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【WSJ社説】北朝鮮の体制崩壊、少ない犠牲で促す方法

2017-03-03 18:08:52 | 北朝鮮

【WSJ社説】北朝鮮の体制崩壊、少ない犠牲で促す方法

民間市場が台頭し、国家に対する国民の態度に変化

 韓国に亡命した元北朝鮮公使の太永浩(テ・ヨンホ)氏は25日に開かれた記者会見で、北朝鮮政府のエリート内に不満が高まっており、金正恩朝鮮労働党委員長の支配は長くは続かないだろうとの見方を示した。


 これは、同国の核兵器開発計画への対処で選択肢が限られるトランプ政権にとって朗報だ。


 昨夏まで在英北朝鮮大使館で公使を務めていた太氏は、経済制裁によって北朝鮮は弱体化していると指摘。核兵器開発を凍結するとのお決まりの空約束と引き換えに制裁を解除しないよう忠告した。同氏は以前、北朝鮮が核弾頭を搭載できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の年内開発に向けた取り組みを加速していると警告していた。


 だからと言って、経済制裁だけで体制変更を引き起こせるというわけではない。国連は2013年と昨年の2度にわたって制裁を強化したが、北朝鮮の経済は成長を続けている。その一因は、中国が金政権との通商関係断絶を拒んでいることにある。しかし、もう1つの理由は、北朝鮮国内で制裁を受けていない民間市場が台頭していることにある。


 「カネの達人」と呼ばれる業者が資本を蓄え、地下銀行システムを形成し、建設や採鉱などの大型プロジェクトに資金を提供している。平壌で進行中の住宅建設や小売りプロジェクトは、そうした業者から資金提供を受けている。多くの民間企業が国有企業内で運営されており、それら国有企業は政治的保護を与える見返りに分け前を受け取っている。


 民間企業の成功は国家に対する国民の姿勢に変化をもたらした。国家は無力で残酷とみなされている。国の仕事では生きていけるだけの賃金が得られないため、北朝鮮国民のほとんどが今は民間に頼っている。生活必需品を購入するのも、価格が大幅に安定している民間市場だ。


 こうした状況が国民の間に自立心や体制のルールをかいくぐろうとする意欲を生んでいる。警察はトレーダーからの賄賂に頼っている。黙認されている闇市場では、韓国の最新映画やテレビ番組を収録したDVDやUSBドライブも売られている。資本主義社会である韓国の生活水準を目にするようになった今、国民の間では政権のプロパガンダに対する皮肉な見方が広がっている。


 太氏は北朝鮮を崩壊前のソ連と比較し、韓国と米国に情報拡散を支援するよう促した。「北朝鮮にガソリンをまき散らし、国民に火をつけさせる必要がある」


 こうした努力が、人命の犠牲を最小限に抑えて北朝鮮崩壊を加速するチャンスを生む。韓国統一相は先週、高位職者の亡命が急増していることを認めた。生活向上と過去の犯罪の免責を約束することで、政権エリートの脱北を促すのが有望な策だ。重労働や処刑に対する恐怖心が依然脅しとなって人民の蜂起を防いでいるが、政権幹部を分裂させれば体制交代への道が開ける可能性がある。


 トランプ政権は、体制変更を北朝鮮に関する明確な政策目標に掲げるのが賢明だろう。恐らくカリスマ性のある太氏を亡命政府のスポークスマンとして招き、北朝鮮の奴隷体制を終わらせるという同氏のメッセージを拡散する手段を与えるべきだろう。自身が25日に話した通り、太氏は金体制転覆に新たな使命感を持っている。「私は人生の最初の50年を無駄にした。今は行動を取るべきときだ。私は行動する」