再び飛翔体発射~出口の見えない北朝鮮の焦り
ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月10日放送)に外交評論家・キヤノングローバル
戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。5月9日に北朝鮮が2発の飛翔体を発射したニュースについて
解説した。
4日、朝鮮東海の海上で行われた前線・東部戦線防護部隊の火力攻撃訓練を指導する金正恩朝鮮労働党委員長=2019年5月4日 写真提供:時事通信
北朝鮮が日本時間の5月9日午後4時29分と4時49分に北西部の平安北道、亀城(クソン)
付近から飛翔体合わせて2発を東の方向に発射し、日本海に落下した。韓国軍の合同参謀本部は
短距離ミサイルと推定されるとも発表している。
飯田)この飛翔体発射に関して、安倍総理大臣は9日、記者団に次のように述べております。
安倍総理)現時点で我が国の安全保障に影響があるような事態は確認されておりません。
飯田)これは直後の記者団へのコメントだったこともあるのか、抗議の言葉は無かったという
ことです。
宮家)金正恩さんは「何を考えているのか」と思う方もいらっしゃると思うのですが、僕は、
北は北でそれなりに考えているのだと思うのです。ハノイでトランプ大統領に相手にされ
なかったでしょう。
飯田)第2回の米朝首脳会談で。
ロイター」「プラス」 米朝首脳会談 ドナルド・トランプ米大統領、金正恩朝鮮労働党委員長、米朝首脳会談、拡大会合、第2回米朝首脳会談、アメリカ、北朝鮮=2019(平成31)年2月28日、ベトナム・ハノイ(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社
状況を打開できない北朝鮮の焦りの表れ
宮家)アメリカは少なくとも短期的には、北朝鮮との交渉をやる気が無いわけです。無視している。
金正恩委員長からしたら、「かまって欲しい」わけですよ。「どうして僕のことをかまって
くれないの」と言って、「それならやるから」とミサイルを撃ったということです。
国連安保理決議には違反なのですけれど、彼の頭のなかにあるのは、トランプさんと握って
いるのは「ICBMは撃ちません。核実験もやりません。でも、それ以外は・・・」などと
思っているかもしれない。だからこのくらいやっても大丈夫だろうということでしょう。
挑発は相手をその気にさせるものだけれど、その気になって貰っては困るわけですから、
今北朝鮮はアメリカを挑発しているのではなくて、「かまって欲しい」と言っているのです。
しかし、いまのアメリカは北朝鮮の言うことを聞いている場合ではない。
しかし、北朝鮮は同時に年末まで待つ、とも言っているのですから、「待つ」と「かまって」が
一緒になっている。つまり出口がない、いまの状況を打開できないということの証明だと思います。
ただこの問題、これでは解決しないわけですから、北朝鮮は「これだけやってもかまって
くれなかったらもっとやるから」と言ってやるのですよ。非常に焦っている証拠です。
だから逆に日朝関係も含めて今後いろいろ動く可能性も十分あると思います。
飯田)4日にまず、新型のミサイルなのかというものを発射し、今回は西側の亀城から自分の
領土を飛び越える形で発射。400キロ~500キロくらいの長さがあると言われて、
段々伸ばしています。
宮家)そうですね。中距離にならない程度。中距離だと今度は日本も反応せざるを得なくなって
来る。何らかの形で駆け引きが起きて、みんな見合ってどういう対応が良いかと考えている
最中ではないですかね、米、中、露、韓、日で。
飯田)今回は抗議の言葉が無いと、一部でも批判があるわけですけれど。
宮家)それはあるかもしれませんね。しかし、批判したところで物事が動くわけではない
ときもある。だから今は他の国も皆静かにしているのですね。それは、それなりの駆け引きの
一環だろうと思うので。原理原則論で言ったらそうかもしれないですけれども、物事が動き
始めるときには状況も変わって来る、されば対応が変わってもおかしくない、と私は思います