ユネスコ「世界の記憶」改革で韓国孤立 中露は日本同調
ユネスコのアズレ事務局長(AP)
【パリ】国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「世界の記憶」改革案を検討する作業部会では、
「政治利用の阻止」を掲げる日本を中国やロシアなど多数が支持し、「韓国は孤立する場面が目立った」
(外交筋)という。ユネスコは改革のため2年間、新規申請を受理しておらず、制度再開の遅れに不満を
示す国も出てきた。
世界の記憶改革は2015年、中国の「南京大虐殺文書」が登録されたのを機に日本が主張してきた。
専門家で作る諮問委員会が非公開で行う従来の審査方法では、登録という「お墨付き」で文書内容を
正当化しようとする「政治化」が防げないためだ。だが、作業部会で中国は日本に同調し、加盟国の
審査参加で、制度を透明化すべきだという方針を支持した。
中国の姿勢の変化について、外交筋は「自国に都合の悪い案件が出ても、従来の審査では登録を
阻止できないと判断したからではないか」と分析する。中国に対しては、1989年の天安門事件を
めぐり、民主活動家らが関連資料の登録を訴えていた。ロシアについては、旧ソ連リトアニアで
スターリン政権によるシベリア強制移住の記録で登録申請を目指す動きがある。
作業部会では「加盟国から異議が出た案件」以外の申請について審査の大枠が決まった。国内文書の
登録申請を目指すブラジルなどは、「新制度で『異議なし案件』だけでも審査を再開すべきだ」と主張。
妥協点を探るため、作業部会の議長国アルバニアなどの仲介で日韓双方の協議も行われたが、
決着しなかった。
ユネスコ関係者によると、韓国は新制度に基づく審査の一部再開にも応じず、「慰安婦関連資料だけ
審査から取り残されるのを懸念したのではないか」という。韓国のユネスコ代表部は「制度改革は進行中。
現段階でコメントできない」としている。登録申請を目指す案件は100件以上あるとみられている。