本の感想

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映画 perfect days

2024-01-02 21:17:49 | 日記

映画 perfect days

 日本映画ながらヨーロッパ風の作り方をしている。フランスならもっと人間に対して皮肉な見方をするはずで、木を大事にする趣旨もあるからドイツ風かもしれない。ハリウッド映画の資本こんだけつぎ込んだんだから回収させてくれよなというあざとさや、観客の方もこんだけの見世物をこの値段で見れて幸せとかいうケチ臭い根性とは一切無縁の、淡々としているけど観客の心の中に眠っている何ものかを掘り起こすいい映画である。日本でも本物の映画作れることをまざまざと見た。

主役は殆どセリフなしで、音と映像だけでその立場状況人柄までを説明する。日本のお能に似た演出でこれは見事である。見せ場は最後の(車内で)主人公の笑いがこみあげてくるところにあって、主役俳優のここの演技を見せたくて長い前置きがある。その前置きはこの主役の笑いのこみあげに、効果を発揮している。われわれが布袋さん戎さんを拝むのは、こんな幸せそうな顔をしたいからであるが、布袋さん戎さんがなぜ幸せそうなのかは知らない。その幸せの中身を知ると布袋さん戎さんの有難味がきっと増すであろう。その(といっても主人公のであるが)幸せの中身を説明する映画である。これあってこそ観客は幸せな気分を共有できるのである。普通はこの程度のことでは、(少なくともわたしは)幸せを感じない。しかし、長い前置きのおかげでいい感じに共有できた。

主役の演技は凄いものがあるが、役作りの時間が無かったんだろう。もう少し疲れた感じと出さないと現実感が出ない。一番いけないのは、脇役のミスキャストまたは練習不足である。もっと時間とおカネをかけて脇役を鍛えないといけない。小学校の学芸会にプロの主役一人だけが出演しているちぐはぐなところがある。

むかしアランドロンの映画では脇役が皆 主役より演技が上手でかつ存在感をうまく調節して主役を喰わない。そういう作り方をしてほしかった。