日米欧によるWTO改革案、ターゲットは中国
2018年12月11日 WEDGEInfinity 岡崎研究所
11月12日、日・米・EUなどは、WTOの物品貿易理事会に、自国優遇策により厳しく対応する改革案を
提示した。現行でも、補助金や規制などの自国産業優遇策の導入には報告義務がある。
今回の案は、その報告義務を怠った場合に罰則を科すというものである。改革案の注目点は以下の通りである。
加盟国が1年以内に完全な報告義務を果たせず、報告につき事務局の支援を仰がず、あるいは、支援を仰いだが事務局に協力
しなかった場合、以下の措置をとる。
(a) 報告の期限から1年以上2年未満経過後、2年目に当該加盟国には次の措置が適用される。
(i) 当該国の代表はWTOの機関の議長を務めることができない
(ii) 貿易政策レビュー(Trade Policy Review)作成の際、当該国から他の加盟国への問い合わせには回答しなくてもよい。
(iii) 当該加盟国の分担金を増額する。
(iv) 事務局長は、当該国の報告状況につき、物品貿易理事会に毎年報告する。
(v) 当該国は、総会で特別の報告義務を負う・
(b) 報告の期限から2年以上3年未満経過後、3年目に当該国には、上記(a)に加え、以下の追加的措置が適用される。
(i) 当該国は、活動停止国と認定される。
(ii) 当該国の代表は、WTOの公式な会議で、全ての他の加盟国が発言した後、初めて発言機会を得る。
(iii) 当該国の総会における発言は、活動停止国によるものとして扱われる。
参考:WTO GATT& Goods Council 公式HP
予想される中国の強い抵抗
現在、グローバルな貿易をめぐり、最も注目を集めているのは、トランプの米国の一国主義・保護主義的
通商政策、中国による自国産業を優遇するためのルールを軽視した姿勢である。
そうした中、WTOを改革して貿易に関する国際ルールをより効果的なものにしようとする動きも見逃せない。
上記のWTO改革案は、その良い例である。これがターゲットとしているのは、中国であることは言うまでも
ない。罰則として加盟国としての権利を制限するような内容を含む、かなり厳しいものになっている。
日米欧は、3極貿易大臣会合を継続的に開催しており、種々の規制、補助金、不透明な許認可制度、
技術の強制移転などの「非市場志向」的な貿易慣行への反対、WTOを通じた紛争の解決の模索などで
一致している。
今回のWTO改革案の提案も、そうした流れの中にある。日米欧の枠組みは、国際的ルールに背を向けがちな
トランプ政権の米国を巻き込むものであり、意義がある。ただし、WTO改革について3者が全ての面で
一致しているわけではなく、2国間の貿易紛争を処理する上級パネルの委員の指名をめぐり米欧が対立し
指名できない状態が続くなどしている。
3極の枠組みで、WTO改革につき、利害が対立しない分野、すなわち対中国を念頭に置いた措置から
手を付けて行くということになると思われる。これには、当然、中国の強い抵抗が予想され、
予断は許されない。今後とも通商をめぐり、中国は大きな問題であり続ける。多面的な取り組みが求められる。
なお、今回の提案には、日米欧の他、アルゼンチン、コスタリカ、それに台湾が提案者に加わっている。
中国の外交圧力により外交空間における存在を圧迫され続けいている台湾が名を連ねている点にも、
注目してよいであろう。