しかし、いつも思っていることですが、日本のこういう方面の技術者の方のレベルってハンパない場合が多い。おそらくは世界一なのでは、と。おそらく、勉強もしてるでしょう。国家資格じゃなくなっても、資格制は残っているわけだし。鉄を加工細工するのだから、めちゃ力仕事で、鉄の蹄鉄を扱う場合、原則女性は無理じゃないかと。これだけで、有資格者が減ることになりますね。
装蹄の現場はとにかく危険極まりない。鉄をもひん曲げてしまう高熱炉のすぐ近くで、いつ本気で蹴り飛ばしてくるか分からない動物の足元で作業する。よく事故が起きていないな、と。いや、事故が起きていても統計とか取っていないのかもしれませんが。安全対策も考えつつ、山ほどいる馬どもの足元を見て、ああ切ってみたりこう切ってみたり。。。で、跛行がそれで改善することもあるし、改善しないこともある。サラの場合は、とにかく「走る」かどうか。乗馬馬だと、長持ちできるかどうか。ポニーは、まあ、テキトーでいいか。こんな感じではないでしょうか。後からあーだこーだクレームを付けられることもあるでしょうし、そうならないよう、かなり皆さんきちんと仕事をしようとはしてると思う。仕事の内容は、非常に厳しいし、大変。しかし技術は世界レベル、なのはおそらく間違いないところ。
では、結局削蹄の何が悪いのでしょう?
YOUTUBEで「削蹄 馬」とやると、一番に出てくる動画がこちらなんですが・・・・。装蹄の現場でよく見かけるパターンですけど。
小動物獣医師として、これ、ひどいよ、と思う動画ではあります。治療というけど、これは治療になってない。なぜなら、蹄の治療と称しながら、全く消毒もしていない道具でもって(なんかのドリルの刃でしょうか?)いきなり消毒洗浄していない蹄底を突き刺しちゃって「血抜き」と俗称される処置をしている点につきる。これじゃ、ばい菌を創内に押し込んで感染をひどくするだけでしょう。蹄底だから、ますますそうなる。
鎌で削ってるからいいんだ、じゃないんです。例えば日本刀。多分世界一切れ味のいい刃物でしょうが、こいつで切られると、予後が極めて悪い。日本刀には汚いばい菌がこってり付着していて、切られるとそれが切り傷の中に侵入し、ひどい化膿を引き起こす。それで死んじゃう。井伊直政さんなんかは、そのせいで敗血症になって亡くなったんでしょうね。鎌をちゃんと研いでるかどうか、という問題とは違うという事です。衛生管理がなってない。
今、新型肺炎の件で日本中が騒ぎまくってますけど、結局病気の防除は、まず第一に衛生管理なんですよ。だから、手洗い励行・アルコールで消毒・とがみがみ言われてるわけ。こと大動物となると、どうしてこの辺がいい加減になるんでしょう???ま、これも獣医に問題があるか。注射するときも、刺入部の消毒してる人見たことないし。
つまり、装蹄や削蹄の技術ではなく、それ以前の道具の衛生管理・蹄の衛生管理がダメだから、蹄病が発生するんだ、かつ、蔓延するんだ、というのが結論になります。なぜド汚い状態のまま蹄をゴリゴリやってしまうのか、の理由はおそらく衛生管理面の教育がなされていない、ということでしょうか。でもね、なら、社会常識って奴を駆使しないと。
装蹄師の皆さん、床屋に行って、髭剃りしてもらう時、隣のヘンなオヤジの髭を剃った剃刀をちゃちゃっと研いで、切れ味復活しました~~じゃ、あなた、ってやられたいですか?絶対「いや、その前に消毒してよ」ってなるでしょう。エイズがうつるかも、くらいのことは今日日誰だって考えます。同じことを馬にも牛にもやってこそ、プロの仕事じゃないでしょうか。この件は、小動物業界のトリミングではもはや常識。トリマーの方々は、毎回毎回トリミング用のハサミ・バリカンを消毒してますから。それ用の除菌スプレーだってあるんです。
こういうのとか。
こういうのをちょっと使って見せるだけで、「まーなんて丁寧なお仕事をしてくれるんでしょ!!」なんて評価をもらえること間違いなし!だけじゃなく、切れ味もよくなるから、いいと思うんですけどね。