レゴ、1400人削減へ デジタル世代対応で苦戦
1-6月期は13年ぶり減収
2017 年 9 月 6 日 09:10 JST THE WALL STREET JOURNAL By Saabira Chaudhuri
デンマークの玩具大手レゴは1400人の人員を削減し、経営をスリム化する。売上高が急減するなか、ITの知識を増す世界の
子供たちを取り込む策を強化する。
レゴは米マテルや他の玩具メーカーと同様、テレビゲームやYouTube(ユーチューブ)の動画といった子供向けのデジタルな
娯楽との競争で打撃を受けている。業界はデジタル世代向けに玩具を現代化しようと努めてきた。レゴは自社のプラスチック製
ブロックに基づいたビデオゲームやプログラム可能なロボットを展開している。
だがこうした変化のペースは、より伝統的な玩具の売り上げ減退に打ち勝つほど速くない。レゴが5日発表した1-6月期(上半期)
売上高は前年同期比5%減少し、13年ぶりの減収となった。一方、マテルは7月、同期が6%の減収だったと発表した。
マテルは、現金を手元に残し玩具開発に対するアプローチにてこ入れするため、配当を削減した。
新たに就任した元グーグル幹部のマーゴ・ジョージアディス最高経営責任者(CEO)は、同社が現代の世界に「適応する」必要が
あると述べた。バービーやホットウィールなど自社主要ブランド全てで動画コンテンツやゲームの要素を取り入れたいという。
レゴはブロックに注力し続けると言明しているが、デジタルの新たな試みで時代を先取りしているとも言える。例えば2013年の
「チーマ」シリーズ発売を受けて、関連のオンラインゲーム、動画、テレビ番組を投入した。「レゴ・ブースト」では、コンピューターの
プログラミングと物理的な組み立ての要素を組み合わせている。2月には、アプリをベースにしたソーシャルネットワークを立ち上げ、
子供たちがレゴ組み立て経験を共有できる場を設けた。
デジタル製品が物理的な玩具を消し去るような兆しは今のところない。ニューヨークで玩具店を経営する女性は、子供たちは
「今も本を読み、レゴを使っている。人々はアナログな玩具のための場所を作っている」と述べた上で、「2つの面を持つ玩具が
増えている」と認めた。
この経営者によれば、ホールマーク傘下のクレヨラは、塗り絵本のキャラクターをオンラインに取り込んでアニメ化するアプリを
展開している。ハズブロの「ラブ2ラーン・エルモ」アプリを使えば、子供がエルモのぬいぐるみと会話できる。
レゴはデジタル対応の加速に向け、次期CEOにIT通のデンマーク人経営者を選んだ。同国の産業機械大手ダンフォスの
元CEO、ニールス・B・クリスチャンセン氏(51)が10月に就任する。
クリスチャンセン氏は、9年間のダンフォスCEO時代にオペレーションの効率化と迅速化を進めたほか、研究・開発やデジタル
設備に投資したと評価されている。レゴのバリ・パッダ現CEOは就任からわずか9カ月で退任する。
レゴの1-6月期決算はクリスチャンセン氏の課題を浮き彫りにしている。減収は13年ぶり。地域や部門別の詳細は明らかに
しなかったが、これまでに米国など最も大きくて成熟した市場の一部について、販促活動が売上高押し上げに結び付いていない
ことを明らかにしていた。
こうした背景から人員削減を発表した。製品展開を加速するため、経営・管理の階層も削減する。
レゴ・ブランド・グループのヨアン・ヴィー・クヌッドストープ会長は「製品開発やマーケティング、販売面で、全社的に執行が至ら
なかった」と述べた。レゴ・ブランド・グループは、キアク・クリスチャンセン一族が保有する75%のレゴ株、テーマパーク
「レゴランド」の権益、教育事業を管理している。
レゴの最近の苦戦には、デジタル玩具への流れと無関係な要因もある。昨年公開された映画「スター・ウォーズ」シリーズの
「ローグ・ワン」関連のレゴ製品は、前作「フォースの覚醒」製品ほど盛り上がらなかった。
2004年から16年末までレゴのCEOを務めたクヌッドストープ氏は、最近のトラブルには自身の責任もあることを認めた。
創業家以外でレゴのCEOに就任したのは同氏が初めて。売り上げの減速と多額の債務で破綻の危機にあったことを受けた
就任だった。
同氏はレゴの軸足をあらためてブロックに置き、時計や衣料、人形などの事業を縮小。当初は人員を削減し、製造のアウトソーシン
グや経営スリム化もした。これにより、10年以上にわたり2桁増収を遂げた。
だが最近では、需要増が続くとの見方から増員。12~16年の間に7000人を新規採用していた。