ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

テーマ別に連載形式になっています。テーマ別に最初の記事からお読みください。

餌とハエ

2020年07月27日 | ハエ対策

 当院で入院やお預かりしている犬を散歩に出した時、外で排便したとすると、するや否や即座にやって来るキンバエには恐れ入ります・・・・・。多分臭いを察知してどこからか飛んでくるんでしょう。ハエ軍団は、臭いにとても敏感なんでしょうね。

 サシバエも、秋終盤になると、ひっくり返した馬着やゼッケンにたかりまくるようになります。自分の保温もあるし、やっぱりゼッケンや馬着に馬の体臭が付いているから誘われる、という事もあるんでしょう。となると、体臭をどうにかしないと、ということになります。

 しかし、馬のような草食獣は特段体臭なんかないはず、「体臭」とされているものはなにか、これは馬房の臭気でしょうね。臭気(特にアンモニア臭)が染み付いちゃってるんだ。あーやだなー、動物関連施設ってどうしてこう臭うんだ

 自分で動物病院をつくらなくちゃならなくなった時(勤めていた病院をいきなりクビになりまして)、とりあえず、他の動物病院をちょっと見学させてもらったんですけど、どこもかしこも凄い臭気でたまげちゃって。鼻が曲がるよくこんな場所で仕事ができるなあ、いや、それどころか入院患者さんにこの臭い絶対に染み付くぞ、トラブルにならないのか?と不思議で。ああ、そういえば、勤めていた病院もめちゃくちゃ臭くて、それをハイターを撒きまくってなんとか臭気を失くしたんでした・・・・・。

 ので、当院では一切臭いが出ない・付かない・いい空気が維持できるよう、設計段階からかなり考えました。臭気って空気清浄機をつければどうにかなる、ほど、甘くないです。開院から20年以上経過してますけど、未だ臭い0。入院患者さんも臭いなんかつかないから、安心して預けていただいてます。「先生のとこにいれば安心だから」と言っていただけるのは、有難い(緊張もしますが)。カンケーないですが、動物病院やペットショップ等々、臭う場所は基本的な管理が不行き届きと判断していいと思います。行かない方が吉。下手すると病気をうつされます。

 鼻が曲がる臭気の主たる原因はアンモニア臭で、これは尿中の尿素が変化したもの。尿素はタンパク質の老廃物のなれの果て。糞便の臭いはどうか?これ、以前読んだ

に面白いことが書いてありました。藤田さんはかなり癖の強い方だな~~、と思いつつ。競走馬には、とにかく走ってほしい。ので、やたらサプリや濃厚飼料を食わせる、従って、馬の糞便の臭いが人間のそれっぽくなってくる、というんです。馬房がどんどん臭くなっちゃうよ・・・・。

 馬に濃厚飼料を当たり前のように食べさせてますが、必要なのか?これは、不要です。草食獣は大まかに反芻獣とそうではないのと、2グループに分けられますが、馬は反芻獣じゃない方です。長い小腸で草から乏しい栄養を極限まで吸い上げて、更に、盲腸で発酵させて取れる栄養を摂る。濃厚飼料を給餌すると、小腸から吸収される糖類がドカンと跳ね上がります。で、一過性の高血糖になるもんだから、イライラする、蹄葉炎を誘発する、わけ。で、更には盲腸の中の細菌叢をかく乱してしまうので、疝痛が起こる。特に春~秋の期間は、濃厚飼料をやるべきではありません。

 以前、割と有名な乗馬クラブに7月頃行ったら、馬の夕飼いがずらっとバケツに入っていたんだけど、ハエがわんさかたかってて。濃厚飼料のにおいに誘われたイエバエなんでしょうけども、不潔の一言。で、濃厚飼料をあてがわれている馬は皆さんがれまくってて生気がない。で、糞便や尿の臭いもきつくなるからサシバエもたかる。濃厚飼料はネズミも呼びます。不衛生を絵に描いたようになってしまうんですね。良かれと思ってやっているであろうことが、逆効果になってしまっている。

 疝痛や蹄葉炎等々を防止するには、少なくとも春~秋の間、一切濃厚飼料の給餌をストップするのが、食餌管理としては最良です。管理もラクになるし、ハエもたからなくなるし、ネズミも呼ばれないでしょうし。

 自馬を預けてる方は、まずは濃厚飼料の給餌を止めてもらえばよいかと思います。色々言われるかもしれませんが、気にしない事です。


サシバエと個人の対策1

2020年07月26日 | ハエ対策

 とはいえ、敷料も床構造も、乗馬施設の問題で、施設側が根性出さない事には何も変わりません。個人で何かやると確実に嫌がられるし、、、特にクラブホースの場合は、「施設の持ち物」ですから、深入りしないほうがいいだろうな、と思います。最善は、「サシバエがうじゃうじゃいる季節は馬に乗らない」事。危険なだけですから。お客様が減る原因がそれなら、真剣に考えると思うんですよ。考えないでしょうか?乗馬施設って、なんか厄介なんですよね。お客様をお客様と考えてない場所が多そう・・・・

 自馬をお持ちの方なら、自分の馬のためにやれることをやった方が気分がいい。その方法について、考えたいと思います。

 今いるクラブはなぜか、サシバエが毎年比較的少ないんですが、その理由として、以下が考えられます。

1)堆肥場がない=毎日どこかの農場(?)に糞便&おが粉が運ばれていて、近くに残らない。ため込んでいない。

2)厩舎の床が土。

 以前、ウジがうじゃうじゃいた個所があるんですが、そこはコンクリ床の馬房の隅っこでした。思えば、あれがサシバエのウジだったんでしょう。

 ただ、特別な対策なしでも、サシバエは他の場所より全然少ない。発生場所として堆肥場をどうしても疑ってしまうのは、例えば牛では牛舎については対策しているのに、堆肥場は無策だから。そこで大発生してるんじゃないの?と思うわけです。「堆肥をしっかり切り返して発酵させれば発酵熱で細菌もウジも死ぬ」っていうけど、本当か?ウジなんか、サクサクっと逃げ出して、堆肥の隅っこでぬくぬくしているのでは?だって、隅々70℃ってわけじゃないと思うから。きちんとサーモグラフィーで確認してみないと・・・・。ウジ側としてはいいとこ全体の1/10でも生き残れば御の字ですし。

 堆肥場の対策は置いておいて、馬房ですが。臭いをとにかく減らさないと、馬が可哀そう。嗅覚がかなり鋭い動物だし。臭い所にずっと置かれたら頭がガンガンするんじゃないかな。また、臭いはハエ寄せ磁石みたいなもので、敷料の上がハエだらけになる。

 臭いをなくすには、臭いの元を何らかの方法で分解すればいいんですが。厩舎の床が土というだけで、臭いがしなくなるのはなぜかというと、土中の細菌が増殖して尿中の臭いの元を分解してくれるからです。ここに強力な消毒剤等を撒いてしまうと、途端に臭い出す。分解細菌が死滅してしまうからですね。
 だから、たとえば次亜塩素水を馬房に噴霧する、というのは問題がある。有用細菌も一緒くたに殺してしまいかねない。

 でも、コンクリ床だと、そうした細菌がコンクリのせいで床に上がってこれないので、臭い放題になってしまうんですね。となると、そういう細菌群を床面に導入する必要が出てきます。

 それを目的とした細菌資材が最近出回り始めています。かなり効果があるのがこちら

アクアサービス(株)という会社が出している製品ですが、かなり凄いです。猫砂一袋にこれを一匙まぶしておくだけで、くっさい猫の尿臭0になります。馬房に撒いておくと、本当に臭わなくなる。水分が入ると即活性化するように作ってあるらしい。牛舎や豚舎での使用実績もあります。

 こうした細菌資材は、一回撒くと、コンクリでも床面にちゃんと残って半年くらい分解能を発揮してくれます。水槽のろ材みたいになるわけですね。同様の細菌資材は全農も出しています。 が、撒く量が多いのが難点。

 臭いを消す方法としては、他に消臭剤を使う方法や酵素を使う方法もあるんですが、特に消臭剤は、根本を叩いているわけではないので、効果は一過性のもので、なんぼ撒いてもきりがない。酵素の場合は、働きやすい温度等が問題となります。細菌資材が一番理にかなっているように感じます。あと、自分の馬房に撒くだけだから。よそ様とは関係ないわけで、そこも割合気楽でいられる。


サシバエ対策はどこからとりかかる?

2020年07月25日 | ハエ対策

 実は、サシバエじゃないですけど「ハエのウジをどうにかできんか?」という質問がYahoo知恵袋とかに結構出ていたりします。それに対する、殺虫剤以外の対処法が面白い。

1)酢水をかける。酢:水を1:1にして、それをかけると死ぬか逃げていく。

2)煙草の吸殻を入れる。これは煙草に含まれるニコチンが殺虫しているものと思われます。全然効果なし、という話もありますが。。ちなみに「ネオニコチノイド系」の殺虫剤は、動物への毒性をほぼなくしたニコチンの仲間の化合物で、それを殺虫剤にしているのです。

3)熱湯をかける。ゆでちゃうということですね。そりゃ効果あるでしょう。

4)石灰や珪藻土を撒く。これは、ナメクジに塩をかけて退治するのと同じ方法で、ウジを脱水させて殺すという事。

 ウジがわかないようにするのは、とにかく清潔にしろ!に尽きるみたいですね。コンポスト等にウジがうじゃうじゃ湧くのにビビった~~、というのはコンポストあるある話のようですが、この場合は、生ごみを投入した後、毎回土を上からかぶせると、生ごみ臭も消え、ウジもわかない。これは自分も確かめています。同じ要領で、ゴミ箱にウジが湧かないようにするには、生ごみを新聞紙やビニル袋等でがっちり密封して臭いを出さないのがベストなんだとか。生ごみの臭いはハエだけじゃなく、他の野生動物も誘いますから、ホント、注意しなければなりません。

逆に、ウジが好む、というか、ハエが卵を産みつけやすく、ウジがわきやすい場所とは

1)湿った場所

2)臭う場所、ウジの食べ物が山ほどありそうな場所

3)比較的暖かい場所

となります。サシバエの幼虫が餌にしているのは糞便だ、ということは分かっているので、厩舎等で他に条件の揃っている箇所はどこか?を探すと

1)堆肥置き場

2)馬房の隅・飼い葉桶や水桶の下

のように、敷料と馬糞が混ざり合ってジトっと湿っている箇所が怪しい、ということになります。

 逆に、こうした条件を外すと、ウジが増殖しづらくなるわけです。

となると、思いつくのは

1)なるべく湿らないようにする。

2)臭いが出ないようにする。

3)特に冬場に暖かい場所で越冬させない。

辺りでしょうか。でもねえ、かなり難しそうですよ、これは・・・・・。馬房は湿気るもんだ、臭うもんだ、という概念をひっくり返さなければなりません。できますかね?

 これに対する対策が、敷料や床や厩舎構造とも関わってきます。前回までクドクド敷料だの床だのについて書いているのは、ハエ対策と強い因果関係があるからです。


サシバエと殺虫剤

2020年07月22日 | ハエ対策

 サシバエの生活環を別の図で。

 

サシバエの成虫は「4㎞は飛べる」とされていますが、動物というのは原則めんどくさがりなもの、余程でないと(吸血する動物が全くいないとか)そこまで飛び回ることはない。大体、その畜舎内で生活が循環しているはずです。

 サシバエの生態に関する資料としては

1)サシバエその生態とリスク(臨床獣医2011)

2)牛舎のサシバエ対策(兵庫「The Fly Project」チーム) 

が、かなり信頼度が高いです。ただ、対策はちょっと疑問がありますが。こういう資料を読むと、根本対策がないとまずいんじゃないのか、と思ってしまいます。

 現在、こうした害虫を根絶する方法に、「不妊虫」を使うものがあります。ただ、サシバエのような、雌雄共吸血するような場合は、難しいかな・・・。

 で、殺虫剤。分かりやすい資料はこちら

 牛舎等でのサシバエ対策ですが、基本的には成虫に対してピレスロイド系(一般的なスプレータイプの殺虫剤

に含まれる)による噴霧、幼虫に対してIGR製剤を使う、というパターンなようです。つまり、生活環のうち成虫と幼虫にアタックしている。

しかし、これはうまくいかないと思う。その理由を以下の図に。

 

 特に成虫に対する対策については、天敵になり得る虫も一緒に殺してしまう可能性大&こう生活環がぐるぐる速く回っていると、一回噴霧したくらいでは意味なさそう、という感じですね。一方、IGR製剤を冬場に撒く、というのも読みましたが、意味あるの?と思うのは、越冬中には脱皮しないでしょ、という点から。大概じい~~っとしてるだけで採食もしないし脱皮もしていない筈。IGR製剤は食毒性です。食べてもらわないと作用を発揮しません。冬に撒いたってしょうがないじゃん、というのが自分の意見。あと、越冬しているのはサナギの可能性も高いんじゃないかと思ってまして。サナギに効く殺虫剤は、ないんです。

 殺虫剤のこうした大量投与の一番の問題点は、ずばり「業者さんに頼まないとできない」点。人や動物の安全を守るためには必要ですが、かなりお金がかかる。で、効果がパッとしないとなると・・・・。別方向から考えた方がいいんじゃないかと。


サシバエを知る

2020年07月21日 | ハエ対策

 害虫といえば、ゴキブリ!!これが飲食店に出たのを見つけたら、もうダメだ~~。以前、かなり高級な(というか、高い値段なの)寿司店で食事中に、隅っこにチビゴキを見つけちゃってさ!!見つけたのを後悔したのは、そのせいで寿司がいきなり超まずく思えてしまった(味を覚えていない)のと、この店の衛生管理をとことん疑ってしまった(生ものを食べさせる店ですからねえ)、更に言うと「もう絶対来ないだろう」と思いつつ、会計の時に「お宅、ゴキブリがいましたよ」と言えなかったことさ 

 そう、普通の客はそういう事を店に直接言うことはしません。それっきり来なくなる、だけ。従って、店側は「なぜ、リピートがないのか?」について、考えない。こういうのもチャンスロスの一つだと思います。

 ハエアブだらけの乗馬クラブに呆れ果てて、二度と来んわ、となってる人、相当多いんじゃないかと思うんですよ。「そんなもんか」という風にお客様の感覚を麻痺させて、アブに刺される=健康被害を被らせて、しょうがない、って今後通用しますか?ありえヘン。なんとかしようとしていただきたいんです。

 そのためには「敵を知る」。孫氏の兵法ですが、2千年以上前の人なのに、「敵を知り己を知れば100戦危うからず」というこの言葉は、今でも重要な真理の一つだと思います。で、サシバエについて、こんなに超悪役なのに、未だよく分かってないところがあるのにビックリなんですけど。でも、おおむね分かっているサシバエの生態&生活環は以下の図に。

 ハエを減らす=この生活環のどこかを断ち切れれば、減らせるはずなんですよ。

 で、今乗馬クラブがやっている対策のほぼ中心が「成虫をどうにかする」方法で、しかも、それを「天然の虫よけ」というのでやっています。通用するはずがないんです。例えば「ハッカ油」がいいと言われてますが、ありゃ要するに、嗅ぎつけていない臭いに警戒して寄ってこなくなるだけで、なんだ大丈夫か、と理解すると(虫のくせに)慣れちゃって無効になります。あと、その臭いをかいでいるのは虫だけじゃない、馬だって嗅いでいるんです。変な臭いを体に付けられるのを嫌がっている馬は多いと思います。ますますイラついて危険が増す。その辺をちゃんと考えていないのは、おかしい。

 一方、成虫は普段草むらにいるらしい、ので、色々な畜産牧場で、成虫をなんとかやっつけようと、畜舎周囲の草むらに殺虫剤を撒いています。でも、成果は上がっていない。なぜなら、サシバエの生活環が、オンシーズンだとメチャクチャ速い(卵成虫に約2・3週間程度)から。殺虫剤を撒けば一瞬成虫は減るけれど、翌日すぐ、次のサナギが羽化して成虫になる。だから、全然減らないように見える。幼虫は成虫の4倍はいる、らしい。どこかにウジャウジャしているわけです。ですから、成虫を対象とした駆除というのは最も非効率なんです。

 ただ、成虫が普段隠れている「草むら」をどうにかするのは重要だと思います。簡単に言えば「草刈り」ですね。これはもう、ハエだけじゃなく、アブ・マムシ・ネズミ等々野生動物を畜舎に引き寄せないために一番有効。隠れ潜む場所があるから近寄ってくるわけで、近寄らせないためにはせっせせっせと草刈りするしかありません。草刈りは今や当然草刈り機でやるわけですが、従来のエンジン式が凄い騒音なもんで、馬場周囲でゴウゴウ使えない、という理由でやりにくい、やってない、というクラブも多そうです。エンジン式は使い勝手が悪い・重い・ウルサイ・振動がきつい・メンテが大変、ということで、結局使っていないクラブは多いんじゃないでしょうか。

 最近出てきた草刈り機に充電式があります。おそらく今後はこっちが主流になり、エンジン式は絶滅するんじゃないかと考えてます。京アニの事件以来、ホムセで混合ガソリンを取り扱っているのが、すごく嫌だ。いくらでも放火できちゃうじゃないかと思って、という人は増えてるでしょうし。この間、充電式を見にマキタの実演を見に行ってみました。もんの凄い進歩で驚きました~~。電気式だから当たり前っちゃ当たり前なんでしょうけど、あまりにお利口さんなので。しかも、静か・使いやすい(特に女性)・軽い・振動少ない・防滴になっているのでメンテ楽。あと、マキタのシリーズは充電池が互換性があって、電池一つでなんでも動く。よくできてます。

 

これ、かなり気に入りました。樹脂刃で安全性が高い。一見チャチそうですけどそうでもないのは実演で分かりました。草刈りも危険業務の一つですから。

 でもね、草刈り程度でどうにかなるはずもないです。他の対策は次回。