ハミなし頭絡で楽しい馬生活!日本ビットレスブライドル協会

テーマ別に連載形式になっています。テーマ別に最初の記事からお読みください。

馬は治療しにくいのか?-1

2019年09月08日 | 馬の医療や管理について

 とにかく馬は病気する、ケガする、で、すぐ死んじゃう生き物、という事になっています。今まであちこちの乗馬クラブで、優秀な馬が疝痛起こして、たった一晩でコロっと死ぬのを見ています。従って、馬の飼主は日々オドオドして暮らすことになってしまう。いつ疝痛を起こすか、いつ怪我するか、いつ骨折しちゃうか?不安でならない。いったんこうなったらもう、助けることが難しい、とされているから。こんなんで馬を飼うのが「楽しい」となるでしょうか?こんな動物は馬くらい。異常です、はっきり言って。異常は正さなくてはなりません。

 そんなもんだ、という諦めはどこから来てるんでしょうか?馬は大動物だから?治療が難しいから?そんなことありゃあせんですよ、小動物獣医から言わせると。

 その前に、馬という生き物と、他の生き物の比較をしてみます。哺乳類は、その筋肉だの骨格だのという方面の解剖はほぼ同じです。馬は指が一本じゃないか、まあそうですけど、それは牛みたいな偶蹄類だってほぼ同じ。特別なものではない。哺乳類でバラエティがあるのは、消化器系とメスの生殖器系といえます。生殖器系は置いておいて、消化器系について。まず、犬猫人のような、雑食~肉食獣の消化器系の図がこれ。

あのー、これ、かなり大雑把な絵ですけども、基本的には小腸で消化吸収を行って大腸で糞便にまとめて排泄、と。盲腸は、我々にとっては、おまけ程度になってしまってますね。

で、草食獣の場合。まず、ウサギ。

草食獣と雑食~肉食獣とは、全然消化器構造が違う。別種と考えていいくらいです。ウサギ(ハムスターなんかも同じですが)は、巨大な盲腸に複雑な腸内細菌叢を抱えています。この細菌群が、肉食獣が全く消化できないセルロースを分解して消化できる形に変えている。で、ウサギ等のげっ歯類は、消化できるようになった糞を、夜中にこそこそ食べてるんですよね。「食糞」という奴ですが、それで完全に消化しきってぽろぽろウンチに化ける。盲腸内細菌叢がかく乱される命取り、というのは、盲腸内が発酵モードから腐敗モードに変わってしまうのが原因です。

 盲腸内細菌叢をかく乱するものは色々ありまして、広域殺菌型の抗生剤はもちろん、炭水化物全般・糖質もまずい。ウサギ用クッキーなんか、絶対にあげちゃダメなんですよ。これは、草食獣全般に言えることです。すなわち、濃厚飼料は元来、草食獣に全く向いていない飼料だということ。

では、馬は。

馬の場合、盲腸もデカイんですが、それに続く結腸も長くて大きい。ここで、本来なら小腸が行うべき消化吸収を無理に行っているフシがあるんです。馬は食糞なんかしませんけど、ちゃんとでっかくなりますから。ただ、消化効率は悪い。ので、糞中に未消化の草の線維が混ざるわけ。

じゃあ、草食獣中げっ歯類に次いで繁栄している偶蹄類代表の牛はどうか。

胃袋が1~4胃に区分けされていて、しかも反芻といって、牛たちはいったん食べた草を胃から口まで戻してもぐもぐやってます。そうやって、消化しづらいセルロースをとことん分解し、消化してしまう。胃の中の微生物叢もハンパなく複雑です。ので、牛の糞便は形をなさない、泥状になるんです。

こういう胃袋の構造を複胃といいますが、実は、爬虫類のイグアナも似たような胃の構造を持っていて、固いサボテンなんかもちゃんと消化できるようになっています。

 犬猫人間は排便回数が少ないから、排便のしつけもなんとかできますけど、草食獣の場合、しょっちゅうぽろぽろ排便するので、排便のしつけがなかなかうまくいかない。というか、そんなことまでしつけたら、草食獣はノイローゼになるんじゃないかしらね。個人的に、「ここでしかしたくないもんで」というウサギなんかはいますけども。


国際ハミなし記念日

2019年09月08日 | ハミなし頭絡

というのができたそうなんです。ハミなし頭絡の国際団体が、そう決めたから~~、ということで。

9月7日

だそうですので、来年から、なんかイベントを考えようと思います。

 

 ハミをやめると、馬の表情が全然変わっちゃうから~~。本当に楽しくなる。

ということで、管理人動画。撮影した日はとにかく暑くて、ものの20分程度しか練習できなかったんですが。テキトーな3課目です。できれば、鐙抜きでこの程度は回りたいものです。ああ、この動画では、「ビタッと歩様を変える」というのを全然要求しておりません。理由は、この人、只今蹄を治療中なのと、背中もちょっと痛いよ、と言ってますので、「詰める」をやめています。詰める動作って、結構体にきますから~~。
 


馬の獣医療がピント外れなわけ

2019年09月04日 | 馬の医療や管理について

 今、「馬の科学」という雑誌が手元にありまして。ウマ科学会の月刊誌の一つ、発行はJRA。ウマ科学会のメンバーとしては、一応毎回目は通してみるんですけど・・・・・。臨床に全く役立たない情報ばかりなんですよ・・・。

 小動物臨床を始めたばかりの頃って、今と違って薬がひどくて、例えば心疾患はなかなか治療がうまくいかなくて。で、例えば「循環器疾患100症例」みたいな本があったりして。その名の通り、100症例書かれている。症状・問診・検査・診断・治療・予後の流れを追いかけることができるわけ。そういうのがかなり勉強になりましたけども。

 そういうのを期待して、ウマ科学会に入ってみたんですけど、なんか違うんですよね。。。。

 「馬の科学」第56巻、おや、見直してみると、とんでもない紙が挟まってるじゃないですか。えーと、「廃刊」ですか・・・・。そうか、じゃ、ますます情報を得づらくなりますね・・・・。

 ともあれ、こういう雑誌を読むと、当たり前だが、馬の事ばかり書いてある。だから、いつまでたっても馬を理解できないんでしょうね。

 小動物臨床というのはなかなかな仕事です。子供の頃、動物園の獣医さんになりたいなーと思っていた。それをかなえたクラスメートもいる。彼女は、かのシャンシャンちゃんが生まれてからしばらくの間、よくインタビューに出てまして、顔色を窺って心配してたもんです。寝てなさそうだあ、とか思って。一方自分はどうかというと、やっぱり多種多様な動物を診察することになってしまって、それなりに願いがかなったのかも、しれない。これはですね、ヘンな生き物を買いたがる、で、飼いたがる日本人が悪い。元気な時はいいですけど、いざ病気になったときにおたおたする。で、頼られてしまうんですな。そういう要望を突っぱねて犬猫獣医でもやってはいけます。大学では爬虫類なんかこれっぽっちも習わなかったし、鳥といえば、鶏しか習わなかったし。鶏の場合は、病気=殺処分ですから、基本。でもね、ご要望がある以上、やっぱり勉強して、治療して、獣医が投げ出したら、その動物はどうなる、という自覚を持たざるを得なかったから。

 で、そんなことをやっていると、世の中色んな動物がいるけれども、治療の方針を決めるにあたって重要なのは、哺乳類・鳥類・爬虫類という分類もだけど、もっと重要なのが「食性」で、草食か、雑食か、肉食か、で治療指針が全然変わっちゃうんですよ。

 草食獣の典型がウサギ。哺乳類中一番厄介じゃないかと思っている。実に診察しにくい(診察中にオダブツ、になりかねない面がある)だけじゃなくて、治療も難しいんだが、一番困るのは、草食獣には安全に使える抗生物質が本当に少ない点。ペニシリンをはじめとしたβラクタム系・セフェム系という、普通第一選択で使う抗生剤をウサギに投与すると、ウサギって死んじゃうんです。これは、抗生剤が毒になる、からではない。この手の広域殺菌性抗生剤は、消化器内の腸内細菌叢のバランスを崩して、悪玉菌を増やしてしまう、その悪玉菌にウサギが殺されちゃうんですね。

 この件は、ウサギだけではなく、ハムスターのようなげっ歯類や草食性のカメやイグアナといった爬虫類もほぼ同様と考えられている。小動物の獣医で、草食獣を診ている先生方の間では、草食獣にβラクタム系・セフェム系は禁忌、というのは常識。

 なのに、なぜ、馬にセフェム系のセファロチンだの、βラクタムのマイシリンなんか、使うんだ???

 ウサギと馬の消化器構造はほぼ同じ、食性もほぼ同じ、だから、元来βラクタム系・セフェム系は絶対にダメだ。大体、セファロチンなんか、大昔のしょうもない抗生剤、効くわけない。それどころか、いつ製造中止になるかわからんのに。マイシリン使ってペニシリンショックを起こす馬は多いです。そんな危険を冒してまで使う意味がある薬じゃありません。

 ところが「馬の科学」56巻を読むと、「βラクタム系の抗生物質の検討」なんて論文が出てる。そんな論文を出しちゃう、審査員も、こういう常識話を知らないのか~~~。それじゃあ、廃刊でもしょうがないですよ。

 つまりまあ、馬を他の哺乳類(人も含む)と比較検討して、治療を考える、というようなことを全くやってないから、いつまでたっても空回り、なんでしょう。で、大動物だから特別、だの、馬は特殊だから、だの、何と比べているんだ???比べてなんかないじゃないですか。


獣医はなにをやっているのか??

2019年09月03日 | 馬の医療や管理について

裸蹄管理の話からちょっと脱線しますが。

 馬の獣医ってのは何をやってるんでしょうかねえ?小動物臨床獣医師の率直な疑問ですけど。自分が治療した馬は、みんなそこそこ治療の成果が上がるのに、馬の獣医が関わると全然よくならないどころか死んじまうってどういうことなんすかねえ???うんざりだよ。ヤブ医者には。

 馬の臨床本のプロ向けの本、日本語だと

くらいでしょうか。一応馬が起こしそうな疾患が網羅されてるけれど、とにかく治療法がお粗末。書かれてない、といっても過言ではない。ウソもいっぱいあるなあ。蟻道が簡単に治りますって、簡単に治ったケースなんか一度も見たことないよ。著者の先生は、本当に現場でじっくり診察してるんかいな???

  そう、問題はそれだ。馬の先生方は、1頭の患者を長期間継続して診察したことってないんじゃない?

 いや、それどころか、カルテだって作ってるフシがない。そんなんで、病気の何たるか、が理解できるはずがない、と思いますけどねえ。

 自馬をもって、否応なく疾患治療と向き合わざるを得なくなった。だって、馬の獣医があまりにも当てにならない、くせして偉そうな料金を取るから。往診代だけで3万円も取りくさる。その基準が何なのか知りませんけど、そんなやらずぼったくりの料金を取られて、ホイホイ獣医を呼んで相談する、気になる飼主なんかいませんよ。自分だってごめんだ。だから、いよいよもう、どうにもならなくなってから獣医を呼ぶ、で、あーあ、死んじゃった、あるいは、もうこりゃ安楽死ですねえ、でオシマイ。これは診療じゃないですよ。

 獣医が、飼主も馬も守る、という仕事上のモラルを逸脱してるんだ。としか、思えない。ヤブだしさあ。もっと言うと、ヤブぶりを認めようとしない!!ヤブだって自覚しろっつの。

 先日、ゾエティスという会社が出す新薬の学術講演会に行った。小動物臨床は凄いことになっている。とうとう、モノクロナール抗体が治療薬として認可されたのだ。これは、人医療域でも最先端の薬剤で、従来の薬剤定義から完全に外れたものになるので、勉強しなくちゃならない。この20年くらいの進歩進展は目覚ましいので、大学で習ったことなんか、もうとっくに使えなくなってるんですよ。常に知識を更新していかないとヤブ獣医になり下がる危機感が、最近は強い。

 でも、大動物は違うようだね。未だに昭和ってわけ?? 


なぜ、装蹄をやめられないのか?-1

2019年09月02日 | 裸蹄管理

 

 はっきり言って、装蹄にいい事なんか何にもない、と思う、それをまとめると。

なのにずるずる装蹄が続いている、というか、しなくちゃならない、という刷り込みになっているのには色々理由があります。

1.結局素人がこの世界を牛耳っていて、しかも、それに「昔からこうだから」という裏付けがある。エビデンスはないにもかかわらず。

 これは、今の馬ビジネス全般に言えることですが、牛耳っているのは競馬上がりの人間・馬術部上がりの人間・馬を長く扱ってきました、という人間でありまして、動物を科学的に論理的にみることができる人間が介入できていないんです。要するに、獣医師が何の役にも立ってない。情けない話よのう・・・・・。

 まあ、信用されないのは当然で、獣医は診断はします。跛行がどうした、その部位はここで、とか。しかーし、その原因、さらに言うと治療、全くもって役立たず。せいぜい「休馬」程度の指示しか出せない。こんなんで信頼されるわけないですよ。小動物臨床医である当方、今まで、自馬を馬の獣医が診てまともになんとかなった試しなし。薬もめちゃくちゃ・診断もめちゃくちゃ・指導もめちゃくちゃ、一体こいつら何なんだよ~~~??なんですわ。

 馬については、どの薬をどうやって使うのか、というガイドラインすらまともに確立されていない。大動物用の薬はありますけどね、馬についてどんな薬をどのように使うのか、全く見えていない。未開の原野ってやつでね。徒手空拳で病気と闘えるかっつの。

 こんなことを書くと、馬の先生から激反論が来るかもしれないけどさ、確かに、馬の獣医師が書いているブログ等も読みました。手術手術の日々、ごくろーさんでございます。そんな手術をしなくて済むように、どうすればいいのか、とか、なぜ、こんなに手術件数が多くなってしまうのか、という考察が全くない。バカじゃない??手術なんぞしなくて済むように指導するのが、本来の獣医の仕事なんじゃあないの???しかもさ、手術等外科処置したら、絶対に必要な抗生剤について、未だにセファロチン?何考えてるんだ????

 どタマに来て、自分で考えました。で治療しました。安全で確実に有効な合成抗菌剤があります。教えませんよ、獣医の皆さん。知りたきゃ、ウマ科学会の総会論文を当たってくれ。聞いてくださってもいいですけど、メールなら教えませーん。

 長くなっちゃったので、続く。