ルポ 海外「臓器売買」の闇 - 読売新聞社会部取材班(20224/04/20)を読んだ。
読んでいて、とても暗い気持ちになった。
「臓器を売れ」などはやくざ映画や韓国B級映画などによく出てくるフレーズと思っていた。現実に臓器売買が行われていることを初めて知った。心臓移植などは、小さな子供がアメリカで手術、数億円の費用がかかるために広く募金を行うニュースなどは見聞きした経験があるが、肝臓や腎臓などをブローカーを通じて実際に売買されていることを知ったのはこの本が初めてである。
へ渡った50代の女性の話から始まる。
インターネットで検索したNPO法人の仲介で、キルギスで腎臓移植を受けることになる。NPO法人が国からの認証を受けていることから信じられると考え、臓器移植を決断する。移植費用は、1850万円。実際に移植するドナーであるウクライナの女性が手にする額は1万5千ドル。200万円程度。ウクライナでは年収の平均が60万程度。大病院とは言えないような病院で手術をうけ、目が覚めるとホテルの一室においやられる。手術の詳細やドナーに関する情報がまるで不透明なまま、日本に帰国。
この事件の発覚により読売新聞社会部の取材が始まる。臓器売買の実態を暴く大規模な調査の開始である。
流れとして、臓器移植を必要とする人々をターゲットにした悪質なビジネスの存在を浮き彫りにし、臓器移植は、命を救う尊い行為である一方で、金銭が絡むことで歪んだ形で利用される危険性があり、悪質な組織に利用される人々がいることを明らかにしている。なかには、8千万円を払った人、帰国後すぐに亡くなった人などの例も明らかにしている。
ただし、悪徳斡旋者の暴露だけでなく、日本での臓器移植の問題点や救える命の解決策に、ジャーナリズムとしてどう向き合うのかについて詳しく考察されている。社会の問題を深く掘り下げ、隠された真実を暴くジャーナリズムの重要性を改めて認識させらる。
まるでミステリー小説のように始まり、読者の好奇心と不安感をあおる構成で、いっきに最後まで読んでしまうルポである。新聞記者のすばらしさと大変さを改めて感じた。
1850万円と自分の余命、比較は無理だが、こういう状況の時、自分は、どう考えるだろうか。1年の余命であれば、有意義な一年にそのお金を使いたいと思うのは、当事者の苦しみを知らない他人事だからなんだろうか。