SONG
君の花
ほら バラが咲いたよ
君の花なんだよ
思い込もうよ
騙そうよ
あの花は綺麗なんだって
ほら バラが散ったよ
君の花なんだよ
(終)
SONG
君の花
ほら バラが咲いたよ
君の花なんだよ
思い込もうよ
騙そうよ
あの花は綺麗なんだって
ほら バラが散ったよ
君の花なんだよ
(終)
萌芽落花ノート
20 壁と花
四畳半の四つの壁は、鬩ぎ合いによって立っている。いつか、そのどれかが僕に倒れ掛かる。どれか? どれ?
あれか? これか? どれもか?
どれもが、僕に向かって傾いている。
天井が落ちてきそうだ。
逃げよう。でも、どこへ?
電車を待つ。まるで霊柩車を待つように。
乗客たちは死んでいる。生きているという証拠がない。車内に臭気が漂う。その波線が確かに見える。向いに座った中年女が、僕を睨む。臭いの発生源は僕だとでも言うのか? 僕が死んでいるとでも?
行く当てがない。結局、萌芽落花に墜ちる。
しかし……
しかし、だよ、なぜ、なぜ、造花を飾るのか。臭わないからか。
「あの、なぜ……」
「えっ?」
「いや、何でもない」
「はあ」
「あの、あれは……」
「どれ?」
「あの花」
「花?」
「いや、いい。もう、いい」
「花……」
指差した方向に、花はなかった。
もう、帰ろう。
でも、どこへ?
花のある部屋へ?
花のない部屋へ?
壁のない部屋がいい。
どこであれ、そこで僕は死んでいる。
潜れるのは棺だけだ。
いつからか、僕は死んでいたらしい。
ゆっくりと蓋が被さる。
(終)
『冬のソナタ』を読む
「道に迷う小鳥」(下p5~23)
1 ベンチ
柔らかいサンヒョクが硬くなり、強かったミニョンが優しくなった。
ユジンのせいだぞ。
*
ミニョンとユジンは並んで雪の上を歩いた。すでに長いこと外のベンチに座っていたユジンの体は冷え切っていた。寒いことも忘れてしまうほど、何をそんなに考えこんでいたのだろう。ユジンのそんな姿はミニョンを切なくさせた。
(下p8)
*
で、どうする?
*
ミニョンは自分のマフラーを首に巻いてやった。
(下p8)
*
マフラーだよね。
*
ミニョンにはユジンが何を悩んでいるのかがわかっていた。生きていると必ずぶつかる多くの分かれ道。人々はその分かれ道に差しかかったら、辛く苦しくても、一つを選択しなければならない。ユジンは今、その選択の分かれ道に立たされているのだ。
ミニョンがユジンの手を握ろうとした。その手を避けるために後ずさりするユジンに、ミニョンは一歩近づいて手をしっかり握りしめた。そうすべきだと思ったのだ。
「決めづらいときは、摑(つか)まえてくれる方に行くのも悪くないですよ。今みたいに」
ミニョンは何も強要しなかった。決めるのはユジンがすることだ。
(下8)
*
本当は決まっているんじゃないの?
(終)
萌芽落花ノート
19 あたしなんか
あなたは知るのだろう 宵の街
酒煙草愛涙
欲しいのね たった一つの言葉
何もかも裏切るみたいな強さで
迸るコーク 栓を抜けば
空の力で
空間を奪うから
「あたし、酔ってる?」
明日なんか来なければいい
このまま歌に歌われて
時がすべてを噴射するなら
将来の希望は小さくとも
小さな家を建てることでも
永遠の愛を享けて美しい池を
拭い拭いする先から
微笑んで小刻みの踵を濡らすので
「あたし、このまま……」
誰があなたを知るのだろう 宵の街
酒煙草愛涙
(終)