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主夫の徒然なるままに

「非正規公務員のリアル」

「非正規公務員のリアル」上林陽治著を読んだ

 出来ちゃった結婚で結婚し、すぐさま離婚。看護師で働きながら子育ての両立は時間的に厳しく、持っていた保健師の資格を武器に公務員保健師としての仕事場を探す。公務員削減の時代的流れの中で採用人数は多くて2~3名、1名のみも多い。福岡市や北九州市などの都市では、九大などの一流大学卒が獲得する。町役場、村役場の選考では明らかに地縁または縁故(コネ)で決まることがほとんど。結局、非正規公務員の窓口から保健師のキャリアを作るために働く選択をする。育休正職員の代理として始まり、それから、会計年度任用職員と言う非正規公務員として働くことになる。以降、コロナの影響で、日本中の保健師不足がニュースであふれると、一挙に窓口が広がり、政令指定都市の公務員保健師に就職と言う運を掴む。以降、この政令指定都市の保健師募集は、会計年度任用職員のみの募集が続いている。

 介護施設で働く40代の男性は、2年ほど前までハローワークで働いていた。私も退職した後、ハローワークにお世話になるが、あなたの年齢を考えると、介護資格を取るために学校に通うのが一番の「お得」な方法だと聞かされる。教えるのが仕事であったので、学ぶ側に立ち、勉強するのが楽しみとなり、指示に従った。その介護士の男性に「就職」のことを尋ねるとプロの示唆や提案が次々と示され、なぜ、ハローワークを辞めたのだろうかと思った。基本的にハローワークで働いている職員の7割程度が非正規公務員であるという。ハローワークで親身に働く優しい人々がほとんどパートタイマー的な職種であることに驚く。

「非正規公務員のリアル」の第一章は、
 < ハローワークで求職するハローワーク職員 = 笑えないブラックジョークに支配される現場 >から始まる。あの時の疑問の答えがそこにあった。

 さらに< 誰かが雇止めにあうという修羅場 >の中で働く。安定の職種と人のためになる仕事として選んだ職場が、辞めさせるためのトラップだらけだとは。

 第3章では< 就学援助を受けて教壇に立つ臨時教員 = 教室を覆う格差と貧困 > 第2章の図書館員の非正規雇用にも危機感を持たなければならないけれども、「そうなんだ」と他人事感が強い。しかし、学校の先生が、非正規であり、担任であり、小学校低学年であれば、「そんなばかな」と思う人が多いのではないだろうか。非正規の先生が能力がないというのではない。非正規であるという不安定かつ低収入である先生に我が子を1年間2年間預けたいと思うかどうかだ。非正規の問題は身近である。

 第2部として、地方自治体の問題を浮き彫りにしている。例えば、相談窓口に働く公務員。親身になって相談に乗ってくれることを市民は望むが、その相談は、人生相談ではない。DVに苦しむ女性、子供の虐待、過労死の問題、認知症老人を食い物にする悪徳リフォームの詐欺的商法、宗教法人の名を借りた詐欺、生活保護相談。ある意味生きるか死ぬかの相談である。相談員がほとんど非正規の職員であることに違和感はないのだろうか。また、正規職員であっても3年ごとに配置転換される正規公務員が専門職として相談に乗ってくれるのだろうか。

 第10章 進化する官製ワーキングプア = 止まらない非正規化、拡大する格差
 「同一労働、同一賃金」安倍首相が政府方針として掲げた。

 全国の非正規公務員は、公務員の3分の1を占めるようになった。その非正規公務員の4分の3が女性である。給与水準は、正規公務員の年平均所得550万程度に比べて、非正規では、200万前後、場合により最低賃金、年120万程度にしばられている場合も多い。つまり、正規の3分の1から4分の1の賃金水準であり、さらに安定した長期雇用が保証されていない。安く雇えるから便利なのであろう。正規職員の給与が非正規によって守られているようにも見える。非正規の低所得と不安定の雇用に、子供の虐待やDV問題をまかせられるのか。

 最終章 第18章では、<女性を正規公務員で雇わない国の末路>という章でまとめている。

 保育や介護、生活相談など公的ケア部門から正規公務員としての女性を排除し、それゆえに女性を家庭に縛り付ける悪循環におちいることで、さらに男女格差と経済格差を助長するこの国の末路は..........


 この本を読んで、いままでいくつか不思議に思っていたことがいくつか理解できるようになった。誰がこの国をこのような状態におとしめたのか。今から働こうとする若者に読んでもらいたい一冊である。

 ちなみに北九州市の今月の市政だより12月15日号の「働く人募集」欄によると
『 地籍調査員(会計年度任用職員)定員1名、土木技術補助員(会計年度任用職員)定員1名、子ども・家庭相談員と母子生活指導員(会計年度任用職員)定員若干名、看護師(会計年度任用職員)定員18名、看護師(会計年度任用職員・別勤務地)定員5名、調理員(正規職員)定員1名、特別支援教育専門相談員(会計年度任用職員)定員1名、保健師・助産師・看護師(会計年度任用職員・別勤務地)定員若干名、家庭ごみ収集。運搬の業務員(嘱託員)定員若干名、ひびき灘開発の事務員など(嘱託員)定員若干名、保育士(嘱託員)定員15名、北九州市福祉事業団の職員(正規職員)言語聴覚士・理学療法士・心理士 定員各1名、北九州市福祉協議会の職員(嘱託員)一般事務員・社会福祉士 定員各1名。  ※すべての職種で採用試験アリ 』












 
 多くの雇止めに苦しむ人が増え、官製ワーキングプアが増えるのだろうか。




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