フロリダ州知事選、民主党予備選で「国民皆保険」を訴える左派の黒人が勝利、中間選挙でトランプ派の候補と激突
Progressive Values Give Voters Something to ‘Vote For’
州都タラハシーの市長から初の黒人知事候補に選ばれたギレム
<対立候補は、子供と国境の壁づくりごっこをする動画を選挙PRに使うほどのトランプ崇拝者。両極が相まみえる>
全米最大の激戦州フロリダ州の知事選に向けた民主党予備選で8月28日、大方の予想を裏切って左派の黒人候補が
勝利を収めた。バーニー・サンダース上院議員が推薦する、州都タラハシーのアンドルー・ギラム市長だ。
本命と見られていた民主党穏健派のグウェン・グレアム元下院議員にギラムが勝てたのは、「アウトサイダー」の
立ち位置を前面に出した選挙戦略のおかげだ。場合によっては党の方針に逆らうことも厭わないというギラムは、
ニューヨーカー誌にこう語っている。「民主党候補は生い立ちも見た目もこうだ、という既成概念があるが、
私はそれにあてはまらない。左派と言われるが、それも違う」
同日に実施された共和党の予備選では、ドナルド・トランプ米大統領に忠誠を誓い、既成政治にノーを叫ぶ
ロン・デサンティスが、同じく共和党中道派のベテラン政治家アダム・パットナム元下院議員を敗って、共和党の
フロリダ州知事候補に選出された。
分かりやすい対立軸
ギラムとデサンティスの一騎打ちは、中間選挙に向けて全米で進む「有権者の二極化」の現れだ。民主党反主流の
サンダース派と共和党反主流のトランプ派。左右2つの極端な勢力が、既成政治に背を向けた有権者の支持を
つかんで勢いを増している。
ギラムはサンダースやニューヨーク州知事選の民主党候補アレクサンドリア・オカシオ・コルテスらと共に、
不法移民を取り締まる移民関税執行局(ICE)の廃絶を訴え、サンダースが2016年の大統領選予備戦で提案した
「国民皆保険」を目指すなど、社会主義的な政策を掲げる。
一方、トランプ・チャイルドとも言うべきデサンティスは、環境規制や自由貿易を目の敵にし、不法・合法を問わず
移民の締め出しを叫んでいる。
ギラムは勝利演説でデサンティスとの対立軸を明らかにした。「われわれが耐えてきた暗黒時代は既成政治が
生みだしたもので、嘲笑と分断はホワイトハウスが生みだしたものだ。ここフロリダ州からわれわれは発信する。
真にアメリカ的な価値とは何かを全米の人々に思い出させる」
CNNのインタビューでも、「われわれは自分たちの価値観を前面に打ちだし、有権者を奮い立たせ、何かに対する
反対票ではなく、われわれのビジョンに対する賛成票を獲得するつもりだ」と語った。
ギラムは数週間前の世論調査では支持率で4位だったダークホースで、フロリダ州知事選の民主党候補に黒人が
選出されたのは初めて。今回の中間選挙では他にも、南部ジョージア州のステイシー・エイブラムズ、
東部メリーランド州のベン・ジーラウスと、州知事選の民主党予備選で黒人候補が続々と勝利している。
トランプの嫌みツイート
サンダースはギラムの勝利について、「ただ選挙に勝つために頑張っただけでなく、フロリダ州とわれわれの国が
どこに向かうべきか、はっきりとビジョンを示した」ことが有権者に評価されたと、声明を出した。
一方、トランプは8月29日朝こうツイートした。「デサンティスは共和党予備選で楽勝だったばかりか、11月の本選に
願ったりかなったりの対抗馬を得た......タラハシーを犯罪の巣窟にした社会主義者のダメ市長だ。フロリダ州に
そんなものは必要ない!」
テレビ出演したギラムは、フロリダ州の有権者はトランプの言うことなど相手にしない、問題は政策の良し悪しだ、
と応酬した。「トランプがいかに大統領にふさわしくないかを語ったところで、州民の生活向上には少しも役立たない」
かたやデサンティスは、わが子におもちゃのブロックで国境の「壁づくり」を教える動画を選挙CMに使っているほどの
トランプ派。トランプの功績として最高裁の判事に保守派を指名したこと、イラン核合意から離脱したことなどを
挙げてたたえた。「わずか1年半で大きな成果だ。この調子で続くよう盛り立てていこう」