パスポートのデザインが変わると聞いたので、調べたら今年1月に外務省が発表してました。素敵ですね。
私も次回更新時はこのパスポートになります。楽しみ。
次期パスポート(2020)査証欄のデザインが「葛飾北斎 富嶽三十六景」になります。
平成31年1月25日 外務省
次期旅券Q&A
Q1 なぜ旅券のデザインを変えるの?
A 旅券は,新たな偽変造対策を採り入れるために定期的にセキュリティの仕様を更新しており,今回のデザイン変更もセキュリティ更新にあわせたものです。
Q2 なぜ葛飾北斎の「冨嶽三十六景」が選ばれたの?
A 「冨嶽三十六景」は世界的にも広く知られ,世界遺産でもある富士山をメインモチーフとし,まさに日本を代表する浮世絵のひとつであることから採用しました。
Q3 どのようにしてデザインの決定に至ったの?
A 基本デザインの選定においては,事前に有識者5名による次期旅券冊子デザイン選定準備会合(領事局長主催)を開催し,複数の候補につきご議論頂いた内容を踏まえて最終的に外務大臣が決定しました。
Q4 「冨嶽三十六景」の他にどのような候補があったの?
A 正月やひな祭りなど日本人が持っている原風景にも似た日本の情景や,空を飛ぶ旅を連想させる鶴,桜などの日本の季節を代表する四季の植物をモチーフとした様々な候補がありました。
Q5 「冨嶽三十六景」のうちどの作品が使用されることになったの?
A 10年旅券は表紙を除き54ページあり,裏表紙,人定事項ページ,ICページ等を除く査証欄等の48ページに「冨嶽三十六景」の図柄を見開き2ページで一作品使用することとし,24作品を選びました(5年旅券では32ページに16作品)。
世界で2番目に有名な絵――葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」
2019年2月26日 WEDGEInfinity 牧野健太郎(読み解き) 近藤俊子(構成/文)
世界に知られる日本の絵画といえば、葛飾北斎さんの「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」。
この絵は2020年3月をめどに発行される日本のパスポートの査証欄のデザインに使われます。
今も昔も多くの逸話が秘められた作品です。
葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」
「百年人生」も見ていた北斎さん
世界に名高い葛飾北斎さんの「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」は天保2年(1831)頃に刊行(①)。
北斎さんが71歳頃に描いた46枚シリーズの中の1枚です。
①
そのうちこの絵を含む24枚は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに先立って、
2020年3月をめどに日本のパスポートの査証欄に用いられるそうです。
日本の伝統文化をアピールし、偽造防止にも役立てるという粋なはからい、更新が楽しみです。
そういえば6年前、パリのユネスコ本部で、ユネスコ前事務局長イリナ・ボコバさんが言ったのは、
「この『GREAT WAVE』(英語での通称)は世界中の大きな美術館が所蔵していて、私も大好きです。
世界で2番目に有名な絵ですね」
「では、1番有名な絵は何ですか」と聞くと、
「そりゃ~、レオナルド・ダ・ヴィンチの『モナリザ』よ」と。さすが北斎さん、ライバルも違います。
さて、「神奈川沖」は「神奈川県」の沖合ではなく、「神奈川宿」の沖です。東海道の日本橋を
旅立って、品川宿、川崎宿、そして次がこの神奈川宿。現在の横浜駅や横浜みなとみらい21辺りの沖。
東京湾に立った大きな波と、その波越しに見た雪をかぶった富士山(②)を、現在の木更津沖から
描いた作品です。
②
和船が描かれています。「押送(おしおく)り船(ぶね)」という8人漕ぎの超高速運搬船(③④)。
南風が吹いて高波が立つと、市場に品物が運ばれて来ません。その品薄のお江戸の市場をねらって、
房総半島などの生鮮食料品を積み、船の舳先を大きな波にぶつけて、頑張っていい仕事をしています。
しかも3艘も!
③(左)、④(右)
⑤
⑥
水を描かせても天下一の北斎さん、「点々」で飛沫を描いた点描のはしりです。さらに世界を
魅了したのは砕け散る波の描写(⑤)、人間の目では追えない砕ける波を、ハイスピードカメラで
切り取ったように捉えた瞬間です。
ジャパン・ブルー、北斎ブルーと呼ばれる日本の青色、「ベロ藍」は、実は1704年頃にベルリンで
作られた「ベルリン藍」が訛ってベロ藍になったもの。北斎さんはこのベロ藍と植物由来の本藍とで
濃淡を使い分け(⑥)、波が動いているように描き、その輪郭線まで藍色です。「冨嶽三十六景」には
ベロ藍と本藍が絶妙に用いられています。
北斎さんは75歳頃に出した版本絵本『冨嶽百景』の添え書きにこう記しています。
「七十までに描いた絵は取るに足りず、七十三にしてやっと思いのまま描け、八十にして
ますます進み、九十にして奥義を極め、百にしてまさに神妙たらん。あなたも長生きして私の言葉が
嘘でないことを確認してくれ」と。
21世紀の「百年人生」さえ見ていた、北斎ワールドです。
【牧野健太郎】ボストン美術館と共同制作した浮世絵デジタル化プロジェクト(特別協賛/第一興商)の日本側責任者。公益社団法人日本ユネスコ協会連盟評議委員・NHKプロモーション プロデューサー、東横イン 文化担当役員。浅草「アミューズミュージアム」にてお江戸にタイムスリップするような「浮世絵ナイト」が好評。
【近藤俊子】編集者。元婦人画報社にて男性ファッション誌『メンズクラブ』、女性誌『婦人画報』の編集に携わる。現在は、雑誌、単行本、PRリリースなどにおいて、主にライフスタイル、カルチャーの分野に関わる。
●ボストン美術館蔵「スポルディング・浮世絵版画コレクション」について
米国の大富豪スポルディング兄弟は、1921年にボストン美術館に約6,500点の浮世絵コレクションを寄贈した。「脆弱で繊細な色彩」を守るため、「一般公開をしない」という条件の下、約1世紀もの間、展示はもちろん、ほとんど人目に触れることも、美術館外に出ることもなく保存。色調の鮮やかさが今も保たれ、「浮世絵の正倉院」ともいわれている。