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ショック・ドクトリン ①(NHKテキスト 100分DE名著テキスト原本はナオミ・クライン著)

2023-08-07 22:31:28 | 日記

ショック・ドクトリン ①(NHKテキスト 100分DE名著テキスト原本はナオミ・クライン著)

 ショック・ドクトリンとは、「どさくさ紛れに新自由主義に有利な制度導入作戦」というのが私の作った訳だけどなかなかいいのではないかと思っている。さらに新自由主義とは、「会社は株主のもので社員のものでも社長のものでもましてやお客のものではありません」主義だと思う。日本は戦後長いことケインズ主義でやってきたけど、復興も完成して社会構造も変わってきたから経済政策もいつまでもケインズでもあるまい変えないといけないとなってミルトン・フィリードマン唱えるところの新自由主義が世界中あちこちで導入されてきた、それがこの本で批判されている。

 私は、大抵のヒトもそうだと思うけど新自由主義というと国鉄民営化を第一に思い出す。そしてそれは大成功であったと思う。駅員の態度が良くなったトイレがにおわなくなった乗り心地快適になって乗車賃はそのくらい上がらなかった他にも一杯いいことがありそうである。あれだけ快適で配当金まで出しているのであるから、それまでの国鉄は一体何してたんだ。新自由主義は(知らないところではいけないことが起こってるのかどうか知らないが)大成功で今後いくらでも何回でもやってくれと今でも思っている。私鉄や地下鉄に態度の悪い駅員がいるからJRへ研修に出せばいい。

 しかし著者ナオミ・クラインは公サービスを民営化することによって利益のためにサービスの低下が起こりそれが社会の弱いところに弊害をもたらすという。それはある。JRや民営化された郵政による過疎地でのサービスの切り捨てである。その程度のことなら工夫することでなんとか埋め合わせもつきそうだけど、利益最重視のために取り返しのつかない弊害が他にも一杯あるという。例えば儲からない種子の保存をやめるために、種子の多様性を守れなくなるなどである。お役人がサービスすると碌なことがない。(学校の食堂を思い出させばいい)しかし何もかも民営がすぎるとこれまた碌なことがない。ちょうどいい塩梅のところに両者を置いておく、これが与野党伯仲していることの値打ちであろう。最近野党に存在感がなくなったことがいけないことの原因であろう。

 しかしもっといけないことは、新自由主義者は自己の利益の最大化を図ることにあるという。わたしは、利益の最大化を図ってどこが悪いと思う。昼ご飯を食べる前にメニュウを必死で見るのは一番コスパが良いものを選びたい(すなわち自己の利益の最大化を狙う)からである。少しでも将来有望なところへ就職したいのも自己の利益の最大化である。しかし、確かにいけないこともある。

 自分の会社の利益の最適化を図って労働者を派遣にした。終身雇用をやめにすると社会福祉を必要とする人が多くなる。新自由主義者はシブチンであるからその福祉費用に見合う税金を自分では負担しないで、中間層の税金をあげることで乗り切ろうとする。(新自由主義者は政治を左右する力を持っている)そうなると今度は中間層が没落して国中が貧乏になる。そんなことすると、だんだん新自由主義者自身の持っている会社も儲からなくなるはずなのにそれには無頓着である。(新自由主義者は案外先を見通す力が弱い)これを「いまだけカネだけ自分だけ」と表現されている。なかなかいい表現である。

 

「富者は疾走して多く財を積むも、そのことごとく用いるを得ず。」

これをおふだにして新自由主義者の顔に張り付けてやりたいものである。

決して富者になろうとして疾走したけどなれそうにない人間が嫉妬心から言っているのではない。

 

ついでに国鉄も郵便局もできるときは、多くのヒトが土地や財産を寄付して始まったところがある。寄付した人の志をあまりにないがしろにしていないかと思うところがあるがそういうウェットな話はこの本ではしていない。