松山英樹の米男子ゴルフツアー4勝はどれだけ凄いことか
2017年2月14日 DIAMOND ONLINE
優勝賞金は日本の3~5倍
観客数は4日間で日本の2年分
先週は松山英樹が日本人最多となるPGA(米国男子ゴルフ)ツアー通算4勝目を挙げたことが大きな話題になった。
米アリゾナ州スコッツデールで行われたフェニックス・オープン。4日間で267、通算17アンダーでウェブ・シンプソン(アメリカ)と並んだ松山は、4ホールに及ぶ息詰まる戦いを制した。
松山はこの大会を連覇したわけだが、それがいかに偉業なのかを中継を見て実感した。まず注目度の高さ。観戦したギャラリーはPGAツアー史上最多の65万5434人を数えた。日本のプロゴルフツアーの観客数は年間で33万人ほど。たった4日間でその倍近い人が集まったわけだ。
スコッツデールはメキシコとの国境に近く、気候が温暖。避寒を兼ねてやって来る人が多いのだろう。また、周囲を観客席(2万人収容)が囲む16番の名物ホールがあり、一度はここで観戦したいと考える人も多いに違いない。それにしてもすごい数だ。
そして松山が手にした優勝賞金は120万6000ドル(約1億3700万円)。日本のプロゴルフツアーの最高優勝賞金は4000万円(日本オープンなど5試合)で、多くは2~3000万円だから、松山は日本での優勝3~5回分を1試合で稼いでしまったわけだ。
もっともフェニックス・オープンが特別優勝賞金が高い大会というわけではない。5月に行われるプレイヤーズ選手権の優勝賞金189万ドルが最高で、メジャー大会のマスターズ・トーナメント、全米オープン、全米プロが180万ドル(約2億円)。他のPGAツアーの大会も大半が100万ドルを超える優勝賞金になっている。
この高額の賞金を手にするために世界中から実力のあるゴルファーが集まり、その卓越した技術を見るために多くの人が会場に足を運ぶ、あるいはテレビ中継に見入るのがPGAツアーなのだ(高額賞金はこの放映権料で支えられている)。
松山はこのPGAツアーで4度の優勝を数え、メジャー大会も含めて、これからその数を増やしていこうとしているが、ツアーに出場するだけでも至難なのである。
登竜門はハンデ1.4以下の
9000人がひしめく狭き門
どれだけ大変なのか。まず競争率。広く優秀なゴルファーを集めるために門戸を開けるという意味で「オープン」と名称がつく大会がある。すでに実績を持つシード選手とは別に、出場のための予選を行いアマチュアを含めた多くの選手に出場チャンスを与えるわけだ。メジャー大会の全米オープンもそのひとつで、アメリカで行われる1次予選には9000人を超えるゴルファーがエントリーするといわれる。参加資格はハンデキャップ1.4以下でいずれも高い技術を持つ選手たち。彼らが試合をし、500人あまりが2次予選に進む。2次予選は全米14カ所の他、日本と英国でも行われ、そこで勝ち抜いた者、86人が出場権を得る。
この予選に挑戦するのは、アマチュアであってもいずれはプロとしてPGAツアーを戦いたいと思っている選手だろう。そんな強者が1万人近くいて、厳しいサバイバルの戦いを経て、やっと出られるのが全米オープンなのだ。
PGAツアーの出場資格は複雑過ぎて、ここでは説明しきれないが、そのなかに4大メジャー大会の今シーズンと直近5シーズンの優勝者、直近5シーズンの賞金ランク1位、PGAツアー大会の今シーズンと直近2シーズンの優勝者といった選手たちが含まれる。PGAツアーのシード権を与えられる選手は175人だが、すでに輝かしい実績を持つ実力者でその多くが埋まっているわけだ。
その中に割り込んでいくには、下部のツアーであるウェブ・ドットコムツアーに参戦し、年間獲得賞金を積み上げていく必要がある。その賞金ランク上位25位までがPGAツアーに昇格。そこに入れなかった選手はPGAツアーの賞金ランク下位の選手との入れ替え戦に望みを託す。PGAツアーに出場すること自体、厳しい関門を突破しなければならず、並大抵のことではないのだ。
なお、松山の場合は、東北福祉大学在学中の2010年、優勝者には翌年のマスターズ・トーナメントの出場権が与えられるアジア・パシフィック・アマチュアゴルフ選手権で優勝。そのマスターズではベストアマチュアに輝く成績を残した。プロ転向後の2013年には全米オープンで10位タイ、全英オープンで6位タイ。そうした実績が評価されPGAツアーに参戦。2014年にツアー初優勝し(メモリアル・トーナメント)、シード権を確保した。数少ないチャンスで実力を示し現在があるのだ。
PGAツアーのシード権を持つ175人は世界から選り抜かれたトップゴルファーといえる。その中でプレーするだけでもすごいのに、松山は優勝を重ね、日本人には夢のまた夢と思われていたメジャー制覇も手が届くところにきた。
マスターズは4月9日、全米オープンは6月15日、全英オープンは7月20日、全米プロは8月10日に開幕する。今年ほどゴルフのメジャー大会が楽しみな年はない。
松山プロはまだ今年25歳。これからの活躍が本当に楽しみです。
PGAツアーのライブは早朝にかけてか、早朝から始まるかで起きるのは辛いものがありますが、頑張って見ている。
日本の男子プロツアーと違い選手が華麗。ミラクルなプレイを見られるチャンスも多いです。
その中で松山の地味な佇まいと海外選手に引けを取らないプレイとのギャップがまたいいですよ。