【社説】中国政府のノーベル賞級恥さらし
2017 年 6 月 27 日 11:30 JST THE WALL STREET JOURNAL
2010年にノーベル平和賞を受賞した中国の人権活動家、劉暁波氏が末期の肝臓がんと診断されたことが26日に明
らかにされた。同氏の弁護士によると、中国政府から「治療のための仮釈放」を認められた劉氏は瀋陽市の病院で治療
を受けている。だが政府は劉氏の病状について責任を逃れることはできない。それ以前に積極的な治療が施されるべ
きであった。また、劉氏が家族から引き離されて投獄されていたのは不当の極みであり、政府はこれにも責任がある。
中国は2008年に劉氏を投獄し、「国家政権転覆扇動罪」で禁錮11年の判決を下した。罪状は「08憲章」を起草したこ
とだ。これは政治改革に対する平和的な呼びかけで、国民数千人が署名している。旧ソ連時代にバーツラフ・ハベルな
どチェコの反体制派が書いた、人権を求める文書「憲章77」を基にしている。
ノーベル平和賞の表彰状には、「劉氏は判決が中国それ自体の憲法と基本的人権の両方を侵害していると一貫して
主張してきた」と記されている。中国政府が自らの法を順守していないことに抗議する者を政府は投獄し続けている。
中国は人権侵害を指摘する外国人や外国の機関を罰することにも努めている。一例がノーベル平和賞委員会のある
ノルウェーだ。民間機関が運営する平和賞を劉氏が受賞すると、中国政府はノルウェーが「犯罪者」をたたえたとして外
交関係と貿易を縮小した。中国当局は劉氏の妻である劉霞氏も自宅軟禁にした。こうした情け容赦ない措置は、現世代
の中国共産党為政者の特徴だ。
9年にわたり投獄されていた間、世界が劉氏の発言を直接聞いたことはない。判決直後に話をした妻は「夫は何かを
やると決めたら後悔しない」と述べ、「表現の自由を行使したことで罰せられるのは自分で最後にしたいと話していた」と
している。たとえ共産党が捨てられ、習近平国家主席が忘れ去られたとしても、劉氏は中国の自由のために戦った歴史
的人物として人々の記憶にずっと後までも残ることになるだろう。