深刻な急性食物アレルギー、米で大幅増
ピーナッツなどのアナフィラキシーによる保険請求は過去10年間で5倍に
ピーナッツをはじめとする食べ物の深刻な急性アレルギー(アナフィラキシー)で保険請求を行った割合が、米国で2007年から
16年に5倍近くに上昇したことが、民間団体の分析でわかった。
アナフィラキシーは、免疫システムが体の複数箇所に同時にアレルギー反応を引き起こす症状で、呼吸困難を伴うケースも多い。
処置が遅れれば死に至る恐れがあり、エピネフリンの投与と緊急治療室への搬送が必要だ。
今回の分析を行った非営利団体FAIRヘルスは、民間医療保険の加入者1億5000万人からの請求対象になった医療処置
(歯科を含む)200億件超のデータベースを保有している。
食物アレルギーについて研究・教育するバージニア州の団体FAREの幹部は「これは非常に重要な研究だ」と話す。
「食物アレルギーが発症する頻度だけでなく、個々人の食物アレルギーの深刻さが劇的に高まったことを明確に示している」という。
欧米ではピーナッツを中心に食物アレルギーが広まり、医療専門家を困惑させている。根本的な解決が望めない状況である
ことから、親や子供へのアドバイスに苦慮しているのだ。複数の研究によると、8%もの子供に食物アレルギーがあり、40%
近くは深刻な症状に見舞われた経験がある。
そうした増加について、マウントサイナイ・アイカーン医科大学(ニューヨーク)の食物アレルギー機関でディレクターを務める
ヒュー・サンプソン氏は、抗生物質の服用増加、新生児の微生物叢(そう)に影響を及ぼす帝王切開の比率拡大、一般環境での
殺菌増加が関係しているかもしれないと話す。これら全てによって変えられた腸管の善玉バクテリアが、免疫システムの働きを
変えている。
医療関係機関では長年、小さな子供にはアレルギーを引き起こしやすいピーナッツなどの食物を与えないように勧めてきたが、
これがアレルギーの増加を助長した可能性があるとサンプソン氏は話す。医療機関は今年アドバイスを変更し、ピーナッツで
湿疹などのアレルギーを発症するリスクが高・中程度の乳児には、生後6か月以内にピーナッツを与えるよう勧めている。
米国では、ピーナッツやナッツが食物アレルギーを引き起こす確率が、過去20年で2倍ないし3倍に高まったとサンプソン氏は
話す。
FAIRヘルスの分析によると、アナフィラキシーを引き起こした最大の原因はピーナッツで、保険請求の26%を占めた。
クルミやピスタチオなどの木の実や種は18%、その次は卵、甲殻類、乳製品だった。33%は原因の食物が不明または
不特定の食物だった。
分析では、都市よりも農村部で請求が増えていることもわかった。サンプソン氏は「驚いたのは、都市部よりも農村地帯で大きな
変化が起きていることだ」と話す。
FAIRヘルスは10月に公表予定の白書で、地理的な偏りや性別、食物アレルギーへの対処にかかる費用など、データをさらに
掘り下げるという。
バージニア州バージニアビーチに住むクリスティーン・オズボーンさん(36)は、アナフィラキシーの恐怖を知っている。
15歳、11歳、5歳の息子がいずれも食物アレルギーを持っているからだ。
次男にはピーナッツ、ナッツ、小麦、乳製品、卵のアレルギーがあり、過去1年に2度アナフィラキシーに見舞われた。
2度目が起きたのは食料品店だった。オズボーンさんは、レジのコンベアベルトにあったアレルギー要因に反応したのでは
ないかと思っている。
オズボーンさんは「息子がぜいぜい言いながら咳をし始め、息ができなくなったため、エピネフリンを投与し、緊急治療室に
車を走らせた」と振り返った。
アレルギー反応は「とても怖い。ローラーコースターのようだ。真剣に準備し、できるだけ事前に準備しようとしているが、
実際に起きた時は、どうなるか全くわからない。ただ緊急治療室に間に合ってほしいと願うだけだ」と話した。