じんべえ時悠帖Ⅱ

森村誠一の遺言

 この7月に逝去した森村誠一の晩年の著作を2冊続けて読んだ。

いずれも小説ではない。この2冊の執筆の間、森村は「認知症性

鬱病」を患う。よって、この2冊は極めて対照的な内容である。

 自叙伝である「遠い昨日、近い昔」はギラギラとした作家論が

中心となっている。少年時代、父親の機転で辛くも生き延びた終戦

の日の熊谷大空襲の体験から、終盤では反戦論を繰り広げる。

 タイトルの「遠い昨日、近い昔」は、

    遠い戦争を昨日のことのように忘れず

    近い不条理を昔のことのように葬れ

の意である。特に安倍政権下で顕著になった軍事国家への動き

への警鐘を鳴らしている。

 これは、理不尽な時代に戦場へと臨む前、恋人との山行中に

詩人、加藤泰一が詠んだ「洋燈(ランプ)」の一節、

    過ギシ日ハ遠ク昔ノヨウダト、オ前ハ云ツタガ、

    過ギシ日ハ近ク昨日ノヨウダト、僕ハ黙ツテイタ

を踏まえている。

 一方、患った後の「老いる意味」は、まさに老後の生き方のハウ

ツー本と言える。森村はまさにこの本のように淡々と老後を過ごし、

そして九十歳と半年で逝ったのである。

 

台風一過、今朝の二十五夜の月と日の出

 


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コメント一覧

jinbei1947
ワイコマ様
白内障の手術で眼の中にレンズを入れたので、裸眼でも本や新聞を読むのが
グッと楽になりました。
jinbei1947
えめらるど様
森村誠一が図書館に自分の本がほとんどないことを嘆いたら、多数揃えても
すぐ借り出されてしまうとのこと。
印税との絡みで複雑な心境だったと書いています。
活字離れの昨今、図書館の充実は出版界や作家にとって問題になっている
ようです。
ykoma1949
私も、文庫は最近遠ざかって、大活字本のみを読ませて頂いている
その大活字本も、今の図書館の蔵書はこの先一生かけても・・
読み切れません、新刊物は・・やむなく拡大鏡と共に読ませて頂くが
活字の小さい物・・活字の読みにくい物は・・手に取らないことに
しています。
森村誠一さんは その昔推理小説で・・松本清張や黒岩十五と共に
読んだものです・・今は全部忘れて居ます。
えめ
今朝は動いた。早朝お祭りの打ち合わせに20キロ離れた集落へ飛び、帰って来て図書館へ行って、森村誠一の件の二冊を借りて来た。[遠い昨日、近い昔]は、8年前に出版されて居るのに新品同様、残る一冊も真新しいところをみると、余程変人以外誰も読む人が居なかったものとみえる。ここまでの行動は私にとって何の変哲も無い事だが、さてこの先、字を読むのはニガテである。
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