ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

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厩舎について

2020年06月24日 | 馬の医療や管理について

 前回書いた「蹄病治療」ですが、これは当然ながら薬も市販されてません。獣医師が処方して、という処方薬になります。従って、この治療に挑戦してみたい方は、当院にご連絡ください。クラムボン動物病院 までお願い致します。治療予算は大体1万円/月、程度になるかと。当院では、治療を「やりっぱなし」には致しません。必ず継続して状況をお伺いして、変化に対応できるようにします。これは小動物臨床のテクニックなんですけど、馬の先生はなんか、そういう事をしない方が多そうで。なぜでしょうか?今はスカイプもあるし、カルテの共有も簡単にできるはずなんですけども。

 ところで、岐阜大学の馬術部厩舎が火事になってしまったそうで。馬は可哀そうなことをしました・・・・。こういう時って、どういう訳か、馬を厩舎から引き出すのは極めて難しいらしい。余程信頼している人でないと、怖がっちゃって馬房から出ようとしないらしいのだ。

 原因は漏電らしいとの事、おおかた扇風機じゃないかと思うんですが。厩舎はとにかく埃っぽくて不衛生になりやす。漏電しやすい条件が揃っているからね。。。

 という事で、厩舎。裸蹄管理してると、馬房が汚いとか不潔という不満がどんどん出てくる場合が多いんです。そのせいで裸蹄管理がうまくいかないのではないか、という。実際にはそんなことはないのだけど、別の意味で不潔・不衛生な環境ってどうにかならんのか、と考えている人は多いと思う。裸蹄管理していなくても、この時期、厩舎の臭いが凄まじくてウンザリ・ついでにサシバエ被害のすさまじさにげんなり、というケースが多いんじゃないでしょうか。

 最初は自分とこの大学の馬術部の臭さに唖然としたんですよ。府中の街中にあんな臭い場所がある、というの、信じられなかった。あまりに臭うので、これって馬の体臭なのかと勘違いしてたくらい。そんな筈ないですよね。「臭い」はその場所の衛生管理レベルを如実に物語ります。仮にも獣医学科があって、獣医科の学生も結構在籍してた馬術部がそれだもん、そういうとこにいた人達が、今JRAの偉いさんだったりします。大丈夫なのか??クサい中に動物を放置するというのは、一種の虐待だと思う。

 そしたら、たまげたことに、そこらの動物病院やらペットショップやら、動物関連の施設って、基本「臭い」ことに気がついて。つまり、動物病院ですら、肝心かなめの「衛生管理」がなってない、という事。やんなって、自分の病院については、絶対に臭わないように対策を立てまくりましたが。

 衛生管理は結局「掃除」なんです。これがしやすいかどうか。しかし、大動物の厩舎だと、なんかうまくいってない場合が多そうで。その辺について書いていきます。

 


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蹄病を理解するー15 蹄病の治療

2020年06月24日 | 裸蹄管理

 ここんとこ、更新をさぼっておりました。申し訳ございません 
 新型コロナウイスル感染症のおかげで、今まで当ブログでご紹介してきた消毒薬や除菌剤について、知識がある程度一般に普及してきているのは(間違いも多そうですが)ありがたいことだと思います。願わくば、大動物の厩舎管理についても、もっと衛生管理を考えっるべきではないと常々思っているのですが・・・・・。

 で、今ちょうど梅雨時で、蹄病が憎悪しやすい時期ではあります。水虫も今頃が一番症状がひどくなりやすい。気温・湿度の両方が白癬菌の増殖に最も適した状況だからです。ので、この時期あたりから、我々小動物の動物病院にも、人間の皮膚科にも、白癬菌や他の真菌に寄生されて脱毛しちゃったり、水虫の症状が出たり悪化したり、家族にうつっちゃったり、という患者さんがわらわらいらっしゃるようになるんですね。

 蹄病=白癬菌感染症から派生した疾患である、というのが、当ブログの主張であり、当方の獣医としての結論になります。今まで蹄の外部の殺菌や消毒等々について書いてきましたが、残念ながら、いくらこれをやってもいったん爪に寄生してしまった白癬菌を退治することは不可能です。なぜなら、爪の内部に薬剤を浸透させることが極めて難しい、というか実質ほぼ無理だからです。
 最近出てきた塗り薬はある程度浸透するようですが、これを馬の蹄に使ったらトンデモナイ金額になってしまいます。実際上不可能だと思う。

 ということで、現時点では、人間でも内服薬の投与が中心になっています。外用薬は補助的な役割になる。

 内服の抗真菌剤については、昔の薬は副作用がひどくて使えたもんじゃありませんでした。しかし、今普及している内服薬は安全性が極めて高く、あり得る副作用も解明されていて、投与を止めれば落ち着くものなので、怯えずに使うべきです。当院では、小鳥やウサギにも普通に使っていますが、問題が出たケースは0。ただし、抗真菌薬はかなりの長期間飲ませなくてはなりません。つまり、お金の問題が出てきます。

 お金の問題をどう解決するか?投与法を工夫するしかないでしょう。現在一番安めの薬はテルビナフィンというものです。しかし、安めとはいえ、安くはない。どうやって投与するか、自馬を実験台にしてあれこれ工夫してみました。人間では連日投与になりますが、隔日投与にし、投与量も少なくし、どうなるか見てみた。

 ありがたや、ちゃんと治ります。但し、時間はかかる。

 ということで、第一選択としては(というか、現時点ではほぼこれしかないと思う)テルビナフィンの隔日投与を最低1年継続する、というのが基本的な投与計画になります。

 ちなみに、抗真菌薬は、今は動物用の内服薬も出ています。テルビナフィンではありませんが。イトラコナゾールという薬なんですが、犬用内服薬として承認も取っています。動物薬なんだから、本当はこちらを使えればいいんですが・・・・・。しかし、高すぎる。
 イトラコナゾールを服用する場合には、人間と同様に、短期(1週間程度)大量投与して休薬(3週間程度)、というパルス療法を使うべきでしょう。しかし、大量投与というのが難しい。馬にバレちゃって、「飲まないよ~~」とやられちゃうとまずいわけです。それも、治療法として問題がありそうだな、と感じる理由になっています。患者さんに拒否られちゃいますと、治療が成り立たなくなってしまう。

 で、内服治療の他に、新たな白癬菌感染を防ぐために蹄の洗浄消毒をこまめに行う・特に削蹄直後の消毒洗浄は徹底して行うこと、装蹄はしない、等々を行う必要も出てきます。

 あと、大きな問題として残るのが「環境(特に床面)にいる白癬菌をどうするの?」というやつ。これも困るんですが。というのは、今やおそらく、日本の馬99%以上が爪白癬に罹患していること間違いない状況なので。そうなると、馬がいるとこそこら中に白癬菌がスタンプされてる可能性があるじゃないですか、特に馬房の床。どうしたものか?

 これについては、そろそろ大発生し始めるサシバエ等々害虫防除の件も絡んできますので、次回。