ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

テーマ別に連載形式になっています。テーマ別に最初の記事からお読みください。

蹄の管理ー蹄鉄4

2019年07月30日 | 裸蹄管理

 蹄鉄を打った蹄の図をもう一度。

蹄鉄の釘は、理屈上、白線にかからないように打つ、という事になっています。白線は、解剖学の本によれば(家畜比較解剖学図説 下 養賢堂)、「白帯(白線の事)の部分では、乳頭(蹄壁真皮の末端部にある、白線を作っている部分)が太く長く入り込むので、他の部分より知覚が鋭敏である」とあります。近くが鋭敏だとされるすぐ近くに釘なんぞ打つ、危なっかしいですよねえ。

 というか、本当に白線を外して打てているのか?

 蹄鉄は、元来、本格的な鍛冶仕事でした。鉄の棒があって、それを平らに叩いて、蹄に合わせて変形させ、蹄の状況に合わせて釘打ちの穴を作り、釘を打つ、という。こんな仕事、今ではとてもじゃないがやってられないと思います。そんな暇もなし、労力もかけられない、ということで、技術競技会でもない限り、こんなつくり方はしません。出来合いの蹄鉄を使っているはずです。

こういうの。最初から釘穴が開いている。

 どうしても気になる。本当に白線をよけられてる?蹄に蹄鉄を合わせる、というより、蹄鉄に蹄を合わせてない?

  馬がいきなり跳ねて横っ飛びする、馬が物見なんかするからだ、臆病だからだ、とか言いますが、「蹄鉄の釘が足の知覚にいきなり触ってビックリしたから」という理由を、どうして人間は思いつかないんでしょうかね?なんでも馬のせいにするんだもんね。

 なぜそんなことが起こるか、は、単純な理由によります。

 馬が移動するときに、釘にかかる力を示していますが、当然、こういう風に蹄鉄が上下にがたつくから釘に圧力がかかる。ぴったり合わっせるために熱い(真っ赤になるまで鉄を熱した状態ですが)蹄鉄を蹄に押し当てて合わせてる、というんだけど、冷めたら狂いが生じるでしょうに。銀歯の詰め物だってどんどんガタつく(歯は成長しないんですけどね)、ましてやしょっちゅうトン単位の圧力がかかる場所で狂いが起きないはずがない。蹄はどんどん伸びて変化するし、その時うまく装蹄できた、としても、そんなの10日もすれば変わっちゃうでしょうし。

 まあ実際、しょっちゅう落鉄(蹄鉄が外れること)が起きるわけで、がたつくから外れる。当たり前だ。で、それを直すのに、まーた釘穴を新しく開けて鉄を打ち直す。蹄が痛みまくる結果になる。


蹄の管理ー蹄はどこから生えているのか?

2019年07月29日 | 裸蹄管理

 蹄鉄について考える際に、どうしても理解しなければならないのが、蹄の解剖。といいますか、「蹄が生え変わるのに1年かかる」とかいいますが、蹄って結局どこから生えているのでしょうか?

 ヘタくそな絵ですが(ペイントの使い方が下手ということ)、一応蹄の内部を3Dっぽく描いてみた図です。

 蹄の内部を見てみると、こんな感じに真っ赤なんですが、構成しているのは「真皮」。それを蹄壁が囲んでいます。ただ、単純に囲んでいるだけでは簡単に剥がれてしまうので、蹄壁真皮という場所は、細かいひだ構造をしています。カーテンのひだみたいになっていて、そこに蹄壁の保護層が食い込むような構造をしている。では、蹄壁はどこで作られているかというと、蹄冠真皮と呼ばれている箇所。蹄縁のやや上になります。そこの真皮が蹄壁をつくっては下へ下へ押し出している。で、ひだを滑るように下に移動して成長する。蹄壁真皮は蹄壁に接してはいますが、蹄を作る場所ではない。では蹄底は?蹄底を作るのは、蹄底真皮という場所。蹄叉は蹄叉真皮がつくっている。上の図では黄色く囲っている箇所になります。

 ひだ構造を3Dっぽく示してみると、こんな感じ(赤丸枠)。

 では、いわゆる「白線」というのはなんなのでしょう?蹄底の白線模式図ですが

 こんな感じ。白線をかなり強調して描いてます(これじゃあ太すぎる)が、本来の白線は、横幅2・3㎜程度、のはず、なんです。2・3㎜となる根拠は次の図で分かります。

この図は蹄底を3Dっぽく描いてます。白線の正体は、蹄壁真皮と蹄壁(保護層)の溝構造を埋めている箇所。蹄壁真皮の末端から作り出されているのです。上の上の図では、白線に溝構造らしきものが描かれてますが、蹄壁真皮と蹄壁が構成していたひだ構造がそのまま現れているわけですね。この構造は強固なはずなんですが、溝の方向からして、前後の引っ張りに弱い。これがまずいんですね。

 あともう一つ、考えなければならない点は、真皮には知覚がちゃんとある、ということ。


蹄管理の実態ー蹄鉄3

2019年07月21日 | 裸蹄管理

 蹄鉄の問題点は、他にも多々あります。前回書いたのは蹄鉄の衛生面からの問題点ですが、運動力学上の問題点も大きい。

 もう一度健康な野生馬の蹄

ですが、この蹄は底面が曲線を描いています。こんな感じこれで、地面を「捕まえて」動き回っているわけですね。

 この場合、重要な蹄の構造物は「蹄叉」になります。蹄叉は、天然のクロックスみたいなもので、クッション性も優れ、滑り止めの効果も高い、重要な組織です。

 それに対して、削蹄・装蹄されている馬の蹄底は、真っ平になってしまっています。ヤスリがけして真っ平にしてしまってますね。するとこうなる。

これで運動すると、蹄にはこんな力がかかります。

蹄鉄の断端に踏み込むたびにガチガチ力がかかることになってしまいます。

 

 


蹄管理の実態ー蹄鉄2

2019年07月17日 | 裸蹄管理

で、この「健康」な蹄ですが。この蹄は、具体的にどのようになっているのかというと、

こういう風になっています。解剖は体の3D地図に名前を付けている学問で、この図はかなり簡略化してますが、重要な部分を描いてます。赤丸にご注目。これは、被覆層が縮んで保護層を巻き込む形になっているんです。一回も削蹄されていない蹄に見られる、いわゆる「ムスタングロール」と呼ばれている構造は、こうしたものです。特に乾燥した地域に住んでいる馬は、蹄壁が被覆層でがっちり囲まれて、極めて強固な防護壁をつくっているのです。だから、裂蹄なんか起こるはずもない。

 

 ところが、家畜馬・家畜牛・動物園の宥蹄動物は皆、削蹄処理を受けてしまっていますね。すると、蹄はこうなります。

こんな感じ。被覆層が途中で切られてしまって、保護層が露出してしまう。

 更に蹄鉄を打つと、こうなります。

 一見、鉄で保護してるように見えますけど、完全固着しているわけではないから、保護になっていないんです。この隙間に汚いばい菌があれこれ入り込んで悪さをする、のにコントロールできない状況になる、もっとまずいのは、それを「可視化」できない、という点。

 これは、人間で言うならば、歯医者が虫歯を削って詰め物をくっつけて「治療しました」だったのに、その下で虫歯菌が再増殖して、まーた歯を削らなくちゃならなくなって悪循環、最悪、歯を失くしてしまう、のと同じですね。銀等の詰め物はかなりきっちり型取りをするけど、それでもこの結果になるケースがほぼ全例でしょう。ましてや、アバウトに作っている蹄鉄が合うわけがない。


蹄管理の実態-蹄鉄1

2019年07月12日 | 裸蹄管理

 今日、「馬の科学」が届いたんです。ウマ科学会の学術雑誌ですね。競走馬に使われているアルミ蹄鉄、最近はやっぱり接着装蹄が増えているみたいですね。しかし、接着装蹄すると、いわゆる「蹄機作用(蹄が着地するたびに、微妙に蹄腫が広がり、地面から離れると縮む、その動きが末端の血液循環を促進する仕組み)」が阻害される恐れがある、のを、ウレタン製の蹄鉄に変えてみたらどうなるか?という研究。それなりに効果がある、との結論が導き出されていました。

 でもねー、一々プラ製の蹄鉄をくっつけるなら、最初から何も履かなくても同じことに思えるんですけどね・・・・。あと、ウレタン蹄鉄だと、蹄の形に蹄鉄を合わせられないから、困る、と言い出す人もいるでしょうね。

 ちょっとネットを見てみると、アーモンドアイ等々、相当数のお馬さん達が接着装蹄にしちゃってるみたいで。蟻道があるんじゃないか、とか噂が飛び交っている。競走馬にも蹄病が蔓延している、ということらしい。誰も表立っては言いませんけどね。その位、蹄病はタブー扱いされているのか。

 まあ、引き続き、タブーの話をします。

 蹄鉄は、鉄というくらいだから、本来は鉄製で、乗馬馬は未だ鉄製蹄鉄です。競走馬はアルミ製で、この理由は軽いから、らしい。蹄鉄を履かせる目的は馬の蹄の保護であるという事になっています。馬の靴だ、とも。靴~~そうじゃないでしょ、足に釘付けする靴なんかどこにもないじゃない、と思うんだけど。

 かつてに日本には、蹄鉄なんぞなかったにもかかわらず、明治時代以降、「馬=蹄鉄」という図式が出来上がってしまいました。同時に、色々な蹄病がクローズアップされてきているように思います。蹄鉄が蹄病を蔓延させているのではないか、という疑問が。

 そもそも、「健康な蹄」とはなにか、という認識がほとんどない状況で、「いい蹄にするには云々」とやっているのが変な話。

 ということで、健康な蹄の例を挙げます。これは野生馬の蹄ですが、クローズアップすると

ということになります。健康美を感じますね~~。