台湾、ソロモン「断交」を警戒。呉外交部長が中国の軍港計画指摘
【香港】台湾の呉●(=刊の干を金に)燮(ごしょうしょう)外交部長(外相に相当)は14日、
産経新聞の電話インタビューに応じ、南太平洋のソロモン諸島が台湾との外交関係の解消を検討して
いることに強い警戒感を示した。呉氏は中国がソロモンで軍港の建設を目指していると指摘し、同国が
台湾と「断交」し中国と国交を結べば、日米豪のインド太平洋戦略は「大きな衝撃を受ける」と警鐘を
鳴らした。
迎賓館で記者会見するソロモン諸島のマネレ外相(左)と台湾の呉●(=刊の干を金に)燮外交部長=9日、台北市内
■「完全に役立たず」
人口約60万人のソロモンは、台湾がアジア太平洋で外交関係を持つ6カ国のうち最大で、台湾では
「断交ドミノ」を生む懸念も強い。台湾の報道によると、同国の内閣は13日、中国との国交樹立を
促す超党派グループの報告書について議論したが結論が出ず、17日に再検討するという。
ソガバレ首相はこれを含む4件の報告書を参考に最終的な結論を出す方針で、議会外交委員会の報告書は
10月末に提出される。
呉氏は、超党派グループが報告書で訪台調査の結果、台湾にはソロモンを援助する意思も能力もないと
記述したことに対し「訪台の事実はなく虚偽で、結論ありき」と反論。世論調査によるとソロモン市民の
多数は台湾との関係維持を望んでおり、中国との国交を主張するのは「個人的な利益を重視する政界の
一部」だと述べた。
一方、豪州紙オーストラリアン(電子版)は11日、ソガバレ氏が豪州の研究者に「台湾は完全に
役立たずだ」と述べたと報道。同氏が中国の建国記念日(10月1日)前に台湾と「断交」する方針に
傾いているとの見方がある。同氏が親中派議員に、今月下旬の国連総会前の中国との国交樹立を伝えた
との情報もある。
呉氏は、中国がソロモンの西部州ノロ港の拡張に関心を示しており、「完成後は海軍基地として
利用できる」と指摘。中国の狙いは、インド太平洋や中南米で進める戦略拠点の確保だと分析した。
その上で、独裁国家である中国の勢力拡張は、台湾や日米豪などが目指す「自由で開かれた太平洋の
ビジョンに大きな挫折をもたらす」と述べた。
■5億ドル提供の情報
台湾はソロモンのマネレ外相を8~12日に台湾に招き関係継続を模索している。ただ、台湾の今年の
援助額が850万ドル(約9億2000万円)なのに対し、中国は断交の見返りに、期間は不明だが
5億ドル(約540億円)の提供を申し出たとの情報もある。
呉氏はこの情報について、「中国は過去にも台湾の国交国を奪うため同様の約束をしたが、実行には
大きな差がある」と主張。サントメ・プリンシペに6億ドルの港湾、ブルキナファソに10億ドルの
高速道路・鉄道建設を約束した例を挙げ「着工すらされていない」と断じた。また、中国の援助国が
「債務のわな」に陥っている実態も列挙した。
台湾との「断交」は、地域での中国の影響力拡大を阻止したい米国やオーストラリアも警戒している。
豪州は6月にモリソン首相が10年間で2億5000万豪ドル(約185億円)の支援を表明。
米国は今月8日、パプアニューギニアに駐在するソロモン大使がソガバレ氏の元に出向いて「現状維持」
を働きかけた。ペンス副大統領も国連総会に合わせて同氏と会談するという。呉氏は米国や日本など
各国の支援に謝意を示すと同時に、「理念を共有する国々と協力して最悪の事態を避けたい」と述べた。
台湾、ソロモンと断交 国交国16カ国に 呉外相「極めて遺憾」
ソロモン諸島との断交を発表する呉ショウ燮外交部長(中央)
(台北 16日 中央社)呉ショウ(ショウ=金へんにりっとう)燮外交部長(外相)は16日夜、太平洋の
島国ソロモン諸島との外交関係断絶を発表した。中華民国(台湾)と外交関係を結ぶ国は16カ国に
なった。
ソロモンのソガバレ首相は同日、内閣会議を開き、台湾と外交関係を断絶し、中国と国交を樹立する
ことを決めた。これに対して呉部長は「極めて遺憾であり、強く非難する」と述べた。
中華民国は1983年にソロモン諸島と国交を樹立。ソロモンは台湾が外交関係を有する太平洋の
国のうち、面積(2万8450平方キロメートル)、人口(約60万人)ともに最大だった。残る太平洋の
国交国はキリバス、マーシャル諸島、ナウル、パラオ、ツバルの5カ国。
蔡英文総統が2016年5月に就任して以来、台湾と断交した国は6カ国目。
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