「豪雨」
空梅雨が一転して、雨ばかりである。その雨も、しとしとと梅雨らしい雨ならば趣もあるが、夕立のごとく降るから困るのである。
7月27日の豪雨は、特に酷かった。いわゆる車軸の雨とはこのことで、正午過ぎに鳥居の北を走る照井堰の水が、参道に溢れ出した。先日に引き続き、二日続けて氾濫したのはまさに椿事である。雨脚が速いので水が掃けず、丹で彩られた二之鳥居は、厳島神社の風情で美しい、などと暢気に構えているわけにもいかない。
黒門の前濠と案内所は一昨年の師走に修復を終えているので、どんな雨でもびくともしないが、参拝客が幾人か残されている。斬くして、少しでも堰の水を減らそうと、苦肉の策ではあるが、蝦蟆ヶ池の止水栓を開け水を落としたのが大失敗で、水圧が掛らないため中島の護岸が一部崩落の憂き目に遭った。
続いて毘沙門堂の雨漏りで、午後一時頃から突然激しく漏り出した。平成22年に銅板の葺き替え工事をしてからこんなことはなかったから、大騒ぎである。職員総出で拭き掃除を行い、直ちに銅盛板金に連絡し、駆けつけた職人さんに尾根裏を見てもらうと、大きな乾草の塊が岩と屋根の隙間まで連なり、折からの激しい雨と相俟って、毛管現象を生じているらしいという。
それにしても、なんの巣であろうか。ムササビならば杉皮を集めるはずなのに等と訝しく思っていたら、どうもハクビシンの巣らしい。ゴミ袋一つほどの乾草は取り払ったが、豪雨の中、屋根に上がるには危険すぎて、完全に除去できないから、それを伝ってスサマジイ雨漏りが止まない。急遽バケツならぬ衣装ケースを水槽代わりにして、どうにか対処していると、今度は岩面大佛様西側の法面が畳10畳ほど滑り落ちたと言うではないか。
午後3時過ぎに、さしもの豪雨も雨脚が弱まったので、被害状況を確認するため、境内を再度巡回した。今回の豪雨被害は前述のごとくで、一昨年の秋に金成緑化の庭師が、コンクリートを少しも使わないで修繕した白山沢の滝は、微動だにしない。これには本当に感心した。
とまれ、備えあれは憂いなしの諺通り、今回の豪雨に学ぶことも多かった。建設業者は人命に係わる復旧を優先したいというから、31日に今年の風雨順次を、毘沙門様に祈ったのである。
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