ゴーン・ショック、試されるアベノミクス第3の矢
日産自動車のカルロス・ゴーン会長逮捕はこれまでのところ、答えよりも多くの疑問を生んでいる。
ひとつの大きな問題は、ゴーン氏の失脚が日本のコーポレートガバナンス(企業統治)改革にとって
何を意味するかだ。安倍晋三首相が打ち出したいわゆる「3本の矢」と呼ばれる経済政策で、企業統治改革は
大規模な金融緩和や財政出動と並ぶ、第3の矢に据えられている。
ゴーン氏の不正疑惑についてはなお、不明な点が多い。日産によると、ゴーン氏は数年にわたり
報酬を過少申告していたほか、会社の資産を不正に流用し、経費を不適切に申告していたという。
ただ、同社は今のところほとんど詳細を明らかにしておらず、事態が早期に解決しそうな兆しはない。
ゴーン氏も疑惑について公にコメントしていない。
この問題は今のところ、日本企業の改革を後退させる要因にしか見えない。改革は目に見えて前進して
いただけに、残念なことだ。日本ではここ数年、企業のバランスシートがスリム化してきた。
株式の持ち合い解消や株主還元の拡大、自己資本利益率の改善といった取り組みも背景にある。
モルガン・スタンレーは、今年の自社株買いと株式配当が過去最高の総額18兆円に達すると見ている。
これは2012年に比べ倍以上の水準だ。
一方、企業統治指針とステュワードシップ・コード(機関投資家向け行動指針)の改定によって、
企業の取締役会を取り巻く規制は強化された。日本取引所グループによると、足元では日本の上場企業
10社につき9社が、企業統治指針の9割超を順守している。15年時点では10社当たり8社の割合だった。
株主が年次総会で提出する決議案の数や、株主に不利な決議案への反対票の数に基づけば、
株主アクティビズム(行動主義)も活発化している。
それでも日産のケースは、企業文化の変革がうわべだけに終わらないようにするために、さらなる
取り組みが必要とされることを示している。日産は社外取締役を3人起用しており、他の日本企業に
比べれば多い方だ。ただ、そのうち1人は、ゴーン氏がトップを兼任してきた仏自動車大手ルノーの
元幹部で、もう1人は元レーシングドライバーだ。仮にゴーン氏が疑惑通りに報酬を過少申告していたので
あれば、日産の監査役や、現最高経営責任者(CEO)である西川廣人氏を含めた他の取締役は、
適切に職務を果たしていたと言えるだろうか。西川氏は過去10年以上、日産の取締役に名を連ねてきた。
安倍首相の第3の矢は確かに放たれている。だが日産が見逃されるとすれば、まだ目標にはほど遠い。
https://jp.wsj.com/articles/SB10970276736632363818404584606523575518900
日産・ルノー合弁でも不正か、ゴーン容疑者巡る調査が波及
2018 年 11 月 21 日 04:59 JST
日産のカルロス・ゴーン会長は19日、金融商品取引法違反の容疑で逮捕された。ゴーン容疑者はルノーの
最高経営責任者(CEO)も兼任してきた。
ルノーはコメントを控えた。日産は現時点でコメントの要請に応じていない。
西川社長によるルノー側への通知は、ゴーン容疑者を巡る日産の内部調査が、日産・ルノー連合にも
波及していることを浮き彫りにしている。
日産は19日、内部調査の結果、ゴーン容疑者が長年にわたり報酬額を実際よりも少なく証券報告書に
記載していたことが発覚したとし、当局に通報したことを明らかにした。また、ゴーン容疑者を日産の
会長職から解任することを提案するとしている。
オランダ当局への提出書類によると、ルノー、日産が共同出資する合弁事業では、ゴーン容疑者が
CEOを務め、両社から取締役を派遣している。合弁は日産・ルノー連合の長期戦略を担当しており、
共同調達や情報技術(IT)サービスなどを担う子会社を傘下に抱えている。
https://jp.wsj.com/articles/SB10609322276864264863904584606662161039116