ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

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はじめに

2018年02月02日 | はじめに
 日本ビットレスブライドル協会代表世話人です。

 仕事は獣医です。基本的には小動物臨床です。診ている動物は色々、犬・猫に限らず、ウサギ・ハムスター・チンチラ・のようなげっ歯類や爬虫類(カメーミドリガメやリクガメ等々)、鳥類も。獣医師免許は、日本の場合、資格一つで動物ならなんでもございとなれるのです。

 ちなみに、動物病院に時々「鳥専門ですか?」のような質問を頂きます。この手の「専門医」という制度は、実は日本の獣医界には公的には存在していません。認定医制度をつくっている研究会はありますが、これもあくまで私的なものです。また、病気についても「内科」・「外科」等々はすべて「自称」でして、認定医の制度はありません。いくらでも「標榜」することは可能なので、そういう看板があるから凄いんだ、というのとは違います。ダマされないように。


 ところで、動物には色々な分類法がありますが、獣医として重要な分類は「草食獣」と「雑食・あるいは肉食獣」の違い。どちらが治療しやすいかというと、圧倒的に雑食・肉食獣である。その理由として、例えば、抗生物質の使用に制限がない、等が挙げられる。草食獣は、主食のセルロースを分解発酵させないと消化吸収ができないので、腸内細菌叢が雑食・肉食獣よりかなり複雑である。従って、例えば、感染症に一般的に使われる最初の抗生物質であるペニシリンをはじめとしたベータラクタム系の抗生剤を使うと、簡単に死亡してしまったりすることすらある。その理由は、腸内細菌叢がかく乱され、悪玉菌が急速に増殖して、敗血症性ショックを起こすから、と説明されている。
 また、草食獣については、これは鳥も含むが、とにかく飼い主を「だます」のが上手い。体調が悪くても、本当に死にそうにならない限りは元気そうに振舞うのが普通で、従って、何年飼っていても飼い主は動物の本当の体調を理解できない。「昨日までは元気だったのに~~」というのは、特にウサギの飼い主では定番のセリフ。ウサギで困るのは、治療されることが怖いあまり、ヘタすると治療中にショック死までいくケースもあるわけで、治療に大きな負荷をかけるのが難しい点と、治療すると一瞬体調が良くなって元気そうになる(これを当院では「ジャストナウの生き物」と言い慣わしているのだが)、治ったかと喜ぶと、またおかしくなってしまう、飼い主の振り回され度が大きい点。一方飼い主側は、どうやらウサギにおどおどと接している方が多く、体調不良の深刻度も理解できない、その結果、治療のせいで死んだとすら言われかねない部分がある。

 そんなこんなで、特にウサギの診療は一時期やめようかとすら思ってました。ウサギを診ない動物病院が多いのは、こういう特殊性があって、トラブルになりがち、という事があります。

 馬と付き合い始めるようになって、ようやくウサギが見えてきたわけですが。従って、ウサギの診療を続けていけるし、馬とウサギを比較検討することで、馬も見えてきた、というのがあります。どちらも、草食獣の消化システムとして「盲腸で消化」を採用しているから類似点があるんですね。牛等の偶蹄類や草食ガメ等は「胃」で消化するシステムを採用しています。どちらが効率的かというと、胃で消化する方が断然いい、らしい。
 ただ、盲腸で消化する仕組みがすべて悪いわけではなく、実は薬を経口投与できる、というメリットもある。胃で消化する草食獣では経口投与役はすべて胃で分解されてしまうか、胃の細菌叢に悪影響を与えるだけで、治療に限界が生じてしまうわけです。

 従って、馬は比較的治療できる幅がある。問題は、なのに馬がカンタンに死んでしまうという事。それだけではない、乗馬を初めてホトホトまいったのは、馬が自分の知っている動物の行動範疇にどうしても入ってこない事ばかりやっている点。すぐ暴れる、人に危害を加える(草食獣では本来ありえない)、すぐ病気する、すぐ怪我する、しかも、それが予測できない、一体どうなっているのか?獣医として、全く納得がいかなかった。ウサギだって、ここまでではないですから。

 その疑問が全て溶けたのが「ハミ」に目が向いた時でしたね。


 こんなことで問題が解決する、のに、日本では全く認知されていないのはなぜなのか?

 ということで、協会を立ち上げたわけです。

 このブログには以下のことについて書いていく予定です。

1)ハミがダメな理由、ハミ受けと呼ばれているものの正体等々
2)馬について、獣医師としての諸見解

 さらに、協会で推奨しております裸蹄管理について。これが日本ではどうもうまくいかないのですが、その理由と対策についても見解を述べる予定です。他にももろもろ、気がついた事を書くことになるかと。

 なお、自分が馬について色々投げ出さず考えていた、その理由は子供の頃に読んだ、岩波少年文庫の「黒馬物語」。この本が現在絶版であることに少なからずショックを受けまして、じゃあ、自分が翻訳しようかと。この本に描かれていることは、現在もなお、重要な示唆を含んでいます。ただ、図書館で借りて読んでみると、結構馬用語に間違いが多いので、それも正しつつ翻訳してみる予定です。時間はかかると思いますが。

 そんな感じでしょうか。よろしくお願いします。