日本版トマホーク、政府が開発の方向で検討
2017年11月20日 08時02分 読売新聞
政府は、地上の目標を攻撃できる巡航ミサイルを開発する方向で検討に入った。
防衛省が2018年度から研究を始める予定の対艦ミサイルに対地攻撃能力の付加を計画しているもので、日本が
対地巡航ミサイルを本格的に開発するのは初めてとなる。敵に占領された離島の奪還が主目的だが、敵基地攻撃も性能上は
可能で、北朝鮮への抑止力向上にもつながる見通しだ。
巡航ミサイルは搭載したレーダーなどによって攻撃目標に向かう精密誘導兵器で、弾道ミサイルが放物線を描いて上空
から飛来するのに対し、飛行機のように翼とジェットエンジンで水平飛行する。米国の「トマホーク」と共通点が多い
ことから、防衛省内では開発するミサイルを「日本版トマホーク」と位置付けている。
18年度予算の概算要求では「島嶼(とうしょ)防衛用新対艦誘導弾」の研究費77億円を計上。新型対艦ミサイルの
研究開始として公表しているが、技術的に共通点が多い対地ミサイルの機能も持たせる方向で検討を進める。
22年度に試作品の完成を目指す。
計画段階では射程は300キロ・メートル以上で、専用車両や護衛艦、P1哨戒機、戦闘機などから発射可能にする。
全地球測位システム(GPS)などを利用しながら低空で飛行し、目標直前で搭載したレーダーに切り替え、破壊する方式
を想定。ステルス機能を高めた形状とし、米国のトマホークより敵のレーダー網をかいくぐりやすくするほか、飛行途中で
進路を変えるなど、より迎撃されにくくなる機能も検討する。
政府が対地と対艦を兼ねる巡航ミサイル開発を検討するのは、中国軍が海洋進出と装備の近代化を同時並行で進めて
いることへの危機感からだ。ミサイルが実戦配備されれば、離島に接近する艦船や、上陸した地上部隊への攻撃能力が
大幅に向上する。ミサイルを搭載する艦船や航空機を敵地近くに展開すれば、敵基地攻撃での利用も可能となる。
ただ、政府は敵基地攻撃能力について、憲法上認められているが、専守防衛の観点から政策判断として保有しないとの
立場だ。政府・自民党内には北朝鮮情勢を踏まえ、敵基地攻撃能力の保有を求める意見もあるが、まずは離島防衛に
主眼を置いて開発を進める構えだ。
日本が過去に開発した巡航ミサイルに分類できる装備は対艦用としてのもので、車両発射型の88式地対艦誘導弾や、
これを改良した90式艦対艦誘導弾や93式空対艦誘導弾などがある。