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ショック・ドクトリン (NHKテキスト 100分DE名著テキスト)④ソフト・ドクトリン

2023-08-10 11:07:38 | 日記

ショック・ドクトリン (NHKテキスト 100分DE名著テキスト)④ソフト・ドクトリン

 我が国には、ショックのどさくさ紛れにというのは少なくて甘言を弄して政策を導入するというのが多くないか。ソフト・ドクトリンというべきものである。

近頃かなり緩んできて機能しなくなっているが、受験勉強の競争というのがあった。なかなか厳しいもので最盛期にはこれが原因で心の病に陥る人がいくらも出た。わたしは実例をいくつも見た。受験競争に勝ち残ったヒトは、目の前に出された問題を必死で解こうとする習性を身に付ける。会社経営のヒトにとっては実にありがたい人材である。いや会社の中の課題よりもっと大事なことや問題があるとか、自分の人生には趣味の方が大事とか、仲間と連帯して労働運動が大事とか言われると困ったことが起こるがこの習性を身に付けた部下ほどありがたいものは無かろう。何しろ仲間は敵であるとの構造の中で鍛えられているのである、受験競争の延長上で出世競争に乗り出すであろう。ヒトを競争させるのが組織運営の肝である。(これは古い日本人の気持ちにはしっくりこないものである。)今でも受験競争をあおろうとする人を見かけるが、この人会社経営のヒトのしもべをやってるんじゃないかと疑う。

最近のだと男女雇用機会均等がある。いい話じゃないかと思うかもしれないが、これを会社経営のヒトから見るとかなりアリガタイ制度である。労働マーケットに二倍の人材が供給されるのである。給料は低く抑えられるし、優秀な人材が増えるに決まっている。

 石油消費で地球の気温が上がるという。これも電気自動車をこれから流行らそうという作戦の一環で、電気自動車製造販売の会社経営のヒトにとってはアリガタイ説である。

 およそ社会全体に大変いいことですよという説には、なにか後ろ暗いものがあるようなところがある。しかしだからと言ってそれ全部いけませんという訳にも行かない。ミヒャエル・エンデの「モモ」を読んでいて強く思ったことであるが、「時間貯金」をしなければそれは金利のない世界に住むということであるから物資の製造がおろそかになる。モモ自身も三度の御飯を食べ 服を着 夜のねぐらが必要であったはずだから、金利のない世界すなわち「時間貯金」のない世界は夢物語に過ぎない。程度問題であって、「モモ」に出てくる灰色の男たちは迷惑だからやっつけてしまえと言うわけにはいかないであろう。灰色の男たちの繰り出してくる政策に十分な修正を加えて弊害が小さくなる努力をもっと払う必要がある。できてしまった物はできていない昔に戻せない。しかし立案段階で素人がこの政策にはこういう副作用があると言い出すのは無理だろう。マスコミだけにその責を担わせるのは無理で、与党も含めた各政党が優秀な人材を集めたシンクタンクを作ってオープンな議論をやり政策に修正を施す必要がある。政党助成金はそういったシンクタンクの維持費に充てるべきもので、大声で候補者の名前の連呼に充てるべきではないような気がする。

 

 ナオミ・クラインの原著を読んでいないけど、結論はこういうこともあるので騙されないように注意深くなりましょうということに留まりそうである。