人権団体が中国を非難、イスラム教徒に「組織的な人権侵害」
イスタンブールで行われた、中国政府によるウイグル族の弾圧に抗議するデモの参加者
(CNN) 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」は9日、中国政府が同国の
新疆ウイグル自治区に住むイスラム教徒に対し、大規模かつ組織的な人権侵害を行っていると訴える報告書を公表した。
新疆ウイグル自治区に関しては国連も先月、ウイグル族や少数派のイスラム教徒らの相当な人数が政治思想の
再教育施設に強制収容されているとして警鐘を鳴らしていた。
中国外務省は国連の報告に対し事実と異なると強く反発したが、今回のHRWの報告書については現時点で
コメントしていない。
HRWの中国担当責任者、ソフィー・リチャードソン氏は声明を出し、中国政府が「国内で過去数十年間見られな
かった規模の人権侵害を新疆ウイグル自治区で行っている」と主張した。
HRWは新疆ウイグル自治区に居住していた58人に聞き取り調査を実施。このうち5人は施設に強制収容された
経験を持ち、38人は近親者が同様の目に遭ったという。
これらの人々の証言によると当局は2014年から再教育施設への大規模な強制収容を開始した。
収容者は起訴や裁判といった法的に適正な手続きを一切経ることなく拘束され、家族や弁護士と会うことも
認められなかった。
当局は拘束の理由として、外国との接点を持っていたこと、外国製のソーシャルメディアを使用したこと、
自らのアイデンティティーや宗教について平和的な表明を行ったことなどを挙げたという。
HRWは「いずれも犯罪には当たらない」と強調している。
区都ウルムチの街路に掲示された、区内での「テロ」撲滅を呼びかけるポスター
元収容者の1人は、収容中に殴られて虐待されたと明かした。また「食事の前には起立させられ、
『中国共産党に感謝します。母国に感謝します。習国家主席に感謝します』
『習国家主席の健康と母国の繁栄、民族の調和を祈ります』
と口に出して言わなくてはならなかった。それが済むと、座って食事することが許された」と語った。
施設では政治思想を教育する授業が行われ、収容者らは「様々な規則や規制について習わされた」
「特に『宗教的な過激思想に反対する』『共産党を支持する』といった32の規則については暗記させられた」という。
HRWは、聞き取りにより明らかになったこうした実態を文化大革命の下での状況になぞらえている。
1960年代から70年代にかけて続いたこの革命運動により、中国全土は内戦状態に陥り、
宗教的・民族的少数派に対する広範な弾圧が行われた。
活動家らによると、現在新疆ウイグル自治区の当局は多くのウイグル族を逮捕、強制収容するだけでなく、
ハイテク機器や大衆動員プログラムをますます活用しながら、自治区内の住民の抑制を続けているという。