだろう。

ところが、教えた人は、涙ぐみながら笑い、拍手をしている。その人も、幼児期に同じような指導すなわち虐待を受けたのだろう。教育は虐待の連鎖だ。

25mぐらい、体力がありさえすれば、息継ぎをしないでも泳げる。だが、50mは難しい。100mは無理だ。本当に泳げる人は、300mぐらい泳いでも疲れない。疲れるどころか、体の調子が良くなるほどだ。

短距離の走り方で長距離は走れない。水泳も同じだ。

点取り虫は点の取り方しか知らない。メダル取りも同様らしい。

メダル取りは、児童をプールに入れてボードに捕まらせ、バタ足を教えた。それから、右手を外して水を掻かせたか。次に両手を放して、クロールをやらせる。呼吸の仕方をいつ教えたのか、知らないが、とにかく、そんな教え方は駄目。その児童は息継ぎがうまく出来ない。だから、陸上で腕の動かし方を練習させられる。まさに畳の上の水練。

私は水泳が苦手だった。成人後、プールに通い、水泳の本を何冊か読んで、どうにか泳げるようになった。それらの本を紹介したいが、書名も著者名も作者も忘れた。

私なりのやり方は、こうだ。

まず、水に顔を入れたり出したりする。そうやって、口呼吸を覚える。顔を水から上げるのと、息を吐くのを合わせる。まず吐いて、それから吸う。逆ではない。要注意。

次に、立って歩ける深さのプールに入り、頭まで沈んでは顔を出すという運動を繰返す。そのとき、呼吸と運動を合わせる。慣れたら、歩きながら同じことをする。さらに、ジャンプしながら。

それから、仰向けになる。手は皿を撫でるように動かす。足は軽く蹴る。肩の力を抜くと、浮いている。

この状態が数分間維持できるようになったら、俯き、同じように手足を動かす。息が苦しくなったら、手で水を押し、顔を上げる。息を吐いて吸い、水に顔を戻す。

この時点で、もう泳げたことになる。

再び、仰向けになる。そして、手足を平泳ぎのように動かす。手は水を腰の下へ送る感じ。膝から下の足は、進行のためではなく、脚全体を浮かせるために動かす。この動きを〈烏賊泳ぎ〉と呼ぶらしい。これが出来たら、簡単には溺れない。

再び、俯き、軽くバタ足。手は楽な平泳ぎ。この泳ぎにも名前があったが、忘れた。息が苦しくなったら、水を押して顔を上げ、息を吐いて吸い、そして、少し潜る。すると、水が押し上げてくれる。イルカになった気分。

以上で、水泳の初級は卒業。

ここまで出来たら、犬掻き、平泳ぎ、背泳ぎ、立ち泳ぎに挑む。やがて出来るようになるはずだ。出来たら、中級は卒業。

クロールは上級。呼吸のコツは、決して上を見ないこと。なるべく水面を見る。そうすると、耳は自然と肩に付く。口の中に水が入っても慌てない。息と一緒に吐き出せばいい。クロールの前に、抜き手と横泳ぎ。

以上のやり方を覚えたら、バタフライも決して難しくはない。

上級の上は、アーティスティック・スイミングだろう。

とにかく、我流でも、300m以上泳いで疲れなければいいのだ。こんな簡単なことがメダル取りには分らないらしい。惨めな人だ。

教育に限らず、点取り虫の昔取った杵柄のドロンパどもが居座る世に、私は、もう、あんまり生きて居たくない。

(終)


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ウロシだった。~『こころ』の挫折

2024-05-26 01:11:55 | エッセイ

  ウロシだった。

   ~『こころ』の挫折

昨日、本屋で夏目漱石に関する資料集のような物を見た。新刊書。題名も著者も覚えていない。わざわざ調べに行く気はしない。

その本の『こころ』に関する記事だけ、立ち読みした。〈『こころ』を読み出して挫折する人が多い〉というようなことが記されてあった。ほっとした。ちょっとね。ちょっとだけだよ。

挫折が正解。丁寧に読むから挫折するのだ。

若い頃、私の周囲にいた人で『こころ』を読んだ人は、全員、面白がっていた。その中には、あまり小説を読まない人もいた。挫折した人は沈黙していたのかもしれない。沈黙は共犯だよ。

学校で『こころ』の読書感想文を書かされた。挫折するわけにはいかなかった。無理をして読み終え、「漱石は頑迷だ」と私は書いた。それを読んだ教師は憎々しげに私を睨み、「君はとんでもない誤読をしてるんじゃないか?」と言った。私は何も言い返せなかった。

ウロシだった。

(終)


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笑うしかない友 ~フランケンシュタイン

2024-03-25 00:12:59 | エッセイ

   笑うしかない友

    ~フランケンシュタイン

ニンゲンガクサルって、どういうこと? 

人間は猿の仲間ってことだね。

猿じゃなくて、腐るんだよ。

腐乱死体か。

いやいや、死体じゃない。

フランケンシュタインの怪物は腐乱してないな。

死体から作ったけど。

生ける屍? 

死に体? 

五体不満足? 

寝たきり? 

腸が腐るとは言うね。

性根が腐るとも言う。

味噌が腐るとも言うか。

じゃあ、脳味噌が腐るんだ。

脳生理学者なら、何か知ってるかも。

脳整理がクシャクシャ? 

マッド・サイエンティストだろうか。

(終)


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