ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

テーマ別に連載形式になっています。テーマ別に最初の記事からお読みください。

活性誘導水を飲み始めて半年経過

2021年05月19日 | 馬の医療や管理について

 しばらくぶりの投稿になります。4月は本業が大変過ぎで・・・・どーして大学病院の症例がこちらに回って来るのか(しかも、母校の病院ときている)?と思いつつ、なんとか回復まで持ちこめたので、よしとしましょう。残念ですけど、獣医療って、大学だから、大規模病院だから、専門医(ほぼ自称)がいるから、治るのか、というと違います。人医療みたいに1次二次大学ってわけでもない。今回は希少腫瘍でしたけども、当院みたいに小さい病院だから手に負えない、とは限らないという事。

 そうこうしてるうちに自馬さんが活性誘導水を飲み始めて半年経過しました。奴の爪水虫の治療をストップした時に入れ替わりで始めたんですが、経過良好。一番変わったのはなんといっても糞便&尿。ボロが少ない&固いから、床が汚れない、掃除が楽、ガツガツ食べなくなった、尿量も減ったので、床がグシャグシャにならない。で、ガタイはパンパンに張っていて、痩せることもない。蹄はどんどんガチガチに固くなってる。本人の機嫌もまあまあ良くなってきてる。草食獣にとって、腸内環境がいかに重要かがよく分かります。水50ml/日でこの効果、半年使ってまだまだ残っているし。

 家畜の糞便は、牛や馬でもとにかくハエがたかる。これ、当たり前と思うべきではないのでは、と最近は思ってます。京大の先生が書いた「ダチョウはアホだが役に立つ」

 

 なる本に面白いことが。この先生が飼っているダチョウ(草食獣と考えてよい)は、ミミズなどは勝手に食べているようだけど主食はほぼモヤシ。それを4㎏食べて、出てくる糞は200g。その糞にはハエがたからない、それほどに栄養分がなくなってしまっているそう。という事は、草食獣がハエがたかりまくる糞便を排泄している=給餌している餌が消化しきれていない、一種の消化不良と考えてよいのではないか。餌を給餌する側からすれば、飼料効率が悪い=餌代のムダ、ともいえる。

 こないだ、馬の先生が「馬は慢性的に胃潰瘍や十二指腸潰瘍にになっている、その理由は常に胃液が出ているから」とか書いてましたけど、本当かね?むしろ、濃厚飼料や訳分からんサプリなんか(草食獣離れした)を給餌されているせいなんじゃないの?と、こちらは疑ってしまう訳。雑食獣や肉食獣ならいいかもしれない「足し算管理」が、草食獣であるところの牛や馬では裏目に出るということ。

 自馬さんばかりに乗ってるから、どうも比較検証ができないなあ、とも思って、この間ちょっとビジターで他のクラブの他の馬に乗ってみたんです(本当、久しぶりでしたけど)。うわ~~~、って位色々理解できたことがあって。その件については次回。


活性誘導水を飲ませて約2か月経過

2020年12月23日 | 馬の医療や管理について

 活性誘導水を飲ませ始めて2か月近くが経過しようとしています。自馬の様子はどうか、良い点悪い点、中間報告してみます。飲ませ始めたのは11月初めってことで、さてどうなりますか、期待感の方が大きかったけど、不安がないわけではない。疝痛が起きたらやだなあ、とは思ってました。飲ませた量は50ml/日。朝飼いにかける水に混ぜる方法をとったようです。これっぽっちでどう変わるか?ちなみに、飼料等は何も変えていません。牧草のみ。

 飲ませ始めて1週間もしないうちから変化したのが糞便&排尿&床。これはちょっとビックリしました。糞便が「ポニーの便なの?」って位小型化&水っぽくなくなった。

この写真は、自馬と、同体格の馬の糞便(飲ませる前の自馬の糞便と同じ感じ)比較ですけど、自馬の便は小さくコロッとまとまってて拾いやすい。小さいから排便しやすい。水っぽくないから糞便が軽くて掃除が楽。飼料がそのまま出てくる率が減少(飼料効率が良くなったと考えられる)。下痢しなくなったようで、ケツ周りが全く汚れなくなった。
 疝痛なんですが、排便しづらいというの、意外と便秘疝の原因としてありなのではないかと思う。排便時、あまりいきまなくなったので。便は小さい方が出やすいですもんね。こういう事は見逃されやすいですけど、観察するべきポイントでしょうね。
 あと、排尿量が減ったらしい(ということは、飲水量も減っている)。床が全くじとじとしなくなったから。今まではもう、何やっても尿量が減らず、床が冬でもジトジト湿って、おが粉を変えてもすぐダメになっちゃう、どうしたものかとずっと思ってたんですが、あっさり解決してしまった。

 もちろん良い点ばかりではない。悪い点、というか、これは自馬の特殊事情が絡むので、一概に「悪い点」とは言えないと思うが。

 自馬には以前も書きましたが、自己免疫疾患がある。この水はおそらく、腸内細菌叢を動かすのだろうから、当然免疫にも影響を及ぼすだろうとは思ってましたけど、案の定出た。今回は、リウマチ様の全身疼痛(特に関節痛っぽかった)。鞍付けもできないくらい痛がるので、11月後半は乗り運動できず。痛い痛いと泣くもんで(痛みがある時の馬の顔には静脈が浮き出るのですぐ分かります。そんなのを「正常」と勘違いして絵に描いてる画家が多いから困る)一回やむなくステロイドを注射してます(特に蹄葉炎にはならず)。蹄疾患がほぼ収まってきてるからできた処置ではあります。

 でもねえ、ここでひよったら意味ないがな、もうちょっとガマンガマン、と飲ませていたら、それなりに落ち着いてきました。12月2週目あたりから乗り運動再開。再開2回目くらいに横木を敷いて、どうするか、またがせてみたら、ひょいっと飛ぶ。おお、元気になってきました。まあ、まだ分かりません。このまま頑健になってくれるといいのだけど。

 思うに、サラブレッドって、ご幼少の頃から草食獣からかけ離れためっちゃくちゃなメニューの餌を食わされてるから、腸内細菌叢も質が悪いんだと思うんですよ。人間みたいな雑食獣の細菌叢に近くなってる。だから、粗飼料をきちんと消化できない、すぐ疝痛を起こすってことなんでしょう。一方では、質の悪い悪玉菌が腸内で勝手にこしらえる毒素を排泄するためにどうしても飲水量=尿量が増える。従って、床がぐちゃぐちゃになってしまう、ということか。ついでにハエも呼び寄せて周囲の環境も悪くしてしまう。

 世話する側から言えば、床が綺麗な状態が長続きするのが、最も人の労力を減らせるんですよ。糞便がこうも劇的に変わる糞便の量も旧来の2/3程度に収まる可能性があって、これだけでも廃棄物が減ることになるし。飼料効率がいいってことは、濃厚飼料なんかやる必要もなくなる。でねえ、なにより、50ml/日って量が少なすぎ。いい点の方が多そうな気がします。


同業者批判はしたくないのだが・・・・

2020年11月18日 | 馬の医療や管理について

 なんだかな。我々小動物獣医師と大動物獣医師、「縦割り」になっちゃってる、のか、知識交換もないし、お互いの交流もないし、だからなんでしょうか?大動物診療をちょっと見ると、「あれが効く」「これが効いたのに」って、どこにエビデンスがあるんでしょーか?と言いたくなる事例ばかりで。。。。っていうか、もっと勉強してよ。

 例えば、疥癬。こんな動画ですが、出たのは最近なのか・・・・・・。

Mange 疥癬症

疥癬症とは、疥癬虫なるダニ(家にいるダニとは違います)が皮膚をほじって寄生する、もんだからめっちゃ痒い&刺激された皮膚にもトラブルが起きる、皮膚病としては重度レベルの疾患だと思う。これ、ついこないだまで(いや、今でも小鳥には時々見つかる)ペットショップから来た子犬や子猫にたかってて、困らされた。これの変形に耳疥癬という奴もいて、これは耳道内に似た種類のダニがたかる。ひどいフケがごっそりたまる&猛烈に痒がるという症状と、痂疲を鋭匙でほじって鏡検してダニを見つけて確定診断とする。鏡検の仕方なんですが、この動画にあるような「水」なんかで封入したら、ダニはさっさと泳いで逃げてっちゃいます。サンプルを取る皮膚を予めグリセリンで湿らせておいて、鋭匙でグリセリンごとがりっとやってサンプリングする。で、鋭匙にくっついた皮膚&グリセリンの固まりを更にグリセリンで封入して鏡検するとダニが逃げてかないから検出率が高い。
 で、治療法なんですが、なんかよく分からない薬とも呼べないような奴をこの方は紹介してますが、実は、昔からあるごく普通の外用薬が極めて有効です。それはクロタミトン軟膏。添付文書の効能効果には記されてないから知っている人は少ないが(従って、人医療では適用範囲外処方になってしまうんだろう)、今でも自分は鳥疥癬に使っている。クロタミトンにはステロイドが入ってるのもあるが、これを使うと却って広がってしまう。皮膚の免疫を抑えてしまうから。ので、入ってないシンプルな奴を塗りこんで治療する。毎日塗っていると1週間くらいで治癒します。殺ダニ効果があるそうで。

 「塗り込む・すり込む」治療を鳥疥癬にやっていただくと(人にうつらないよう、塗った直後の手洗いを忘れずに!)いいコミュニケーションにもなるみたいなんです。痒いとこをさすってもらえるから、気持ちいいんでしょうね。

 クロタミトン軟膏については、かつて犬疥癬治療で(大昔です。現在は犬猫用には疥癬に極めて有効な外用薬なんかいくらもあるから)往生させられた時に、手当たり次第に治療薬辞典等々(人医療の方です)調べまくって、たった一行書いてあった、それに気づいて処方を変えてみたらスカッと治るようになった。これについては、メーカーにも問い合わせてみたのだが(毒性等々)、疥癬は現在は知らないが、当時(20年くらい前の話ですよ)人医では精神病棟等に集団発生することがよくあって、その時に大量に塗る、軟膏ツボに入った薬を全部食べてしまった方もいたそうなんだけど、特に問題は起きませんでした、という言質を頂いて、そんなら舐めてもOKだべ、とやってみたらうまくいった。

 クロタミトンは今や、かゆみ止めとして化粧品にも含まれるような薬だから、使いやすいと思うんだけど。価格も安いし。

 但し、最も有効なのは。ダニなんだから、要はこんなダニをくっつけてよこす育成牛業者から牛を買わないことです。これに尽きる。こうやって飼育法の改善を促すのが早道と思うのに。このダニ、人にもうつる。甘く見すぎじゃないですかねえ。

 あと、ガンベ。糸状菌症に対するネットに出てる対処法がめちゃくちゃ。こんなんで治療と言えるのか?油を塗れとかさあ。ありえヘン。どういう根拠があるのよ?

 まだ、人間の水虫スプレーや水虫石鹸の方が有効でしょう。尤も、自分的にはナノソイを使うほうがいいですよ~~、と言いたくなりますけど。優秀な殺菌力&安全性で一押しなんだけどな。
 というか、この位の情報は今やいくらでも入手できるではないですか、そうした情報を提案して、そもそも疾患が発生しないで済む方策を考えて提供するべきだと思うのに。

 感じるのは、「動物の身になって考えてない」んじゃないか、という疑念。どーせ経済動物だから、みたいな小馬鹿にしてる感じがするのよ。どーせ金かけないんだろ、とか、どーせ治らないし、とか、どーせ治療を続けないんだろ、とか。仕事に「どーせ」は禁句。プロじゃない。


足し算管理の危険性

2020年11月11日 | 馬の医療や管理について

 人間でも動物でも今って「あれやりましょう、これやらないと」っていうののオンパレードですよね。例えば食事一つとっても、あれ食べろこれ食べろ、「摂取」って言葉が気になる・・・で、栄養が足りない?じゃあサプリだなんだって。いくらざぶざぶ食べたって、吸収せにゃ意味ないで、じゃあ、乳酸菌なんかどうです?次から次へ、よくまあ思いつくもんだよなあ・・・・。

 この場合、サプリ会社・乳酸菌飲料屋等々が儲かる仕組みになってます。

 化粧だと。しっかり洗顔しないと角栓がこびりつくんですよ~~、それを落とさなくちゃ、シミ取りなんかどうです?シミがあると女として見てもらえないんですよ~~(ってyoutube動画でよく宣伝してますけど、そんなこと言う男なんざこっちから願い下げですよ。だって、そいつだって数十年後にはシミだらけになるもの。人の事、言えるのかよ!!)、で洗顔したら化粧水つけて乳液つけて保湿クリームつけないと、そうしないとお肌が荒れるんですよ~~、んでもって、下地塗ってファンデ塗って、そうそう、目元にはアイクリーム塗らないと、粉はたいて、部分化粧するんですよ、で、そのままにしとくと角栓がこびりつくから~~ってエンドレスじゃん!!かように化粧品屋が儲かる仕組みになっています。

 馬だと。濃厚飼料やって体力つけなくちゃ、ガタイをよくしなくちゃ胃潰瘍になったじゃ、胃潰瘍薬(高~~い薬)なんかどうです、濃厚飼料のせいで糞便が臭くなってハエがわんさか、殺虫剤使わないと、虫よけなんかどうです、胃潰瘍どころか疝痛起こしたぞ、じゃ、治療しましょ、ハミ使って馬がイライラ、じゃ、おとなしくなるように調教しましょう、なんとかホースマンシップなんかどうです、蹄鉄使って蹄病、じゃ、装蹄し直さないと、こまめに削蹄して治療しなくちゃ、蹄の管理が悪い、なんとかトラッシュなんかどうです、餌が悪い、ビタミン剤を足さないと、ビオチン(これはビタミンBの一種、草食獣に不足するはずなし)なんかどうです、蹄をつくるタンパクが足りないんでしょ、濃厚飼料食わせないと、でエンドレス~~。
 すなわち、餌会社・装蹄師・獣医・ホースセラピストなんとかいう仕事をやってる人、が儲かる仕組みになっています。相手が動物だからたちが悪いのさ。人間相手だったら「や~~めた!!」って思えばそこで終了なんですけどね、馬は何も言えないから。

 従って、馬業界の人達はいつも金がない。ざぶざぶ馬に金を吸い取られて「馬貧乏」。借金だらけで首が回らない、馬のためにやってる筈なのに、全て裏目に出る、馬に人生を食い潰されてる人、多いですよね。 もう、いい加減そういうのやめませんか?


厩舎について

2020年06月24日 | 馬の医療や管理について

 前回書いた「蹄病治療」ですが、これは当然ながら薬も市販されてません。獣医師が処方して、という処方薬になります。従って、この治療に挑戦してみたい方は、当院にご連絡ください。クラムボン動物病院 までお願い致します。治療予算は大体1万円/月、程度になるかと。当院では、治療を「やりっぱなし」には致しません。必ず継続して状況をお伺いして、変化に対応できるようにします。これは小動物臨床のテクニックなんですけど、馬の先生はなんか、そういう事をしない方が多そうで。なぜでしょうか?今はスカイプもあるし、カルテの共有も簡単にできるはずなんですけども。

 ところで、岐阜大学の馬術部厩舎が火事になってしまったそうで。馬は可哀そうなことをしました・・・・。こういう時って、どういう訳か、馬を厩舎から引き出すのは極めて難しいらしい。余程信頼している人でないと、怖がっちゃって馬房から出ようとしないらしいのだ。

 原因は漏電らしいとの事、おおかた扇風機じゃないかと思うんですが。厩舎はとにかく埃っぽくて不衛生になりやす。漏電しやすい条件が揃っているからね。。。

 という事で、厩舎。裸蹄管理してると、馬房が汚いとか不潔という不満がどんどん出てくる場合が多いんです。そのせいで裸蹄管理がうまくいかないのではないか、という。実際にはそんなことはないのだけど、別の意味で不潔・不衛生な環境ってどうにかならんのか、と考えている人は多いと思う。裸蹄管理していなくても、この時期、厩舎の臭いが凄まじくてウンザリ・ついでにサシバエ被害のすさまじさにげんなり、というケースが多いんじゃないでしょうか。

 最初は自分とこの大学の馬術部の臭さに唖然としたんですよ。府中の街中にあんな臭い場所がある、というの、信じられなかった。あまりに臭うので、これって馬の体臭なのかと勘違いしてたくらい。そんな筈ないですよね。「臭い」はその場所の衛生管理レベルを如実に物語ります。仮にも獣医学科があって、獣医科の学生も結構在籍してた馬術部がそれだもん、そういうとこにいた人達が、今JRAの偉いさんだったりします。大丈夫なのか??クサい中に動物を放置するというのは、一種の虐待だと思う。

 そしたら、たまげたことに、そこらの動物病院やらペットショップやら、動物関連の施設って、基本「臭い」ことに気がついて。つまり、動物病院ですら、肝心かなめの「衛生管理」がなってない、という事。やんなって、自分の病院については、絶対に臭わないように対策を立てまくりましたが。

 衛生管理は結局「掃除」なんです。これがしやすいかどうか。しかし、大動物の厩舎だと、なんかうまくいってない場合が多そうで。その辺について書いていきます。

 


馬ランキング