北九州市の市民センター(公民館の一種)の館長として1年務めた。小中学校の校長経験者が受験して館長になるケースが多く、60歳で退職する校長の天下り先と考えてもおかしくない場所である。給与はそう高くはないが、年収400万程度はあるので、一般の非正規公務員に比べれば高給である。
そこに働く事務職員や夜間職員などは、最低賃金である。時間880~990円程度で働く。月収にして7万円~11万円程度である。これは、いわゆる「年収の壁」を超えないための働き方に適応した被扶養者(第3号被保険者) 、つまり、多くの専業主婦にちょうど良い仕事となっている。旦那のもとで生きていく女性としてはフィットした仕事かもしれないが、経済的に自立した女性の仕事としては賃金が安すぎる。もちろんこれは、非正規公務員の多くに当てはまる現実だが、公務員のなかで非正規公務員が1/3以上、場合により過半数が非正規公務員で、その3/4が女性であると言う事実は、じょうずに低賃金で女性を使っているだけではないかと疑ってしまう。さらに市民センターでの職員は、原則として3~4年程度で一度退職となる。永遠に低賃金が続く。
この本によれば、公務員の数を減らし続けた日本と対照的に、北欧の歴史についての記述がある。以下、「非正規公務員のリアル」上林陽治著からの抜粋、
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『例えば、スウェーデンの場合には労働力不足が深刻化した戦後の高度成長期に労働組合が移民労働者の受け入れを拒絶した結果、民間部門における女性の雇用が拡大し、1980年代初頭にかけて公共 部門の拡大と一層の女性の社会進出がもたらされた。このメカニズムを通じて、元来は女性の社会的地位が特に高くなかったスウェーデンは、現在では世界で最も男女が平等な社会として知られるようにな った」。 また、スウェーデンの経済学者スヴェン・スタインモも、次のように記す。「スウェーデンの女性は、同性の平等という観点と、外国からの移民労働者受け入れの代替としての、国内既存の労働力という観点から、労働市場参加を奨励された。しかし、1950年代や60年代には、スウェーデンが世界最大 の福祉国家を構築することになるとは誰も予測していなかった。だが現実にはそうなったのであり、そこで必要になった職の多くを女性が占めるようになった。1990年代の初頭、政府部門は他のど の産業よりも多くの労働力を雇用している。この事実がもたらす政治的現実として、「政府の縮小」は 女性とその家族に深刻な影響を与える・・」 だから、女性の活躍の場を奪うことにつながる「小さな政府」路線などは取りようもないのである。
これに対し日本は、公務員数を減らし、公共サービスの供給を女性非正規公務員による提供にシフト してきた結果、保育や介護などの公的ケアサービスの供給が不足し、これが女性を家庭に縛りつける原因となって、女性の労働参加を妨げ、社会進出の阻害要因となるという悪循環を繰り返してきた。』
非正規公務員問題を通じて見えてくるものは、この国の姿なのである。
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<海辺のレストランにて>
ちょっとお高い海鮮丼食べました。
おいしかった。久しぶりの贅沢でした。
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