「大岡昇平」の戦争小説集『靴の話―大岡昇平戦争小説集』を読みました。
『野火』に続き「大岡昇平」の戦争小説です。
-----story-------------
太平洋戦争中、フィリピンの山中でアメリカ兵を目前にした私が「射たなかった」のはなぜだったのか。
自らの体験を精緻で徹底的な自己検証で追う『捉まるまで』。
死んだ戦友の靴をはかざるをえない事実を見すえる表題作『靴の話』など6編を収録。
戦争の中での個人とは何か。
戦場における人間の可能性を問う戦争小説集。
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自らの体験が色濃く反映された出征、戦闘、捕虜生活が描かれた作品なので、小説というよりは、戦記や戦争体験記という感じでノンフィクション作品に近い短篇集でしたね、、、
以下の6篇が収録されており、語注や解説等も充実した作品でした。
■出征
■暗号手
■襲撃
■歩哨の眼について
■捉まるまで(原題:俘虜記)
■靴の話(原題:靴と食慾)
■語注 池内輝雄
■解説…時代を見つめる者 池内輝雄
■鑑賞…優れた小説を「鑑賞」してはいけない 村上龍
■年譜 池内敏雄
『出征』は、中年(30歳代)の「私」が兵士として招集され、敗戦の色濃いフィリピンに輸送されるまでのことを描いた作品、、、
無謀な戦争に巻き込まれ、抵抗もままならない一市民の姿が浮き彫りにされる物語でした。
『暗号手』は、フィリピン・ミンドロ島南端のサンホセで、中隊の暗号手として勤務する「私」と、もう一人の暗号手となった「中山」という兵士との関係を描いた作品、、、
「中山」は暗号手となったことをきっかけに上官たちに取り入り、自身の地位を上げることに成功… 「私」との関係は逆転してしまうが、それが「中山」の死を早めることになったという皮肉な物語でした。
『襲撃』は、一人の衛生兵がゲリラに襲われて重傷を負い、「天皇陛下万歳」と言って死んだことを描いた作品、、、
「天皇陛下万歳」は、日本人教育ですり込まれた「型」にすぎないと解説しつつ、普段いばっている軍曹が、襲撃を受けた際に真っ先に逃げがしてしまったという、前線での格好悪い実態が描かれた物語でした。
『歩哨の眼について』は、敵の動きを見張っている歩哨のことを描いた作品、、、
エッセイ風の短篇で、歩哨の風景の見え方や倫理状態を描きつつ、力ない一個人と進むべき道を誤った国家・社会が描かれた物語でした。
『捉まるまで』は、昭和19年8月以来ミンドロ島西部南部の警備隊にいた私が、米軍の捕虜となるまでを描いた作品、、、
マラリアに倒れ、部隊から置き去りにされ、山中で単独行動をせざるを得なくなった「私」は、遂にアメリカ兵を目にするが、銃を射つことはなかった… 自殺への思いと、喉の渇きとの戦い… そして、不発だった手榴弾… 知らず知らずのうちに運命が生存へ転がっていく姿を描いた物語でした。
『靴の話』は、粗悪品のゴム底鮫皮の軍靴に関するエピソードから、欠乏(必要)のあるところだけに事実が生じることを描いた作品、、、
マラリアで死んだ同年兵「松本」の持っていた新品の軍靴を、彼が死んでから手に入れることに成功するが、私もマラリアで倒れてしまい、軍靴が今度は同じ小隊の仲間に狙われていることに気付く… というブラックユーモアたっぷりの物語でした。
派手さはないですが、心に染み入るような作品ばかりでした、、、
戦争という大きなうねりの中で、もがいても抵抗できず、飲み込まれていく一市民の気持ち… 生とは、死とは… 考えさせられましたね。
『野火』に続き「大岡昇平」の戦争小説です。
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太平洋戦争中、フィリピンの山中でアメリカ兵を目前にした私が「射たなかった」のはなぜだったのか。
自らの体験を精緻で徹底的な自己検証で追う『捉まるまで』。
死んだ戦友の靴をはかざるをえない事実を見すえる表題作『靴の話』など6編を収録。
戦争の中での個人とは何か。
戦場における人間の可能性を問う戦争小説集。
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自らの体験が色濃く反映された出征、戦闘、捕虜生活が描かれた作品なので、小説というよりは、戦記や戦争体験記という感じでノンフィクション作品に近い短篇集でしたね、、、
以下の6篇が収録されており、語注や解説等も充実した作品でした。
■出征
■暗号手
■襲撃
■歩哨の眼について
■捉まるまで(原題:俘虜記)
■靴の話(原題:靴と食慾)
■語注 池内輝雄
■解説…時代を見つめる者 池内輝雄
■鑑賞…優れた小説を「鑑賞」してはいけない 村上龍
■年譜 池内敏雄
『出征』は、中年(30歳代)の「私」が兵士として招集され、敗戦の色濃いフィリピンに輸送されるまでのことを描いた作品、、、
無謀な戦争に巻き込まれ、抵抗もままならない一市民の姿が浮き彫りにされる物語でした。
『暗号手』は、フィリピン・ミンドロ島南端のサンホセで、中隊の暗号手として勤務する「私」と、もう一人の暗号手となった「中山」という兵士との関係を描いた作品、、、
「中山」は暗号手となったことをきっかけに上官たちに取り入り、自身の地位を上げることに成功… 「私」との関係は逆転してしまうが、それが「中山」の死を早めることになったという皮肉な物語でした。
『襲撃』は、一人の衛生兵がゲリラに襲われて重傷を負い、「天皇陛下万歳」と言って死んだことを描いた作品、、、
「天皇陛下万歳」は、日本人教育ですり込まれた「型」にすぎないと解説しつつ、普段いばっている軍曹が、襲撃を受けた際に真っ先に逃げがしてしまったという、前線での格好悪い実態が描かれた物語でした。
『歩哨の眼について』は、敵の動きを見張っている歩哨のことを描いた作品、、、
エッセイ風の短篇で、歩哨の風景の見え方や倫理状態を描きつつ、力ない一個人と進むべき道を誤った国家・社会が描かれた物語でした。
『捉まるまで』は、昭和19年8月以来ミンドロ島西部南部の警備隊にいた私が、米軍の捕虜となるまでを描いた作品、、、
マラリアに倒れ、部隊から置き去りにされ、山中で単独行動をせざるを得なくなった「私」は、遂にアメリカ兵を目にするが、銃を射つことはなかった… 自殺への思いと、喉の渇きとの戦い… そして、不発だった手榴弾… 知らず知らずのうちに運命が生存へ転がっていく姿を描いた物語でした。
『靴の話』は、粗悪品のゴム底鮫皮の軍靴に関するエピソードから、欠乏(必要)のあるところだけに事実が生じることを描いた作品、、、
マラリアで死んだ同年兵「松本」の持っていた新品の軍靴を、彼が死んでから手に入れることに成功するが、私もマラリアで倒れてしまい、軍靴が今度は同じ小隊の仲間に狙われていることに気付く… というブラックユーモアたっぷりの物語でした。
派手さはないですが、心に染み入るような作品ばかりでした、、、
戦争という大きなうねりの中で、もがいても抵抗できず、飲み込まれていく一市民の気持ち… 生とは、死とは… 考えさせられましたね。
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