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奈良国立博物館 四天王寺立像を見る②

2023-08-05 12:27:59 | 日記

奈良国立博物館 四天王寺立像を見る②

 大きな宗教施設には決まって美術品が収納され展示されている。バチカンもそうだし高野山も京都の大きなお寺には一杯ありそうである。南山城の小さな寺院にもこうやって一杯ある。南山城のお寺は今でも成功した社長が趣味で骨董を集めるというのと同じ趣がありそうであるが、大寺院はどうしてこんなに美術品を集めるのか?宗教と美術は世界中どこでも切っても切れない関係がありそうである。まさか、うちにはこんなすごいのがありますという宗派間の競争とか参拝客を呼び込むための人寄せパンダみたいなものではなかろう。

 ヒトが都市生活を始めて私有財産の維持管理さらにそれを増やそうとすると常に緊張を強いられるようになる。緊張を解くのは美術と音楽であろう。それから両者を合体して物語も付け加えた劇場もある。「万人の万人に対する闘争状態」を抑えるためにはとりあえず芸術作品の提供が必要だったのではないかと思う。だから西洋の大きな都市の中心には、劇場と大寺院が建っている。わが国の都市にも「万人の万人に対する闘争状態」を抑えるための施設があると考えられるが、東京に劇場美術館は思い当たるが大寺院に相当するものがない。京都に集約して動かさなかったためか。

 自然に囲まれていれば緊張しなくて済むから美術館劇場と大寺院は必要ないだろう。しかしこの案では、高野山や比叡山永平寺などは説明できない。力のある人が無理して作ったと考えられるが、これはこれからずーと考えていきたいことである。

 自然に囲まれることをお断りして「万人の万人に対する闘争状態」の都会の中に住み着いて緊張するのは御免である。南山城の寺院に住めればいいのだが、別当にならないと住むわけに行かないようだからせめて自然または骨董に囲まれる生活がいいのではないか。そういえば、知り合いの骨董集めをしているヒトは年老いてなかなか元気である。都市の中に生活する緊張が人間にはかなりの害があることを昔のヒトは知っていたと思う。