ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

テーマ別に連載形式になっています。テーマ別に最初の記事からお読みください。

ホースオーナーと装蹄

2019年08月30日 | 裸蹄管理

 装蹄師さんの状況については、前回まで書きました。では、馬の飼主、個人のホースオーナー・乗馬クラブ等ではどうなんでしょうか?

 馬を飼うって、金がかかるんですよね。一頭一か月の維持費でもってアパート借りられちゃう。これはどういう事かというと、今の日本の馬の飼主さんのおそらく7割くらいは乗馬クラブに預けているから。馬一頭を自宅で飼うとなると、まあ飼っていらしゃる方もいるけれど、犬みたいなわけにはいかない。屋内で飼ってる人は今や全滅に近いでしょう。大概は、自宅&厩&ちょっとした運動場(といっても、サラレベルのサイズだったらできれば40m*50m程度の面積は、最低でも欲しい)がないと。これを実行できるのは、地価が下がる傾向にある今の日本でも、やっぱり田舎、あるいは農家さんのような土地持ちで、周囲にあまり家がないことが望ましい(近所から苦情が来る可能性もあるからですが)。こういう場所を確保できる方は少ないし、世話するのも結構な重労働だったりするので、それも考えると、やっぱり人数がいて、運動場がある、乗馬クラブに預ける方向になっちゃうんです。まあ、自宅で飼ってもそこそこお金はかかる。金持ちの道楽じゃないか、と言われると、その通りかも・・・・。

 で、預託となると、大体こんな感じ。

  1. 預託料:ひと月いくらで契約。安くても8万円/月。高いと20万/月。大卒初任給より高いじゃないか。
  2. 調教料:必要なら頼む。これも数万円/月。競技馬なんか頼むもんじゃないです。
  3. 装蹄料:大体一か月~一か月半に一回。1万円~2万円台はかかる。呼ぶ運賃もかかるし。
  4. 治療費・予防接種料:実費(クラブが上乗せ料を取ることはない)ですが、馬の獣医は偉そうな料金を取るから。治せもせんくせに。
  5. クラブによっては、別に騎乗料も取ったりしますね。

というわけで、装蹄料はそこそこの額を要求されるんですよね。落鉄なんかすれば、また呼ばなくちゃだし。もう、馬を一頭持つと、金が吹っ飛んでいく。金を節約しようとしても装蹄している限り、固定費で出て行ってしまう。

 今、殺処分される競走馬をどうにかしようじゃないか、というプロジェクトができています。いい活動ではあるのだけど、こんなに金がかかるとなると、個人で馬を飼うなんて人は少なくなるでしょう。可処分所得がどんどこ減っている今の日本ではね。このままじゃ、受け皿がなくなる。馬を飼う金が安く上がるようにしないと、って考えるんですが。となると、装蹄あたりから削るのがいいんじゃないか、と思っちゃうんですよ。


装蹄師さんはツライ。。。2

2019年08月28日 | 裸蹄管理

 装蹄師の技術継承が民間になってしまった、というのは置いておいて。

 装蹄師の仕事とは何ぞや、というと、YOUTUBEに頼っちゃうんです。こういうの。

Farrier / Blacksmith Hot re-shoe how Its done in HD

 見るからに、危なそうな仕事だ。。。。心身にこたえそう・・・・。

 とりあえず、この動画の馬はおとなしくしていますが、そんな馬ばかりではない、のは当然で。隙あらば蹴り飛ばしてやろう、踏んづけてやろう、と手ぐすね引いて待っている馬は多いんですよ。そりゃそうで、蹄をあんな真っ黒になるまで焼かれる、ピリピリ来ないはずないですからね。「感じない」なんて大ウソだ。歯医者を思い出せばよく分かるでしょう。水程度でも、しみるもの。「痛かったら手を上げてください」、で、手を上げても「じゃあ我慢してください」でオシマイ。無意味なことを言わんでくれ、と思っちゃう。馬だってそう言いたいでしょうねえ。場合によっては、熱い鉄を吹っ飛ばされる可能性すらある。危険極まりない。

 それだけではない。装蹄師の仕事は荷物が多い、しかも鍛冶の仕事だから、鉄を真っ赤に熱して変形させるレベルの高熱バーナー・蹄鉄を曲げるためのめちゃくちゃ重い台座、それを一々現場に運んで仕事する。そんなのを普通の車に積むと、サスペンションが下がっちゃって、普通車なのに登坂車線となるんです。そんなんで、くそ暑い夏場も火をガンガン焚いて仕事しなければならない。熱中症になる、こともできない。危険だから。今は、クラブ専属という人はほぼいないでしょう。装蹄師の数が激減していることもあって、道具を積んで全国区を飛び回っている人が多いんです。

 当然ながら、腕っぷしが強くないと務まりません。この仕事は肩を痛めることが多いそうですが。

 で、光熱費がめちゃくちゃかかる、んじゃないでしょうか。聞いたわけじゃないけど、バーナーの熱レベルからすると、多分相当なものでしょう。あちこちに行く運賃はオーナーやクラブが持つとしても、その時間は誰も払ってくれない。釘代・蹄鉄代、材料費もかかるなあ。どうも、仕事に見合ったコスパじゃない気がする。

 でその上に、オーナーや乗馬クラブの理不尽な要求や文句を聞かされる。やれ跛行した・落鉄した、あんたが下手なせいじゃないか、とやられる。

 もっとも、装蹄師で偉そうにしている人、多いですけど。馬を中心にして、お互いに文句を言ってるわけだ。蹄病が出た、クラブが悪い、オーナーが悪い、いや、装蹄師が悪い、なんなんでしょうね。お互いに責任をなすり合って。ただ、装蹄師のせいにされるケースが多いから、装蹄師側が構えちゃって、対等に話し合いができない場合が多々ある。馬がまいっちゃいますよ。いつも自分を中心に不穏な空気が漂っていると。


装蹄師さんはツライ。。。1

2019年08月28日 | 裸蹄管理

 馬にとっての「蹄鉄のダメさ加減」というのを書いてきたのですが、では、人間にとってはどうなんでしょうか?

 なーんか、いい事なさそうな。。。。

 装蹄師という仕事は、日本では明治以降に生まれました。それまでは、馬に蹄鉄をつける、なんていう技術も、その気もなかったわけで。必要かどうかは特に考えず、とにかく欧米列強っぽくしなくちゃ、という中で装蹄も行われるようになったんです。以来、今日まで、この「装蹄」について「必要かどうか」という検証は一切なされていない、のは重要なことです。何にも考えてない、と言い換えてもいい。馬には蹄鉄を付けるもんだ、というのは「節分には豆まきするもんだ」並みに浸み込んでますよね、日本人の脳内に。ところで、「節分に恵方巻を食うもんだ」という変な風習は、つい20年前くらいに始まったのはご存知でしょうか?これはスーパーが始めたキャンペーンがきっかけで、あっという間に全国に広まってしまいました。こんな風習が日本のどっかにあった、かもしれない、レベルの話をスーパーが商魂たくましく全国区に仕立てて、それが習慣になってしまったんです。この風習が節分に引っ付いていく様を眺めてて、これも洗脳の一種だよなあと感慨がありましたが・・・・。

 馬に蹄鉄も同じこと、だと思うんだけどなあ・・・・。

 大体この手のキャンペーンって、動物にはた迷惑なことが多いですよねえ。土用にはウナギを食うもんだ、で、ウナギは絶滅危惧種になってしまうし。秋にはサンマ食うもんだ、で、サンマが不漁になってる、ような気もするし。土用にウナギを食わなくちゃならん理由なんか別にないよね。これだって、江戸時代に平賀源内が言い出したことで、それを未だ踏襲してるなんて、ヘンな話。

 装蹄をするのが仕事の装蹄師なんですが、日本では、以前は国家資格でした。一応重要な「師業」の一つだったわけです。ところが、1970年(昭和49年)にはこの国家資格は廃止されてしまいました。自動車がどんどん普及して、馬が減り、需要が減った結果といえます。で、その後、装蹄師は民間資格になり、なんとか細々と技術水準を保つようになったわけです。

参考


蹄の管理ー蹄鉄が馬に及ぼす影響2

2019年08月14日 | 裸蹄管理

 蹄鉄が馬の身体的な面に及ぼす悪影響といえば、「蹄の構造・構成を変化させてしまう」点に尽きるのではないでしょうか。

 何回も恐縮ですが、野生馬の蹄底。

 

この形から読み取れるのは、蹄全体でバランスよく体重を受け止めていそう、ということ。かなり堅そうですね。

 で、家畜馬でよいとされている蹄底の形状がこちら。

野生馬の蹄と比較すると、蹄叉が大きく変化しています。これはおそらく、削蹄によって蹄底が平らになるので、それを補うために蹄叉が大きくなる。それで、蹄全体で体重を支える状況にできるようにしているんでしょう。

 ところが、蹄鉄を打つと、こんな蹄になってしまいます。

図にするとこんな感じ

となる。

 蹄叉が縮んで退化してしまう。これは、体重を支える部分が蹄壁に変更されたことを意味します。しかも、装蹄する際に、なぜか、必ず蹄叉を削り取っちゃうんですよ、装蹄師が。なぜでしょう?理由がよく分からない。

 蹄壁は元来、蹄内部の構造を保護するためのものであって、体重を支えるための構造体ではありません。それを、蹄鉄という強度がやたらある板を張り付けちゃうために、体重を支える重要な部分であるはずの蹄叉が役割をうまく果たせなくなり、蹄壁に体重を支えさせる状況になってしまうんです。これが馬に多発する足回り故障の原因です。

 蹄叉は、いわば天然のクロックスみたいなもので、絶妙なクッション構造でもって馬の脚にかかる負荷を軽減します。さらに、蹄叉は非常に滑りにくい。従って、馬が躓いた程度でバッタリ倒れるなんてことがないようにしてくれる。なのに、蹄鉄にかこつけて大事な構造体をおろそかにしてしまったから、骨折が増えてしまいました。蹄鉄は滑りますから。軽減しようとクランポンなんかくっつけるもんで、さらに蹄壁を傷める。また、蹄鉄から蹄壁へ、接地時の衝撃がダイレクトに伝わるようになってしまいました。すぐ故障したり体を傷めてしまうのは、そのせいです。色んなものを足して、結局裏目にしか出ない。意味がない。


蹄の管理ー蹄鉄が馬に及ぼす影響1

2019年08月14日 | 裸蹄管理

 蹄鉄の「道具としての不備」について書いてきましたが、馬にとっては実際どうなんでしょうか?

  馬は動物です。従って、香港の人達みたいにデモなどやってアピールなんてことはしませんし、できません。動物、特に家畜は、人間の行いに対して対応するだけです。人間が「怖い対象」となれば逃げるし、「可愛いわあ」などとやれば、増長する、のは野生動物。彼らは人間について、特に「親しみ」なんか感じていないからです。

 家畜になってくれている動物の大きな特徴は、「人間にある程度危害を加えられても、だから人間に仕返ししようとはしないで、やっぱりそばにいることを選択する」点じゃないかと思います。例えば、獣医療ですが、なんのかんのいっても、注射したり手術したり、無理やり薬を飲ませたり、それが「治療」と理解していない動物にとっては、一種危害を加えられてるのと同じです。でも、家畜動物は、割と「そんなもんか」で状況を受け入れてしまう傾向が大きい、ので、治療ができてしまう。これは、獣医側が「動物のためですから」とかなんとか言って、どんどんアグレッシブで金もかかる治療を飼主に押し付ける事態を招く要因になりかねない。例えば、ガンの治療だなんて、動物は知りませんよお、というのは重要なポイントで、人間なら理解力があるから心身に負担の重い治療をする動機づけができるけど、動物は別にそうではない、というのは、つくづく考えておかなければならない。

 で、馬ですが、本当に我慢強いなあと可哀そうになっちゃうんですよね。ハミ、あんなもん口の中に押し込まれた状態で運動できるかっつの。社会常識的にありえヘンでしょうが、というところからハミなし頭絡は始まっているんですけども。じゃあ、蹄鉄は?感覚のない場所に釘打ってるんだから、問題ないべ、というのは本当でしょうか?

 人間で似たようなものといえば、ネイルアートでしょうか。ネイルアートって、ずうっと付けっぱなしなんでしょうか?付けたことないので分からないんですが。ただ、付けていたらイライラするだろうなあ、とは思います。何をやっていても、眠ってる間も、いつ剥がれるか、いつどこかに引っかかるか、何にも考えずにいられる人はそんなに多くないのでは?馬は、自分が蹄鉄なんてものを付けられている、という自覚はないです。しかし、足元の「なんとなく違和感」はずうっとあるでしょう。その違和感が大きくなったり小さくなったりするんだろうけれど、まず、0にはならないのは異物の特徴です。そのかすかなイライラが高じて疝痛を起こしたりする。

 馬と付き合い始めた頃、なんでこう、この動物は簡単に病気するんだ?と思ったものですが、こうした違和感が原因なら筋が通る。いきなりバタバタ暴れたり、いわゆる「物見」をしたり、普通の動物では考えられない行動を簡単に起こしてしまうのは、そうした違和感に、つねにどこか苛立っているから、でしょう。

 馬の精神的なものに及ぼす悪影響について述べましたが、じゃあ、身体に対してはどうか?は次回。