「松本清張」の長篇ミステリ小説『新装版 遠い接近』を読みました。
『表象詩人』、『溺れ谷』に続き、「松本清張」作品です。
-----story-------------
過去の徴兵検査で第二乙種不合格、そして三十二歳となった今、兵隊にとられることはないと確信していた「山尾」に、召集令状が届く。
この一枚の紙が、「山尾」のみならず家族の運命までも大きく狂わすことに。
古兵の制裁にも耐え復員したが、すべてを失った「山尾」は、召集令状を作成した区役所兵事係への復讐を誓う。
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「朝日新聞社」発行の週刊誌『週刊朝日』に『黒の図説』として発表されたシリーズの第9話にあたり、1971年(昭和46年)8月6日号から1972年(昭和47年)4月21日号に連載された作品、、、
「松本清張」の軍隊経験が織り込まれており、旧日本軍における召集・軍隊生活や終戦後の闇市の様子を交えつつ、戦争で家族を失った者の悲しみと完全犯罪計画が描かれた作品でした。
1944年(昭和19年)、33歳の色版画工の「山尾信治」のもとに突然召集令状が来た… 身体検査に赴き、仕事が忙しく教育教練にあまり出席していなかったことを話すと、在郷軍人の一人「白石」から「ハンドウを回されたな」と言われる、、、
佐倉第五十七聯隊第六中隊第二班に入隊後、私的制裁に遭った補充兵が同じ言葉を呟くのを聞いた「山尾」は、その意味が「仕返し・腹いせ・懲らしめ」であると気づき、中年の自分が召集され朝鮮半島に送られたのは教練に欠席がちだったことへの嫌がらせからだったのではないかと思い始める… しかし、「山尾」にそのような意思を働かせた者は、具体的には誰なのか?
軍隊生活を送りながら、「山尾」はひそかに調査を開始する… 手段を尽くした探索の末、「犯人」を突きとめたと思った「山尾」、、、
やがて終戦を迎える… 帰国すると家族は原爆で全滅していた! 「山尾」は、自分を召集し、それにより家族の運命を狂わせた兵事係「河島佐一郎」と、入隊後に私的制裁を加えた古兵の「安川哲次」への復讐を誓う。
その企ては成功するのか!? 復員後、「山尾」は「安川」と出会い、「安川」のヤミ屋を手伝うことになる、そして、偶然にも「河島」の消息を知ることになり、二人を利用した完全犯罪を計画する、、、
二人の死体を発見した警察は、当初は「山尾」の目論見通り、「河島」が「安川」を殺害し、「河島」は自殺した… と推理するが、「河島」の自殺方法や遺書に不審な点があることに気付き、「山尾」に疑いの目を向ける。
前半~中盤は、徴兵され衛生兵として朝鮮半島に出征した「山尾」の軍隊内での辛い体験や人間模様、そして、焦燥や苦悩、憎悪等、犯行に至る背景が描かれており、この部分で、どんどん「山尾」に感情移入していきましたね… そんな下地ができたあと、終盤に突入、、、
「山尾」が完全犯罪を計画・実行するあたりからは、一転してミステリ色が強い展開になりますが… 気持ちは「山尾」とシンクロしているので、犯罪を犯す側の立場になり、殺害は成功するのか?警察の捜査は誤魔化せるのか? と、ハラハラドキドキしながら、一気に読み進めました。
バランス的に、前半~中盤部分は、もう少し短い方が読みやすいかな… と思いましたが、あれだけのボリュームがあったからこそ、「山尾」と気持ちをシンクロできたのかもしれませんね、、、
「松本清張」らしい作品で愉しめました。
以下、主な登場人物です。
「山尾信治」
神田小川町在住の自営色版画工。
妻と三人の子に加え、老いた両親を扶養する。
「山尾良子」
山尾の妻。人付き合いがうまく近所から好かれている。
「山尾英太郎」
山尾の父。広島に従弟の太一がいる。
「白石」
町内の酒屋。教育訓練の助教で予備陸軍伍長。
「安川哲次」
山尾と同じ班内の万年一等兵。
召集兵苛めを鬱積の捌け口にしている。
「山崎英夫」
山尾と同じ班の銀行員。優等生的な振る舞い。
「森田」
龍山基地医務室内の軍医。法医学の本を所有する。
「細井」
上等兵で釜山市役所の吏員。
「河島佐一郎」
山尾の住む地域の区役所の兵事係長。妻は小学校の教員。
「与田喜十郎」
雑誌「真実界」編集長。
『表象詩人』、『溺れ谷』に続き、「松本清張」作品です。
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過去の徴兵検査で第二乙種不合格、そして三十二歳となった今、兵隊にとられることはないと確信していた「山尾」に、召集令状が届く。
この一枚の紙が、「山尾」のみならず家族の運命までも大きく狂わすことに。
古兵の制裁にも耐え復員したが、すべてを失った「山尾」は、召集令状を作成した区役所兵事係への復讐を誓う。
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「朝日新聞社」発行の週刊誌『週刊朝日』に『黒の図説』として発表されたシリーズの第9話にあたり、1971年(昭和46年)8月6日号から1972年(昭和47年)4月21日号に連載された作品、、、
「松本清張」の軍隊経験が織り込まれており、旧日本軍における召集・軍隊生活や終戦後の闇市の様子を交えつつ、戦争で家族を失った者の悲しみと完全犯罪計画が描かれた作品でした。
1944年(昭和19年)、33歳の色版画工の「山尾信治」のもとに突然召集令状が来た… 身体検査に赴き、仕事が忙しく教育教練にあまり出席していなかったことを話すと、在郷軍人の一人「白石」から「ハンドウを回されたな」と言われる、、、
佐倉第五十七聯隊第六中隊第二班に入隊後、私的制裁に遭った補充兵が同じ言葉を呟くのを聞いた「山尾」は、その意味が「仕返し・腹いせ・懲らしめ」であると気づき、中年の自分が召集され朝鮮半島に送られたのは教練に欠席がちだったことへの嫌がらせからだったのではないかと思い始める… しかし、「山尾」にそのような意思を働かせた者は、具体的には誰なのか?
軍隊生活を送りながら、「山尾」はひそかに調査を開始する… 手段を尽くした探索の末、「犯人」を突きとめたと思った「山尾」、、、
やがて終戦を迎える… 帰国すると家族は原爆で全滅していた! 「山尾」は、自分を召集し、それにより家族の運命を狂わせた兵事係「河島佐一郎」と、入隊後に私的制裁を加えた古兵の「安川哲次」への復讐を誓う。
その企ては成功するのか!? 復員後、「山尾」は「安川」と出会い、「安川」のヤミ屋を手伝うことになる、そして、偶然にも「河島」の消息を知ることになり、二人を利用した完全犯罪を計画する、、、
二人の死体を発見した警察は、当初は「山尾」の目論見通り、「河島」が「安川」を殺害し、「河島」は自殺した… と推理するが、「河島」の自殺方法や遺書に不審な点があることに気付き、「山尾」に疑いの目を向ける。
前半~中盤は、徴兵され衛生兵として朝鮮半島に出征した「山尾」の軍隊内での辛い体験や人間模様、そして、焦燥や苦悩、憎悪等、犯行に至る背景が描かれており、この部分で、どんどん「山尾」に感情移入していきましたね… そんな下地ができたあと、終盤に突入、、、
「山尾」が完全犯罪を計画・実行するあたりからは、一転してミステリ色が強い展開になりますが… 気持ちは「山尾」とシンクロしているので、犯罪を犯す側の立場になり、殺害は成功するのか?警察の捜査は誤魔化せるのか? と、ハラハラドキドキしながら、一気に読み進めました。
バランス的に、前半~中盤部分は、もう少し短い方が読みやすいかな… と思いましたが、あれだけのボリュームがあったからこそ、「山尾」と気持ちをシンクロできたのかもしれませんね、、、
「松本清張」らしい作品で愉しめました。
以下、主な登場人物です。
「山尾信治」
神田小川町在住の自営色版画工。
妻と三人の子に加え、老いた両親を扶養する。
「山尾良子」
山尾の妻。人付き合いがうまく近所から好かれている。
「山尾英太郎」
山尾の父。広島に従弟の太一がいる。
「白石」
町内の酒屋。教育訓練の助教で予備陸軍伍長。
「安川哲次」
山尾と同じ班内の万年一等兵。
召集兵苛めを鬱積の捌け口にしている。
「山崎英夫」
山尾と同じ班の銀行員。優等生的な振る舞い。
「森田」
龍山基地医務室内の軍医。法医学の本を所有する。
「細井」
上等兵で釜山市役所の吏員。
「河島佐一郎」
山尾の住む地域の区役所の兵事係長。妻は小学校の教員。
「与田喜十郎」
雑誌「真実界」編集長。
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