「ルポ特殊詐欺」(田崎 基)2022を読んだ。
オレオレ詐欺や還付金詐欺などは、主に60代以上の高齢者が狙われている。一日あたりの被害額が7700万円にもなるそうである。その騙しのテクニックは、巧妙で、「私は騙されない」と胸を張っても、登場人物が、警察官、裁判所職員、弁護士など多彩で、さらに巧妙に登場するために、息つく暇もないなく現金などが消えていく。
騙され方、騙された高齢者の話などは、TVでもよく見る光景であるが、この本は、「騙す側」からの視点で焦点を当てている。誰が、どのような手順を踏んでいくのか。
「特殊詐欺」とは、被害者に電話をかけるなどして対面することなく信頼させ、口座へ振り込ませたり、現金を騙す犯罪。
「オレオレ詐欺」「預貯金詐欺」「架空料金請求詐欺」「還付金詐欺」「融資保証金詐欺」「金融商品詐欺」「ギャンブル詐欺」「交際あっせん詐欺」「キャッシュカード詐欺盗」などがある。
騙す側の末端、「かけ子」電話をかける、「受け子」現金やキャッシュカードを受け取る、「出し子」ATMなどから現金を引き出す。その上位に主導役がいる。多くの末端は、主導役との面識がなくデータの残らないテレグラムなどを通じて詐欺を実行する。
多くの末端は、10代20代で、「手っ取り早く稼ぎたい」「闇バイトしませんか」「一日3万円、10万円稼げるバイト」に惹かれて、手を出す。最初は、コインロッカーにスマホを入れるだけでバイト代がもらえる。簡単なバイトが続く中、今までのバイトは、詐欺だから、こちらのマニュアル通りに動くように命じられる。断れば、「ネットにさらす」「実家にばらす」「妻子の安全は保障できない」、「やめるなら保証金1000万円を払え」などで追い込まれいく。最悪、強盗に走る。
つまり、「手っ取り早く稼ぎたい」という思いで犯罪に手を染めると、上からだんだんと追い詰められ、凶悪犯へと仕立てあげられていく。入るも地獄、出るも地獄、抜けるも地獄というのが、特殊詐欺の犯行グループの真実である、とこの本で断言している。
さらにこの本では、具体的な犯行の様子や追い詰められる末端の若者たちの例が様々に記載されている。騙されないようにという高齢者向けの方法や解説が豊富に流されているが、若者たちの安易な特殊詐欺への一歩が、どれほどの取り返しのつかない結果になるかをもっと幅広く知らしめる必要を幾度となく説いている。
貧しくなった日本、特に貧しい若者たちが、富める高齢者を収奪する。そして、貧しい若者たちが、さらに暗闇に消えていく日本。虚しい日本の未来が透けて見える。