ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

テーマ別に連載形式になっています。テーマ別に最初の記事からお読みください。

馬は治療しにくいのかー3

2019年09月12日 | 馬の医療や管理について

 馬は、大動物の中では、治療しやすい方なのでは、というのは前回書きました。でも、そうはいっても、なかなか馬に飲み薬をやって治療、という話は聞かない。その理由としては

  1. 基本的な投薬量がよく分かっていない。
  2. 経済的な問題(連続して診療できない事情)
  3. 疝痛恐怖症
が挙げられるのではないかと思います。
 
1)薬用量の決定というのは、本気でやると非常に大変です。投薬量は、薬剤が持つ効果を十分に発揮して、かつ副作用がほとんど出ない、という範囲を決める、という事なんですけど、これを決定するには、体内での薬物動態(どう吸収され、どの臓器に集まり、どこを経由して排出されるか)から始まって、色々調べなくちゃなりません。
 小動物に使われている動物用医薬品については、かなりきちんとしたデータに基づいて、薬用量が決定されています。ただ、認可されている動物用医薬品だけで世の中の病気に対応するのは無理なので、人間の医薬品も使うことになる。この場合は、しょうがなくて、人から外挿して類推して投与量を決めます。で、使いながら様子を見る、感じでしょうか。後は、世界の文献を探る、とか。
 大動物の医薬品を見ると、なんだかその辺がいい加減なんですよね・・・・・。ホントーにこの量で大丈夫なの?と思うことが結構ある。多分、大動物の場合、特に牛や豚のような家畜は、「治療」にいそしむ、という可能性は限りなく0で、体調が優れなければ、じゃあ屠場に出すかあ、で終了になるケースが多いから、必要度が低いんでしょう。
 馬は、しかし、特に最近の乗馬馬の皆さんにはオーナーが付いている人も多いから、何とか助からんか、治療してもらえないか、という潜在ニーズは高いはずなんです。拾うべきです、獣医なら。
 
 でも、ここで2)が出てきちゃうんですよね~~。なんでこう、金がかかるんだ???という疑問というか、悲鳴というか。最近は、小動物業界も患者からがめつく金を取る獣医が増えてまして、そういう事をするから、自分の首を真綿で締めることになるでしょうが、と苦々しく思っているんだけど。治療に金がかかる、じゃあ、飼うのやーめた、って人が増えてますから。動物を飼う人が増えなければ、我々の仕事のニーズもなくなっちゃうっての。
 馬の場合は、そもそも大動物を診察します、という獣医が少ないし、きちんと診断して、こういう治療をするから、この薬飲ませてください、なんてやってくれる獣医なんか皆無でしょう。で、3万円+検査料等々、下手すると一回の診察で5万とか吹っ飛んでく、それでまともな治療案も提示されないんじゃ、もういいですよ、となりますよね。
 この件で特に問題なのは蹄病だと思います。蹄病については、後ほど詳述しますが、原則削蹄師や装蹄師は、蹄病を治せません。治す権利も持っていない病気なんだから、獣医が治さなくちゃなりません。なのに、未だに「蹄葉炎の原因は不明」なんてアホなことを言ってるんだもの、なんの頼りにもなりゃしない。この間、自分の馬について、そういう事がありまして、馬の獣医と大喧嘩になったんですけどね。治療方針が出せないなら、自分の馬に口出しするな、という事でね。
 
 それから、飲み薬に抵抗感がかなりありそうな理由として、3)が挙げられると思います。某クレイン系に通ってた頃は、下手な生徒に付き合ってくれる優秀なお馬さんが次々に疝痛でお陀仏になるので、これはいったいどういう事なのか、と心底思ったもんです。疝痛もね、一般的には原因不明とされているから。こちらとしては、もう原因は明快すぎるんですけどね。これも、後ほど詳述します。
 
 ただ、この件は、自分の中でも治療上の心理的なハードルになっています。新しい薬を飲ませようと考えた時に、飲み薬をやったら、途端に疝痛起こしてバッタリ、となるんじゃないか、という。自分ちで飼っているなら、さくっと対応できるだろうけど、馬が乗馬クラブに預託されているということは、発見が遅れる、判断が遅れる、知らせるのが遅れる、そんなこんなでお陀仏になるのでは、という恐怖心ね。普通には、あり得ないんですが。
 その理由は、馬の消化管構造から明らかなので。要は、馬の消化管のメインは盲腸~結腸で、ここに薬剤が届く前に小腸で全部吸収されてしまえば、問題はない、はずなんです。そうは思っても、飲ませた事のない薬を飲ませて大丈夫かなあ、となると、飲ませないとお陀仏だ、というあたりまで行かないと踏み切れない感じはありますね・・・・・・。
 
 ので、自分の馬は気の毒に、あれこれ実験されちゃってます。別にお陀仏にしようというわけじゃないんですが、色々病気をしてくれるもんだから、結局治さざるを得なくなった。本当は、こういう事は馬の獣医が根性入れてやるべきなんですけどね。結局責任逃れなんでしょうなあ。文句言うだけなら簡単だもん、オーナーの飼い方が悪い、乗馬クラブの管理が悪い、装蹄師がへっぽこだ、なんとでも言えるからさ。
 
 で、2)に関しては、薬用量がどうやら少なくて済むらしいという事が見えてきています。従って、意外にお金がかからないことが分かってきました。ですので、ぜひ、トライしていただきたいと思います、特に、蹄病については、飲み薬を使わない限り治りません。3)については、要はチームワークが大事なんです。クラブの人には、きちんと薬を飲ませてもらうように依頼する、なにかあったら、即連絡を入れてもらう、獣医にも連絡を取ってもらう、こういうチームワークをつくれないクラブが多いから困るんですが。以前、クラブ側が勝手に投薬を中止していたことがあって、その時は怒りましたけど、割とこういう事を勝手にやるクラブが多そうなのも事実なので。

馬は治療しにくいのかー2

2019年09月11日 | 馬の医療や管理について

 消化管構造の違いについて、前回述べました。草食獣の治療のやりにくさは、結局のところ、抗生剤が使いにくい、という1点にある。後は種別にあれこれ。例えば、保定。治療をおとなしく受けてくれるようにとっ捕まえる方法なんですが、治療といっても、動物にとっては「危害を加えられる、ひょっとしたら殺されちゃうかも」でしかないから、特に初診の際には大暴れされることが多いんです。

 犬や猫のような肉食系は、当然攻撃してきます。噛みつくわ引っ掻くわ、どちらが大変かというと、圧倒的に猫。犬は口さえ押さえれば何とかなる場合が多いんですが、猫は、噛んで引っ掻いて、で、部屋中逃げまくる。こうなると、まず、捕まらない。時々野良猫を「病気したので何とかできないか」と連れてくる方がいるんですが、なぜか段ボールに入れてきちゃう。すると、段ボールをぶち破って天井に逃げてって落っこちてきて、というエンドレスになってしまう事すらあります。で、連れてきた人が捕まえようとして本気で噛まれて大怪我、というパターンも多い。猫には「猫引っ掻き病」という恐ろしい細菌感染症があって、噛まれた腕に障碍が残ってしまう人がいるくらいなんです。

 では、ウサギはどうか。これはもう、「死んじゃう」んですよ。本当に。ひどい目に遭うくらいなら死んだほうがマシ、というのを本気で実行するから、草食獣はコワイ・・・。小鳥もそうですね。恐怖というのは、動物にとって最大のストレスなんでしょう。他にも理由はあります。ウサギはほぼ、人に懐かない。いや、ウサギブログとかあるじゃないですか、確かに懐いてるウサギのブログだの動画だのありますが、あれは極めてまれなケースで、診ている感じでは99.5%のウサギは全然懐かない。それをなだめすかして治療する、ウサギなりに受け入れてくれる場合もありますが・・・・、かなりお互いの忍耐が必要。許容レベルが全然違うからねえ。

 大動物で言うと、牛って大変ですわ。懐いてないもの。人間=餌くれる、程度の認知だと思われます。これは、昨今の飼育様式にも問題があるでしょう。1000頭余りの多頭飼育が当たり前ですから。懐くわけないですよね。また、懐く、と人間側もしんどくなりますし。

 馬は、治療しやすいと思います。人に懐いてますもんね。どんな暴れ馬、といわれてても、一応人を乗せるんだもの。一応世話もさせるし。あまり根に持たない風でもある。いーや、すぐ蹴る、咬む、という反論については、蹴られるようなこと、咬まれるようなことをやらかしてるんでしょうが、と言い返すわけです。だーかーらー、ハミと蹄鉄やめなさい、それだけでかなりイラつきがなくなるから。そういうアクションもしないで、馬のせいにしないことです。

 それとは別に、消化器構造上、馬には牛にない、極めて治療に向いた有利な点があります。ズバリ、「飲み薬が使える」

 牛の場合、4つに分かれた胃と反芻という習性のせいで、飲み薬を小腸まで無傷で届けるのは実質不可能。で、注射しか使えない。馬は、盲腸以前の消化器構造がシンプルだし、反芻なんてこともしませんから、飲み薬が容易に小腸に届く。しかも、治療していて感じることですが、馬の小腸は、ものすごく消化吸収能力が高そうなんです。小腸はメチャクチャ長いんですが、そこを食渣が通る間に消化できるものはとことん消化吸収してしまうらしい。つまり、薬を大量投与しなくて済む。

 馬の体重はサラなら500㎏前後、普通薬の投与量は体重換算で決めます。それで換算すると、馬に飲ませる薬の量は、非現実的に多くなる、筈なんですが。実際には西洋薬で人の2~5倍程度、漢方だと、人に投与する量より少量(1頭当たりですよ)で、十分効果がある。多分小腸で薬を全部吸収してしまうんでしょう。メチャクチャ薬剤効率が良さそうなんですよ。


馬は治療しにくいのか?-1

2019年09月08日 | 馬の医療や管理について

 とにかく馬は病気する、ケガする、で、すぐ死んじゃう生き物、という事になっています。今まであちこちの乗馬クラブで、優秀な馬が疝痛起こして、たった一晩でコロっと死ぬのを見ています。従って、馬の飼主は日々オドオドして暮らすことになってしまう。いつ疝痛を起こすか、いつ怪我するか、いつ骨折しちゃうか?不安でならない。いったんこうなったらもう、助けることが難しい、とされているから。こんなんで馬を飼うのが「楽しい」となるでしょうか?こんな動物は馬くらい。異常です、はっきり言って。異常は正さなくてはなりません。

 そんなもんだ、という諦めはどこから来てるんでしょうか?馬は大動物だから?治療が難しいから?そんなことありゃあせんですよ、小動物獣医から言わせると。

 その前に、馬という生き物と、他の生き物の比較をしてみます。哺乳類は、その筋肉だの骨格だのという方面の解剖はほぼ同じです。馬は指が一本じゃないか、まあそうですけど、それは牛みたいな偶蹄類だってほぼ同じ。特別なものではない。哺乳類でバラエティがあるのは、消化器系とメスの生殖器系といえます。生殖器系は置いておいて、消化器系について。まず、犬猫人のような、雑食~肉食獣の消化器系の図がこれ。

あのー、これ、かなり大雑把な絵ですけども、基本的には小腸で消化吸収を行って大腸で糞便にまとめて排泄、と。盲腸は、我々にとっては、おまけ程度になってしまってますね。

で、草食獣の場合。まず、ウサギ。

草食獣と雑食~肉食獣とは、全然消化器構造が違う。別種と考えていいくらいです。ウサギ(ハムスターなんかも同じですが)は、巨大な盲腸に複雑な腸内細菌叢を抱えています。この細菌群が、肉食獣が全く消化できないセルロースを分解して消化できる形に変えている。で、ウサギ等のげっ歯類は、消化できるようになった糞を、夜中にこそこそ食べてるんですよね。「食糞」という奴ですが、それで完全に消化しきってぽろぽろウンチに化ける。盲腸内細菌叢がかく乱される命取り、というのは、盲腸内が発酵モードから腐敗モードに変わってしまうのが原因です。

 盲腸内細菌叢をかく乱するものは色々ありまして、広域殺菌型の抗生剤はもちろん、炭水化物全般・糖質もまずい。ウサギ用クッキーなんか、絶対にあげちゃダメなんですよ。これは、草食獣全般に言えることです。すなわち、濃厚飼料は元来、草食獣に全く向いていない飼料だということ。

では、馬は。

馬の場合、盲腸もデカイんですが、それに続く結腸も長くて大きい。ここで、本来なら小腸が行うべき消化吸収を無理に行っているフシがあるんです。馬は食糞なんかしませんけど、ちゃんとでっかくなりますから。ただ、消化効率は悪い。ので、糞中に未消化の草の線維が混ざるわけ。

じゃあ、草食獣中げっ歯類に次いで繁栄している偶蹄類代表の牛はどうか。

胃袋が1~4胃に区分けされていて、しかも反芻といって、牛たちはいったん食べた草を胃から口まで戻してもぐもぐやってます。そうやって、消化しづらいセルロースをとことん分解し、消化してしまう。胃の中の微生物叢もハンパなく複雑です。ので、牛の糞便は形をなさない、泥状になるんです。

こういう胃袋の構造を複胃といいますが、実は、爬虫類のイグアナも似たような胃の構造を持っていて、固いサボテンなんかもちゃんと消化できるようになっています。

 犬猫人間は排便回数が少ないから、排便のしつけもなんとかできますけど、草食獣の場合、しょっちゅうぽろぽろ排便するので、排便のしつけがなかなかうまくいかない。というか、そんなことまでしつけたら、草食獣はノイローゼになるんじゃないかしらね。個人的に、「ここでしかしたくないもんで」というウサギなんかはいますけども。


馬の獣医療がピント外れなわけ

2019年09月04日 | 馬の医療や管理について

 今、「馬の科学」という雑誌が手元にありまして。ウマ科学会の月刊誌の一つ、発行はJRA。ウマ科学会のメンバーとしては、一応毎回目は通してみるんですけど・・・・・。臨床に全く役立たない情報ばかりなんですよ・・・。

 小動物臨床を始めたばかりの頃って、今と違って薬がひどくて、例えば心疾患はなかなか治療がうまくいかなくて。で、例えば「循環器疾患100症例」みたいな本があったりして。その名の通り、100症例書かれている。症状・問診・検査・診断・治療・予後の流れを追いかけることができるわけ。そういうのがかなり勉強になりましたけども。

 そういうのを期待して、ウマ科学会に入ってみたんですけど、なんか違うんですよね。。。。

 「馬の科学」第56巻、おや、見直してみると、とんでもない紙が挟まってるじゃないですか。えーと、「廃刊」ですか・・・・。そうか、じゃ、ますます情報を得づらくなりますね・・・・。

 ともあれ、こういう雑誌を読むと、当たり前だが、馬の事ばかり書いてある。だから、いつまでたっても馬を理解できないんでしょうね。

 小動物臨床というのはなかなかな仕事です。子供の頃、動物園の獣医さんになりたいなーと思っていた。それをかなえたクラスメートもいる。彼女は、かのシャンシャンちゃんが生まれてからしばらくの間、よくインタビューに出てまして、顔色を窺って心配してたもんです。寝てなさそうだあ、とか思って。一方自分はどうかというと、やっぱり多種多様な動物を診察することになってしまって、それなりに願いがかなったのかも、しれない。これはですね、ヘンな生き物を買いたがる、で、飼いたがる日本人が悪い。元気な時はいいですけど、いざ病気になったときにおたおたする。で、頼られてしまうんですな。そういう要望を突っぱねて犬猫獣医でもやってはいけます。大学では爬虫類なんかこれっぽっちも習わなかったし、鳥といえば、鶏しか習わなかったし。鶏の場合は、病気=殺処分ですから、基本。でもね、ご要望がある以上、やっぱり勉強して、治療して、獣医が投げ出したら、その動物はどうなる、という自覚を持たざるを得なかったから。

 で、そんなことをやっていると、世の中色んな動物がいるけれども、治療の方針を決めるにあたって重要なのは、哺乳類・鳥類・爬虫類という分類もだけど、もっと重要なのが「食性」で、草食か、雑食か、肉食か、で治療指針が全然変わっちゃうんですよ。

 草食獣の典型がウサギ。哺乳類中一番厄介じゃないかと思っている。実に診察しにくい(診察中にオダブツ、になりかねない面がある)だけじゃなくて、治療も難しいんだが、一番困るのは、草食獣には安全に使える抗生物質が本当に少ない点。ペニシリンをはじめとしたβラクタム系・セフェム系という、普通第一選択で使う抗生剤をウサギに投与すると、ウサギって死んじゃうんです。これは、抗生剤が毒になる、からではない。この手の広域殺菌性抗生剤は、消化器内の腸内細菌叢のバランスを崩して、悪玉菌を増やしてしまう、その悪玉菌にウサギが殺されちゃうんですね。

 この件は、ウサギだけではなく、ハムスターのようなげっ歯類や草食性のカメやイグアナといった爬虫類もほぼ同様と考えられている。小動物の獣医で、草食獣を診ている先生方の間では、草食獣にβラクタム系・セフェム系は禁忌、というのは常識。

 なのに、なぜ、馬にセフェム系のセファロチンだの、βラクタムのマイシリンなんか、使うんだ???

 ウサギと馬の消化器構造はほぼ同じ、食性もほぼ同じ、だから、元来βラクタム系・セフェム系は絶対にダメだ。大体、セファロチンなんか、大昔のしょうもない抗生剤、効くわけない。それどころか、いつ製造中止になるかわからんのに。マイシリン使ってペニシリンショックを起こす馬は多いです。そんな危険を冒してまで使う意味がある薬じゃありません。

 ところが「馬の科学」56巻を読むと、「βラクタム系の抗生物質の検討」なんて論文が出てる。そんな論文を出しちゃう、審査員も、こういう常識話を知らないのか~~~。それじゃあ、廃刊でもしょうがないですよ。

 つまりまあ、馬を他の哺乳類(人も含む)と比較検討して、治療を考える、というようなことを全くやってないから、いつまでたっても空回り、なんでしょう。で、大動物だから特別、だの、馬は特殊だから、だの、何と比べているんだ???比べてなんかないじゃないですか。


獣医はなにをやっているのか??

2019年09月03日 | 馬の医療や管理について

裸蹄管理の話からちょっと脱線しますが。

 馬の獣医ってのは何をやってるんでしょうかねえ?小動物臨床獣医師の率直な疑問ですけど。自分が治療した馬は、みんなそこそこ治療の成果が上がるのに、馬の獣医が関わると全然よくならないどころか死んじまうってどういうことなんすかねえ???うんざりだよ。ヤブ医者には。

 馬の臨床本のプロ向けの本、日本語だと

くらいでしょうか。一応馬が起こしそうな疾患が網羅されてるけれど、とにかく治療法がお粗末。書かれてない、といっても過言ではない。ウソもいっぱいあるなあ。蟻道が簡単に治りますって、簡単に治ったケースなんか一度も見たことないよ。著者の先生は、本当に現場でじっくり診察してるんかいな???

  そう、問題はそれだ。馬の先生方は、1頭の患者を長期間継続して診察したことってないんじゃない?

 いや、それどころか、カルテだって作ってるフシがない。そんなんで、病気の何たるか、が理解できるはずがない、と思いますけどねえ。

 自馬をもって、否応なく疾患治療と向き合わざるを得なくなった。だって、馬の獣医があまりにも当てにならない、くせして偉そうな料金を取るから。往診代だけで3万円も取りくさる。その基準が何なのか知りませんけど、そんなやらずぼったくりの料金を取られて、ホイホイ獣医を呼んで相談する、気になる飼主なんかいませんよ。自分だってごめんだ。だから、いよいよもう、どうにもならなくなってから獣医を呼ぶ、で、あーあ、死んじゃった、あるいは、もうこりゃ安楽死ですねえ、でオシマイ。これは診療じゃないですよ。

 獣医が、飼主も馬も守る、という仕事上のモラルを逸脱してるんだ。としか、思えない。ヤブだしさあ。もっと言うと、ヤブぶりを認めようとしない!!ヤブだって自覚しろっつの。

 先日、ゾエティスという会社が出す新薬の学術講演会に行った。小動物臨床は凄いことになっている。とうとう、モノクロナール抗体が治療薬として認可されたのだ。これは、人医療域でも最先端の薬剤で、従来の薬剤定義から完全に外れたものになるので、勉強しなくちゃならない。この20年くらいの進歩進展は目覚ましいので、大学で習ったことなんか、もうとっくに使えなくなってるんですよ。常に知識を更新していかないとヤブ獣医になり下がる危機感が、最近は強い。

 でも、大動物は違うようだね。未だに昭和ってわけ??