中国の高飛車を体感したフィリピン新大統領
外交手腕は未知数のドゥテルテ氏、南シナ海問題で米中の板挟みに
2016 年 7 月 21 日 06:36 JST THE WALL STREET JOURNAL
【ダバオ市(フィリピン)】フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ新大統領は、最大級の敬意を持って扱われることに慣れている。
ドゥテルテ氏は、かつて無法地帯だった南部ミンダナオ島ダバオの市長だった。麻薬密売人の取り締まりで、銃弾を撃ち込まれた遺
体を数多く残してきた。
密売人らは警察だけでなく、自警団員から成る暗殺部隊のターゲットにされていた。
ドゥテルテ氏は大口径のライフルを背負ってオートバイにまたがり、ごう音を立てて通りを走り抜けるような人物だった。
そんなドゥテルテ氏だが、7月12日の午後は、いら立った様子を見せていた。
側近の1人によると、中国が自分を軽々しく扱っていると感じていたという。
「私を信用しなかったのか」
ドゥテルテ氏は閣議で国際仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の判決内容をじかに受け取ったばかりだった。
中国による南シナ海の領有権主張には法的根拠がないとしてフィリピンが提訴した仲裁手続きでは、
フィリピンが画期的な勝利を収めた。
テーブルの周囲では拍手がわき起こり、歓喜のあまりガッツポーズを取る人々がいた。
その後にまずやる仕事は公式声明を出すことだった。
ある閣僚は、ドゥテルテ氏が前夜に駐フィリピン中国大使とディナーを共にしたと口にした。
その言葉がドゥテルテ氏の関心を引いた。
その場にいた側近によると、同氏はからかうように「お前はすでに中国のスパイなのか」と問いただしたという。
この閣僚はその後、判決が下った時にフィリピン政府が言うべき、そして控えるべき発言について、
中国大使から要求された長くて詳細なリストを報 告した。
不利な判決を予想していた中国は、フィリピン政府が中国の顔に重ねて泥を塗るような「高らかな声明」を発するかもしれないと焦って
いたのだ。
ドゥテルテ氏は真顔になった。関係者によると、彼をいら立たせていたのは中国側の要求の無遠慮さだけではなかった。
その日、ドゥテルテ氏は中国大使を安心させるため、すでに本人と会っていたのだ。同氏は「彼は私が言ったことを信用しなかったのか」と尋ねた。
ドゥテルテ氏は「ここだけの話だが、私はそうした事(中国大使が求めた発言)のいくつかを口にするつもりだった。
だが大使が私に言わせようとするなら、言うつもりはない」と話したという。
在マニラ中国大使館はコメントの求めに応じなかった。
ドゥテルテ氏は中国の高圧的な手法について即座に学んだ。
米中を手玉に取れるか
同氏は地域覇権を巡る米中対立の板挟みにあっている。中国側の多くのナショナリストたちにとって、フィリピンは大きなゲームの中
での米国の手先にすぎない。
国際舞台での経験が全くないドゥテルテ氏は、2つの大国を手玉に取る気質と政治スキルを兼ね備えているのだろうか。
仲裁裁判の判決が下る前、ドゥテルテ氏に批判的な人々は同氏が進んで引き下がる気配を感じ取っていた。
ドゥテルテ氏は大統領選の選挙運動で、同氏の貧しい故郷であるミンダナオ島で中国が鉄道建設に乗り出すなら、海洋主権と引き換
えにする可能性さえ示唆していた。
同氏はまた、勝ち目のない中国との紛争にフィリピン部隊をさらすリスクは冒さないと明言していた。
同氏は必要があれば水上バイクに乗ってスカボロー礁まで行き、自分で領有権を守ると、
いつもの自信たっぷりな態度で冗談を飛ばしていた。
仲裁裁判はドゥテルテ氏が中国に仕掛けたのではない。前任者のベニグノ・アキノ3世から引き継いだものだ。
だがフィリピンが勝利を収めた今、ドゥテルテ氏 はこれを2国間交渉に利用したがっている。
しかし、中国は判決を「紙くず」として拒絶し、フィリピンと交渉しないと述べている。
「米国に艦船を送らせろ」
米国政府はドゥテルテ氏の動向を注意深く見守っている。同氏は米国による安全保障を信用していないと公言している。
フィリピンにあるアテネオ・デ・ダバオ 大学のラモン・ベレノ教授(政治学)によると、アキノ前大統領は米国が「守ってくれる」と信じてい
たが、ドゥテルテ氏は「米国からの支持を必要としない、 より独立した政策を求めている」という。
とはいえ、ドゥテルテ氏が米国との同盟関係を破棄したがっているわけではない。
側近によると、 同氏は閣議で米国の航空母艦によって力を誇示することを歓迎すると宣言した。
同氏は閣僚らに対し、「彼らに艦船を送らせろ。『今すぐ来い』と言ってやれ。 私は大っぴらには言えないが」と話したという。
それでも、ある専門家は「変化が起きてきた」と指摘し、ドゥテルテ氏が「中国政府との対立ではなく、協力を望む兆候を示してきた」と
述べる。
アキノ氏も当初は同様の野心を抱いていた。だが中国の船が2012年にスカボロー礁を奪うと態度を一変させ、
中国の政治体制をナチスドイツに例えるようになった。アキノ氏が法的措置に訴えたのは、その翌年だ。
けんか腰外交
ドゥテルテ氏はアキノ氏よりも感情の起伏が激しく、けんか腰の態度を外交に持ち込んでいる。
大統領選に勝利した後も、当初は米国大使に会うことを拒んでい た。
1989年に起きたオーストラリア人修道女のレイプ殺人事件について、ドゥテルテ氏が衝撃的な冗談を飛ばしたことを同大使が批判して
いたからだ。ドゥ テルテ氏は後に、この件について謝罪した。
中国はドゥテルテ氏が態度に気をつけることを期待するだろう。
犯罪撲滅に向けた恐ろしい戦略で知られる同氏は「パニッシャー(私刑執行人)」の異名を持つが、中国は強敵かもしれない。
フィリピン、中国提案の二国間協議を拒否 南シナ海問題
中国はフィリピンを小国」だと思ってバカにしていたのでしょう。
主権ある一国にもっと敬意を表して接していたら、現大統領は仲裁裁判所の裁決とは関係なく中国と交渉の席についたでしょう。
おごりがが招いたフィリピンの交渉拒否だったのです。
さて、これからはフィリピンの外交の仕方の問題です。
米中を手玉にとり両方から美味しいところを貰おうなんて考えて横暴に振る舞ったら、どこかの国みたいに
結局自国が困る事になると思います。
南シナ海の領有権問題はフィリピンだけでは」ありません。
南シナ海の平和へ、とても困難で長い道のりですが、法による支配」を訴え、中国に屈せずという意志も持ち続けて欲しいです。
最後までお読み頂きましてありがとうございます。