大半が禁止本、韓国国立図書館から見えた北朝鮮
(CNN) 韓国国立中央図書館の5階に、北朝鮮に関する資料を集めた「北朝鮮資料センター」がある。
所蔵されている本や雑誌の大半は韓国国内で禁止されているが、同図書館のこの一角は一般の人にも開かれている。
南北関係が近年になく悪化するなか、同センターは北朝鮮国内の情勢を垣間見ることができる貴重な場所だ。
副センター長のキム・ヨンナム氏は、「一般の人たちに北朝鮮への理解を高めてほしいと思ってこの場所を設立した」と話す。
同センターには北朝鮮で作られた書籍や雑誌などが数多く所蔵されている。
「朝鮮民主主義人民共和国」と題された高級誌の最新号では、セメント工場の ほか靴工場を特集。
「工場全体の生産にかける強い熱意のおかげで、マエボンサンのブランド靴はその格好良さと種類の豊富さにより人気を博している」として いる。
CNNソウル支局でプロデューサーを務め、長年にわたり北朝鮮情勢を追ってきたKJ・クオン氏のような人にも新しい発見がある。
北朝鮮紙は電子版しか見たことがなかったというクオン氏にとって、紙の新聞に触るのは初めての経験だ。
ここに展示されている本や雑誌の多くは「特別資料」という赤いラベルが貼られている。
大半は韓国国内で実質的に禁止されており、来場者は閲覧にあたり特別の許可が必要だ。
韓国の治安法によると、北朝鮮のプロパガンダ資料を所持していることが発覚した場合、韓国人は禁錮刑に処される可能性もあるとしている。
北朝鮮資料センターに所蔵されている刊行物の多くには、金正恩(キムジョンウン)第1書記の一族を礼賛する露骨なプロパガンダの文言が含まれてい
る。
その一例は「花のつぼみ」と題された子ども向けの絵本だ。
コーンパイプを吸う太った米軍将校が北朝鮮国民の抑圧を試みる物語や、おもちゃの機械を別の子に貸してあげる少年の漫画を扱う。
後者は共有は美徳だとする教訓で締めくくられている。
国家安保戦略研究所のアナリスト、リム・スファン氏は
「この図書館には、国民の管理や超国家主義のイデオロギーという点で北朝鮮がいかに特異であるかを裏付けるデータが十分に存在する」と話す。
リム氏は、韓国人が北朝鮮の複雑さを知るうえで同センターは「非常に貴重」だと指摘。
「われわれは北朝鮮の体制を維持するのは不可能だとみているが、北朝鮮のことを理解しなければ不測の事態に対応できない」と話す。
図書館の職員によれば、同センターを訪れる人は1日わずか50人ほど。
来場者が目にするガラスケースには鎮痛剤や、くし、衣類のほか、北朝鮮の通貨も展示されている。
北朝鮮の通貨は首都平壌を訪れる外国人も通常、見ることができない。
北朝鮮の刊行物を入手するのは簡単ではない。南北間を隔てる非武装地帯(DMZ)を越えて新聞が届けられるのは不定期だ。
また韓国と北朝鮮の国民が交流できる数少ない場所の1つだった開城(ケソン)工業団地はこのほど、南北間の緊張が激化したことを受け閉鎖。
図書館員は第三国を通じて仲介者から展示品を入手しなければならなくなった。
こうした仲介者の名前について、CNNでは報道しないよう要請を受けている。
キム副所長によると、名前を明かせば新聞や雑誌、書籍の入手がおぼつかなくなる恐れがあるという。(2016/05/9)