首相 国連演説で北朝鮮への圧力強化呼びかけへ
9月20日 18時44分 NHKニュース
ニューヨークを訪れている安倍総理大臣は、日本時間の21日未明、国連総会での一般討論演説に臨み、北朝鮮との過去の対話が
核開発などの放棄につながらなかったことを強調し、今は対話ではなく圧力をかけるべきときだとして、国際社会が結束して圧力を
強化するよう呼びかけることにしています。
アメリカのニューヨークを訪れている安倍総理大臣は、日本時間の20日未明、北朝鮮が友好国と位置づけるイランのロウハニ大統領
のほか太平洋の島しょ国の首脳らと相次いで会談し、北朝鮮に対する国連安全保障理事会の制裁決議の着実な履行などに協力を
求めました。
これに続いて安倍総理大臣は日本時間の21日未明国連総会での一般討論演説に臨むことにしています。この中で安倍総理大臣は、
北朝鮮への対応に大半の時間を割き、北朝鮮が事前の通告無しに日本の上空を通過する弾道ミサイルを2度にわたり発射したこと
や核実験を強行したことを取り上げ、強く批判することにしています。
そのうえでKEDO・朝鮮半島エネルギー開発機構や6か国協議を通じた過去の北朝鮮との対話が核開発の放棄などにつながら
なかったことを強調し、今は対話ではなく圧力をかけるべきときだとして国際社会が結束して圧力を強化するよう呼びかけること
にしています。
安倍総理大臣は国連総会の出席に合わせて各国の首脳らと個別に会談し、北朝鮮への圧力強化に向けた働きかけを続けていて、
日本時間の22日の未明には、アメリカのトランプ大統領、韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領との日米韓3か国の首脳会談に
臨む予定です。
Prime Minister of Japan Shinzō Abe Address to the 72nd Session of the United Nations General
ニューヨークを訪れている安倍総理大臣は国連総会での一般討論演説で、過去の北朝鮮との対話は核開発などの放棄につながら
なかったと指摘し、「北朝鮮の挑発を止めることができるかどうかは国際社会の連帯にかかっている」と述べ、すべての加盟国に
対して一連の安保理決議の厳格かつ全面的な履行を呼びかけました。
演説の冒頭、安倍総理大臣は、女性支援や安全保障理事会の改革など紹介するテーマが多くあるものの北朝鮮問題一点に集中
せざるをえないとしたうえで、北朝鮮が核実験を強行したことなどに触れ、「このたびの危機は独裁者が大量破壊兵器を手に入れよう
とするたび、われわれがくぐってきたものと、質において次元の異なるものだ」と指摘しました。
そのうえで、安倍総理大臣は、「北朝鮮の核兵器は水爆になったか、なろうとしている。その運搬手段は早晩、ICBM=大陸間弾道
ミサイルになるだろう。これをもたらしたのは『対話』の不足では断じてなかった」と述べました。
そして、KEDO・朝鮮半島エネルギー開発機構や、6か国協議を通じた北朝鮮との対話が核開発の放棄などにつながらなかったと
指摘し、「対話による問題解決の試みは無に帰した。北朝鮮にすべての核・弾道ミサイル計画を完全で検証可能かつ不可逆的な
方法で放棄させなければならない。そのために必要なのは対話ではない。圧力だ」と強調しました。
さらに安倍総理大臣は、「核・ミサイルの開発に必要な、モノ、カネ、ヒト、技術が北朝鮮に向かうのを阻み、累次の決議を完全に
履行させる。必要なのは行動だ。北朝鮮による挑発を止めることができるかどうかは国際社会の連帯にかかっている」と述べました。
そして、横田めぐみさんが北朝鮮に拉致されてから、ことし11月で40年になることにも触れ、拉致・核・ミサイルなど諸懸案の包括的
解決に向けて、国連のすべての加盟国に対して一連の安保理決議の厳格かつ全面的な履行を呼びかけました。
第2次安倍政権発足後、安倍総理大臣が国連総会の一般討論演説を行うのは今回で5回目ですが、政府関係者によりますと、
ここまで北朝鮮にしぼって演説したことは過去にないということです。
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<更新> 外務省
第72回国連総会における安倍内閣総理大臣一般討論演説全文
平成29(2017)年9月20日
訪米中の安倍晋三首相は20日午後(日本時間21日未明)の国連総会で一般討論演説を行った。演説全文は次の通り。
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1、議長、ご列席の皆さま、本日私はまず、「持続可能な開発目標(SDGs)」の実施にかける、われわれの情熱をお話ししようと思っていま
した。国内の啓発を図る工夫にも、ご紹介したいものがありました。
いわゆる「We-Fi」、女性起業家を資金で支える計画が私個人や日本政府にとって、なぜ重要か。
「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」(UHC)のことを私は「日本ブランドにする」と言っています。本年12月、われわれは東京でUHCを
主題に大きな会議を開きます。
語るべきことの、リストは長い。
法の支配に対するわれわれの貢献。パリ協定に忠実たろうとするわれわれの決意。世界のインフラ需要に対し、質の高い投資をもって
臨むわれわれの政策。
また、日本がどこまでも守りたいものとは、フリーで、リベラルで、オープンな国際秩序、多国間の枠組みであります。
まさに、それらを守る旗手・国連に寄せる世界の期待はいよいよ高い。ならばこそ、安全保障理事会を、時代の要請に応じ、いち早く、
変革すべきなのです。変革のため日本は友人たちと努めます。安保理常任理事国として、世界平和に積極的役割を果たすのが、日本の
変わらぬ決意だと、私は主張するつもりでありました。
けれども私は、私の討論をただ一点、北朝鮮に関して集中せざるを得ません。
2、9月3日、北朝鮮は核実験を強行した。それが水爆の爆発だったかはともかく、規模は前例をはるかに上回った。
前後し、8月29日、次いで、北朝鮮を制裁するため安保理が通した「決議2375」のインクも乾かぬうち、9月15日に北朝鮮はミサイルを
発射した。いずれも日本上空を通過させ、航続距離を見せつけるものだった。
脅威はかつてなく重大です。眼前に差し迫ったものです。
われわれが営々続けてきた軍縮の努力を北朝鮮は一笑に付そうとしている。不拡散体制は、その史上最も確信的な破壊者によって
深刻な打撃を受けようとしている。
議長、同僚の皆さま、このたびの危機は、独裁者の誰彼が大量破壊兵器を手に入れようとするたび、われわれがくぐってきたものと質に
おいて、次元の異なるものです。
北朝鮮の核兵器は水爆になったか、なろうとしている。その運搬手段は早晩、大陸間弾道ミサイル(ICBM)になるだろう。
冷戦が終わって二十有余年、われわれは、この間、どこの独裁者にここまで放恣にさせたでしょう。北朝鮮にだけは、われわれは結果として
許してしまった。
それはわれわれの目の前の現実です。
かつ、これをもたらしたのは「対話」の不足では断じてありません。
3、対話が北朝鮮に核を断念させた、対話は危機から世界を救ったと、われわれの多くが安堵したことがあります。一度ならず、二度までも。
最初は1990年代の前半です。
当時、北朝鮮がなした恫喝は、国際原子力機関(IAEA)など、査察体制からの脱退を、ちらつかせるものにすぎませんでした。
しかし、その意図の、那辺を察したわれわれには、緊張が走った。
いくつか曲折を経て94年10月、米朝に、いわゆる核合意が成立します。
核計画を北朝鮮に断念させる。その代わりわれわれは、北朝鮮にインセンティブを与えることにした。
日米韓は、そのため、翌年の3月、朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)をこしらえる。これを実施主体として、北朝鮮に軽水炉を
2基つくって渡し、また、エネルギー需要のつなぎとして、年間50万トンの重油を与える約束をしたのです。
これは順次、実行されました。ところが、時を経るうち、北朝鮮はウラン濃縮を次々と続けていたことが分かります。
核を捨てる意思など、もともと北朝鮮にはなかった。それが誰の目にも明らかになりました。発足7年後の2002年以降、KEDOは活動を
停止します。
北朝鮮はその間、米国、韓国、日本から支援を詐取したと言っていいでしょう。
インセンティブを与え、北朝鮮の行動を変えるというKEDOの枠組みに価値を認めた国は徐々に、KEDOへ加わりました。
欧州連合(EU)、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、インドネシア、チリ、アルゼンチン、ポーランド、チェコそしてウズベキスタン。
北朝鮮は、それらメンバー全ての善意を裏切ったのです。
創設国の一員として、日本はKEDOに無利息資金の貸与を約束し、その約40%を実施しました。約束額は10億ドル。実行したのは
約4億ドルです。
4、KEDOが活動を止め、北朝鮮が核関連施設の凍結をやめると言い、IAEA査察官を追放するに及んだ2002年、2度目の危機が
生じた。
懸案はまたしても、北朝鮮がウラン濃縮を続けていたこと。そしてわれわれは、再び、対話による事態打開の道を選びます。
KEDO創設メンバーだった日米韓3国に、北朝鮮と中国、ロシアを加えた6カ国協議が始まります。03年8月でした。
その後、2年、曲折の後、05年の夏から秋にかけ、6者は一度合意に達し、声明を出すに至ります。
北朝鮮は、全ての核兵器、既存の核計画を放棄することと、核拡散防止条約(NPT)と、IAEAの保障措置に復帰することを約束した。
そのさらに2年後、07年の2月、共同声明の実施に向け、6者がそれぞれ何をすべきかに関し、合意がまとまります。
北朝鮮に入ったIAEAの査察団は寧辺にあった核関連施設の閉鎖を確認、その見返りとして北朝鮮は重油を受け取るに至るのです。
一連の過程は、今度こそ粘り強く対話を続けたことが、北朝鮮に、行動を改めさせた、そう思わせました。
実際はどうだったか。
6カ国協議のかたわら、北朝鮮は05年2月、「われわれは、既に核保有国だ」と、一方的に宣言した。
さらに06年の10月、第1回の核実験を、公然、実施した。
2度目の核実験は09年。結局北朝鮮はこの年、「再び絶対に参加しない」と述べた上、6カ国協議からの脱退を表明します。
しかもこのころには弾道ミサイルの発射を繰り返し行うようになっていた。
5、議長、同僚の皆さま、国際社会は北朝鮮に対し、1994年からの十有余年、最初は「枠組み合意」、次には「6カ国協議」によりながら、
辛抱強く、対話の努力を続けたのであります。
しかし、われわれが思い知ったのは、対話が続いた間、北朝鮮は核、ミサイルの開発を諦めるつもりなど、まるで持ち合わせていなかった
ということであります。
対話とは、北朝鮮にとって、われわれを欺き、時間を稼ぐため、むしろ最良の手段だった。
何よりそれを次の事実が証明します。
すなわち94年、北朝鮮に核兵器はなく、弾道ミサイルの技術も成熟にほど遠かった。それが今、水爆とICBMを手に入れようとしている
のです。
対話による問題解決の試みは、一再ならず、無に帰した。
何の成算あって、われわれは三度、同じ過ちを繰り返そうというのでしょう。
北朝鮮に全ての核・弾道ミサイル計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で放棄させなくてはなりません。
そのため必要なのは、対話ではない。圧力なのです。
6、議長、同僚の皆さま、横田めぐみという、13歳の少女が、北朝鮮に拉致されて、本年11月15日、ついに40年を迎えます。
めぐみさんはじめ、多くの日本人がいまだに北朝鮮に拉致されたままです。
彼らが一日も早く祖国の土を踏み、父や母、家族と抱き合うことができる日が来るよう、全力を尽くしてまいります。
北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対し、日本は日米同盟によって、また、日米韓3国の結束によって立ち向かいます。
「全ての選択肢はテーブルの上にある」とする米国の立場を一貫して支持します。
その上で私は、北朝鮮に対し厳しい制裁を科す安保理決議2375号が、9月11日、安保理の全会一致で採択されたのを多とするものです。
それは、北朝鮮に対する圧力をいっそう強めることによって、北朝鮮に対し、路線の根本変更を迫るわれわれの意思を、明確にしたもの
でした。
しかし、あえて訴えます。
北朝鮮は既に、ミサイルを発射して、決議を無視してみせました。
決議はあくまで、始まりにすぎません。
核・ミサイルの開発に必要な、モノ、カネ、ヒト、技術が、北朝鮮に向かうのを阻む。
北朝鮮に累次の決議を完全に履行させる。
全ての加盟国による一連の安保理決議の、厳格かつ全面的な履行を確保する。
必要なのは行動です。北朝鮮による挑発を止めることができるかどうかは、国際社会の連帯にかかっている。
残された時間は多くありません。
7、議長、ご列席の皆さま、北朝鮮はアジア・太平洋の成長圏に隣接し、立地条件に恵まれています。勤勉な労働力があり、地下には
資源がある。
それらを活用するなら、北朝鮮には経済を飛躍的に伸ばし、民生を改善する道があり得る。
そこにこそ、北朝鮮の明るい未来はあるのです。
拉致、核、ミサイル問題の解決なしに、人類全体の脅威となることで、開ける未来など、あろうはずがありません。
北朝鮮の政策を、変えさせる。そのために私たちは、結束を固めなければなりません。
ありがとうございました。