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米国の無秩序な政策の結果、日韓両国は核武装に動くか? / 日本の「核武装論」が最大抑止力

2017-10-15 18:39:14 | 核(軍事)・原発・非核化・制裁

米国の無秩序な政策の結果、日韓両国は核武装に動くか?

2017年10月15日 12:55    SPUTNIK

シンガポールの著名な外交官であるビラハリ・カウシカン元外務次官は、米紙ワシントン・ポストに寄稿した論文の中で、

朝鮮半島情勢が更なる展開を見せたときに考えられる結果の一つとして、日本と韓国両国の核武装という潜在的可能性に

言及した。また日本にとっては、公的には朝鮮民主主義人民共和国に対抗するために核兵器を持つことが、中国の抑止

目的にも繋がると指摘する。「スプートニク」ではロシアの軍事専門家ワシーリィ・カーシン氏にカウシカン氏の論文に対する

見解を求めた。以下、カーシン氏の考えを引用する。

 

アジア地域の国々で核兵器が拡散する可能性は、朝鮮半島の核・ミサイル問題が取り沙汰されるようになった初期から言われて

いたことだ。各国が核を持つという事態発展のシナリオは、北朝鮮の核兵器保有がまだ疑惑の域を超えておらず、同国の大陸間

弾道ミサイル(ICBM)開発計画などは真面目な議論の対象にもなっていなかった時期から既に存在していた。

今や北朝鮮が核攻撃で米本土西海岸のロサンゼルスも標的にできる可能性を手に入れようとしているとき、この筋書きはより

緊急性を帯びてくるだろう。

 

現在の情勢緊迫化をもたらした背景には、米国が過去10年にわたり続けてきた対北朝鮮「戦略的忍耐」政策がある。この政策の

根底にあるのは、北朝鮮政権は国内に蓄積した諸問題の圧力によって早い段階でいずれ崩壊し、政府の核兵器開発問題も自然

消滅するという信念だ。これが失策であったことをティラーソン米国務長官は今年4月に認めたものの、新たな対北戦略は構築され

なかった。現在の米国の制裁と軍事的脅威による働きかけは、北朝鮮政府を核保有へと駆り立てるだけで、その政策は矛盾して

いると言えるだろう。


米国の雄弁な外交政策は、ことこの数ヶ月間の朝鮮半島核問題においては、外交発展国のものとはますます似つかわしくない

ものになりつつある。しまいには、敵に壊滅的攻撃を与えて地上から消し去るという北朝鮮側の脅迫発言と鏡写しになる始末だ。

 

トランプ米大統領が演説で北朝鮮に向けて軍事的脅威を表明する一方、ホワイトハウスの高官たちは、マティス国防長官も含め、

北朝鮮攻撃は日本と韓国の両国に破滅的な結果をもたらす恐れがあると認めている。

またトランプ氏は、北朝鮮を対話に引き出そうとしながらも、同国指導者の金正恩氏を公然と侮辱する。誹謗の言葉が対話への道を

閉ざしかねないと専門家から指摘されているにも関わらず、米大統領はこれを幾度となく繰り返している。

北朝鮮情勢の緊張が高まる中、トランプ氏は10月13日、オバマ前政権の遺産(レガシー)だったイランとの2015年核合意を

見直す姿勢を表明した。これは北朝鮮に対し、米政府と交わすあらゆる取引が次政権では反故になる可能性を自ら露呈する

結果ともなった。

 

米政府内のこれらの混乱は、同国による安全保障の有効性を損なわずにはいられないだろう。米国が行なっていることは全て、

重要な同盟国に核武装による自衛という選択肢を取らせるよう仕向けているかのようだ。


仮にこのシナリオが成立した場合を考えてみよう。北東アジア地域を構成するのは5つの核保有国(ロシア、中国、北朝鮮、日本、韓

国)となり、同地域で今まで米国が演じてきた役割は不要となる。

核保有国間に築かれた新たな勢力関係の中で、米国の安全保障はどの国にとっても全くの無用とはならないにしても、従来ほどの

影響力は失われてしまうだろう。日本や韓国は同盟国であり続けるだろうが、米国が占めてきた優位性は損なわれる。

経済面においても、各国は米国との関係よりも地域内の国々との関係を重要視するようになると考えられる。

この重要な地域で米国が影響力を失った結果、最終的には世界全体における同盟体制の弱体化にも繋がるだろう。

果たして現在の米政権は、このような事態の発展を予見しているのだろうか。そしてこれを未然に防ぐ意志があるのだろうか。

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日本の「核武装論」が最大抑止力

WEDGE Infinity

 北朝鮮建国記念日の9月9日、ミサイル発射など”ありがたくない引き出物”はなかった。しかし、まだ油断はできない。

 

 金正恩があらたな挑発に出るのか、トランプ大統領の堪忍袋の緒が切れて軍事攻撃に踏み切るのかーー。北朝鮮の核危機は、一触即発の

状態がなお続く。暴挙を押さえる手立てがない苦しい中、“劇薬”として、米国内で、日本や韓国の核武装論が台頭している。日本国内でも、

自民党の石破茂元幹事長が、米軍の核の国内配備について議論すべきだという考えを示し、この問題に一石を投じた。

わが国が核兵器を保有すれば、北朝鮮だけでなく、その“兄貴分”の中国も大きな衝撃を受けるだろう。


中国は、北朝鮮に核を放棄させるための説得役として期待されながら、のらりくらりとして、各国の反発を買ってきたが、「日本が核武装」と

なると、その怖さに、本腰を入れて北朝鮮に圧力をかけるかもしれない。

 


中国が怯える「強い日本」

 9月3日の産経新聞に興味深い記事が掲載された。黒瀬悦成ワシントン支局長の署名入りの記事は、米国内で、北朝鮮に核開発を断念

させることは不可能という見方が強くなっていることに言及。その前提で、日韓の核武装を容認し、それによって北朝鮮の核に対抗するー

という議論が勢いを増しつつあると伝えている。民主党系のシンクタンク「ブルッキングス研究所」の研究員による、「日韓の核武装を認め

局地的な衝突も辞さない構えで、北朝鮮を封じ込める」との主張、米国の別な軍事専門家の「日本が自前の核兵器を持てば、すべての

民主国家は安全になる。強い日本は中国の膨張を阻止する」という積極的な日本核武装支持論も紹介している。 


 反面、米外交界の長老、キッシンジャー元国務長官のように、北朝鮮の核脅威が深刻になれば、日韓だけでなく、ベトナムなど、核兵器で

自らを守ろうとする動きが活発化するーーという「核ドミノ」への警戒感が存在することにも触れている。


 一方、石破幹事長の発言は、今月6日、民放テレビの番組で飛び出した。「米国の“核の傘”で守ってもらうといいながら、日本国内には

(核兵器を)置かないというのは正しいのか」と現状に疑問を投げかけ、「持たず、作らず、持ち込ませず、議論せず、ということでいいのか」

とも述べ、非核三原則の見直しに言及した。


 石破発言は、日本が自前で核開発を進めるという趣旨ではないが、国是としてきた三原則に疑念を呈した発言であり、波紋を呼んだ。

案の定、管義偉官房長官は記者会見で「これまで(三原則の)見直しの議論はしておらず、これからもすることは考えていない」と明確に

否定した。


かつては安倍首相も言及

 「日本核武装」が台頭するのは、これが初めてではない。

 少し古い話だが、北朝鮮が枠組み合意を破棄して核開発を再開した直後の2003年1月、米紙ワシントン・ポストに、「ジャパン・カード」と

いう見出しで、「日本の核武装が北朝鮮への対抗手段」というコラムが掲載された。筆者は保守派の論客、チャールズ・クラウトハマー氏

だった。コラムは「米国が北朝鮮への武力行使に消極的である理由のひとつは報復を恐れているため」と指摘。


 「北朝鮮を外交的、経済的に孤立させようという手段も、韓国、中国が協力するかわからない状況では、効果を期待できない」と、

当時のブッシュ政権(共和党、子)の政策を批判した。そのうえで、「こういう苦しい状況の中では、日本に自ら核武装させるか、

米の核ミサイルを日本に提供して北朝鮮と、それを支援する中国に対抗させることこそ、唯一の有効なカードになり得る」と主張した。


 この議論が日本国内にどの程度の影響を与えたかは明らかではないが、その後、2006年には、日米の政府間で、表沙汰にこそされな

かったが、議論されている。しかも、そのときは、第1次政権を担っていた安倍晋三首相が、コンドリーザ・ライス米国務長官(当時)に直接、

提起したという。


 ブッシュ政権2期目で国務長官を務めたライス氏の回顧録によると、2006年10月に訪日、官邸を表敬した時のこと。


 安倍首相は「日本が核開発に手をつけるという選択肢は絶対にあり得ない」としながらも、「それを望む声も多いのは事実だし、しかも、

その声は次第に大きくなっている」と日本国内の空気を伝えたという。


 回想録の中でのやりとりはそれだけで、ライス長官がどう答えたのかなどは明らかではないが、ライス女史は、「日本でそういう声が

あがることは意味がある。北の核開発を野放しにすれば大変なことになると中国も思い知るだろう」とコメントしている

(『ライス回顧録』集英社)。


 そう、中国なのだ、日本の核武装論をもっとも気にするのは。中国が戦後ずっと恐れてきたのは、最近こそあまり口にしなくなったが、

“日本軍国主義”の、復活だ。日本からみれば、軍国主義復活など、とんだ取り越し苦労だが、実のところ、「強い日本」を中国はもっとも

恐れている。


 かつて、日中国交正常化前、中国が日米安保条約に必ずしも反対しなかったのは、この条約が存在することによって、日本が防衛費を

抑制、軍事大国になることを防ぐことができると考えたからだ。“ビンのふた論”である。

 


 北朝鮮の核開発が深刻化した当初の1990年代はじめごろから、中国が、北朝鮮への影響力を行使して説得することへの期待感は

強かった。その際の“殺し文句”として「核開発を続ければ、日本も核武装する。そうなったら、われわれにとって大きな脅威になる。

それを避けるためにも中止しろ」というのが有効ではないかと考えられていた。


 中国が実際にそういう言葉を使って説得をしたかはわからないが、いずれにしても、国連の制裁に従わずに、密かに支援し続けてきた

中国のいうことに、北朝鮮が耳を貸すはずがなかった。

今回、日米で再び日本の核武装論、核持ち込み論が展開されはじめたのだから、この機会を逃さず、議論を本格化すべきだろう。


議論もせず、ということでいいのか

 石破発言に対する管官房長官の発言は冷淡そのものだったが、政府の立場としては当然だ。“無役”の石破氏は立場が違う。

ここは石破氏同様、自民党内で議論を活性化させるべきだ。

第1次安倍内閣時代、安倍首相とライス米国務長官が日本の核武装論議を交わした、ちょうど同じ時期、自民党政調会長だった

故中川昭一氏が、非核三原則の見直し論をぶち上げ、論議を呼んだ。非核三原則のもとで、核を持たずに北朝鮮の核開発に対して、

どういう対抗措置をとることができるのか考えなければならないーというのが発言の趣旨だったが、日本国内の一部政治家や反核団体から

激しい非難を浴びた。


 石破氏が今回、「議論もせず、ということでいいのか」と疑問を投げかけたのは、まさに、経緯があるからだろう。


 核に関する議論は、ある種タブー視されている。それだけに、石破発言に対して自民党内でもさまざまな議論があるようだ。中川発言の

時のように、ごうごうたる非難の声が出るかもしれない。


 しかし、北朝鮮の核・ミサイルに日本国民が脅威を感じ、中国は強大な軍事力を背景に、南シナ海、東シナ海で暴虐の限りを尽くしている。

そうした状況を考えれば、この時期に、議論を展開するのは、国民の理解を得やすいだろう。批判があったとしても、そういう議論が正しいこと

を国民に対して訴えかけ、説得すべきだ。そもそも、核武装論を展開することと、実際に核を持つこととは全く別の問題なのだ。


 日本政府は、非核三原則の手前、議論するには躊躇がある。党主導で大いにアドバルーンをあげ、賛否を含めて国民の間に議論を広げる

べきだろう。


 米国内ではいま、在韓米軍への戦術核再配備に関する議論が展開されている。日韓両国での活発な議論によって、今度こそ日本は

真剣だと思わせ、金正恩だけでなく、中国の習近平指導部の肝を冷やしてやるのも一興だろう。

2017年9月11日  樫山幸夫 (産經新聞前論説委員長)