「池井戸潤」が銀行の臨店指導グループの活躍を描いた痛快連作集『花咲舞が黙ってない』を読みました。
「池井戸潤」作品は、昨年11月に読んだ『民王』以来ですね。
-----story-------------
あの人気キャラクターの最新作 。
『読売新聞』好評連載がいきなり文庫に!
東京第一銀行の跳ねっ返り行員「花咲舞」は、己の信じる正義のもと、空気は読まず、時にブチ切れながら、問題支店や勘違い行員の指導に奮闘している。
そんな中、ひょんなことから「組織の秘密」というパンドラの箱を開けてしまい……このままでは我が行はダメになる!
歯を食いしばり行内の闇に切り込む、痛快連作短篇
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日本テレビ系ドラマ『花咲舞が黙ってない』放送終了後の2016年(平成28年)1月17日から10月10日まで『読売新聞』朝刊に連載された作品、、、
本作でもヒロイン「花咲舞」のパワフルさは健在… 仕事に対する真摯な姿勢は相変わらずかっこよく、彼女の快進撃にぐいぐい引き込まれ、毎日仕事を頑張っている会社員をはじめ、あらゆる人に元気を与えてくれるお仕事小説です。
■第一話 たそがれ研修
■第二話 汚れた水に棲む魚
■第三話 湯けむりの攻防
■第四話 暴走
■第五話 神保町奇譚
■第六話 エリア51
■第七話 小さき者の戦い
■解説 ―花咲舞の物語、東京第一銀行の物語― 村上貴史
『たそがれ研修』は、取引先の飲食店レッドデリの内部情報が、競合他社の喰らうど亭に漏洩した事件を巡る物語、、、
「花咲」と「相馬」が事件を追うと、業務統括部の副部長「畑中康晴」に辿り着き、情報が漏れた理由が明らかになる… 数十年、必死に銀行のために働いてきた管理者が、銀行に裏切られたと感じたときの気持ちはわからなくもないけど、共感はできないな。
タイトルの『たそがれ研修』は、シニア管理者向けの、銀行に頼らず第二の人生を切り拓くことを求められる研修です… 確かにモチベーション下がるかもしれませんね。
『汚れた水に棲む魚』は、新橋支店の主要取引企業アクアエイジとの小切手の資金化問題を巡る物語、、、
「花咲」と「相馬」は、アクアエイジの銀行口座の不自然な資金の流れに疑問を持ち、反社会的勢力のマネーロンダリングに使われていることを明らかにする… でも、その反社会的勢力をアクアエイジに紹介したのは、元新橋支店の支店長だった。
清濁併せ呑むと言えば聞こえがイイですが… やはり不正は許せないですね。
『湯けむりの攻防』は、別府の老舗旅館白鷺亭への融資問題を巡る物語、、、
黒川温泉や湯布院などのライバルとの競争力をつけるため、白鷺亭は別府温泉の町おこしを目的に10億円の追加融資をメインバンクの東京第一銀行にお願いするが、なかなか融資が決まらず、「花咲」と「相馬」は打開に向けた力添えを依頼される… そんなタイミングで東京第一銀行と産業中央銀行との合併を突如発表され、同じ頃、産業中央銀行が白鷺亭へ融資することがすんなりと決まる。
その陰には、産業中央銀行の若手ホープ「半沢直樹」の巧妙な策略が… これにより合併後の別府支店統廃合では、産業中央銀行の方が優位なポジションに立つことができたのだ、、、
うーん、ここで「半沢直樹」が登場するとは… 驚きましたね。
『暴走』は、四谷支店で住宅ローンを断った人物が暴走事故を起こした事件から企業不正が明るみになる物語、、、
ミキサー車運転手の「富樫研也」は、東京第一銀行に住宅ローンを断られた後、世の中への不満を理由に新宿駅東口繁華街で三十人超の重軽傷者を出す暴走事故を起こす… その頃、四谷支店の主要取引先で150億円の新規融資をした直後だった舟町ホームの手抜き工事による不正が発覚し、融資が回収不能となるが、東京第一銀行と同じく舟町ホームに融資をしていた産業中央銀行は、不正が発覚する直前に150億円の融資を全額引き上げていた。
「花咲」と「相馬」は、この謎を調べるうちに、暴走事故と舟町ホームとの繋がりが明らかになっていく… 自らの成果のために不都合な真実を隠そうとするなんて、許せないですねぇ。
『神保町奇譚』は、寿司屋で隣り合わせた年配の女性の亡くなった娘さんの通帳のお金が数千万円単位で動いていたという事件を巡る物語、、、
娘さんは、医療系のベンチャー企業バイオテクスに勤務していたが、娘さんの死後に倒産… 社長の「平岡秀紀」は東京大学で研究をしていた優秀な人物だったが、倒産後、行方をくらましていた。
「花咲」は意外なところから「平岡」がバイオブレインという医療系のベンチャー企業を立ち上げ、上場予定だということを知る… 他の作品とは趣が異なり、心が温まるような作品で、本作品の中で一服の清涼剤のような役割を担っていましたね。
『エリア51』と『小さき者の戦い』は、二話で本書全体の4割程度を占める内容で、大手電機会社の東東デンキが巨額の粉飾決算をしていたとスクープが出た事件を発端に、東京第一銀行内に潜む闇が暴かれる物語、、、
東東デンキへの融資を担当していた東京第一銀行の第3営業部は、東東デンキの不適切会計を事前に知っていたが、問題を黙認するだけでなく、東東デンキに対し隠蔽を指示… 「花咲」と「相馬」は真相に近付くが、彼等の報告書は社内の圧力により葬られる。
いずれ隠蔽工作が暴かれることくらいは想定できた第3営業部が、なぜそのような判断をしたのか… 異動した(左遷された)「相馬」が融資課長を務める希望ヶ丘派出所に臨店指導に赴いた「花咲」は、クセのある所長「小安」が直々に取り扱っていたシマタニ不動産への3億円の運転資金融資が東東デンキの株式投資に使われ、インサイダー取引により巨額の利益を生み、その金は東京第一銀行会長「高橋」が懇意にしている民政党幹事長「石垣信之介代議士」の政治資金となっていたことに気付く、、、
真実を知った「花咲」は再度報告書を仕上げ… 『湯けむりの攻防』に続き、産業中央銀行の若手ホープ「半沢直樹」が登場し、事件の解決に一役買うという展開でした。
物語のラストを飾るに相応しい重みのある二篇でしたね… 物語のテンポも良いし、個性ある登場人物一人ひとりが存在感があるし、それに「花咲舞」の啖呵の痛快さが加わり、愉しく読める一品でした、、、
続篇を期待したいですね。
以下、主な登場人物です。
「花咲 舞(はなさき まい)」
東京第一銀行 事務部本臨店指導グループ。相馬健は代々木支店時代の上司。
「相馬 健(そうま けん)」
東京第一銀行 事務部臨店指導グループ調査役。
優秀な融資係だったが、課長代理として栄転した赤坂支店で当時の副支店長と衝突し出世コースから外れた。
代々木支店時代の部下が花咲舞だった。
優秀なテラー(窓口担当者)で、代々木支店時代は人気の花形テラーだった。
「芝崎 太一(しばざき たいち)」
東京第一銀行 事務部次長。
「辛島 伸二朗(からしま しんじろう)」
東京第一銀行 事務部長。
「昇仙峡 玲子(しょうせんきょう れいこ)」
東京第一銀行 企画部特命担当調査役。
「紀本 平八(きもと へいはち)」
東京第一銀行 企画部長。
「吉原 俊二(よしわら しゅんじ)」
東京第一銀行 営業第三部長。
「菊川 春夫(きくかわ はるお)」
東京第一銀行 専務取締役。
「羽田 重康(はた しげやす)」
東京第一銀行 副頭取。
「牧野 治(まきの おさむ)」
東京第一銀行 頭取。
「池井戸潤」作品は、昨年11月に読んだ『民王』以来ですね。
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あの人気キャラクターの最新作 。
『読売新聞』好評連載がいきなり文庫に!
東京第一銀行の跳ねっ返り行員「花咲舞」は、己の信じる正義のもと、空気は読まず、時にブチ切れながら、問題支店や勘違い行員の指導に奮闘している。
そんな中、ひょんなことから「組織の秘密」というパンドラの箱を開けてしまい……このままでは我が行はダメになる!
歯を食いしばり行内の闇に切り込む、痛快連作短篇
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日本テレビ系ドラマ『花咲舞が黙ってない』放送終了後の2016年(平成28年)1月17日から10月10日まで『読売新聞』朝刊に連載された作品、、、
本作でもヒロイン「花咲舞」のパワフルさは健在… 仕事に対する真摯な姿勢は相変わらずかっこよく、彼女の快進撃にぐいぐい引き込まれ、毎日仕事を頑張っている会社員をはじめ、あらゆる人に元気を与えてくれるお仕事小説です。
■第一話 たそがれ研修
■第二話 汚れた水に棲む魚
■第三話 湯けむりの攻防
■第四話 暴走
■第五話 神保町奇譚
■第六話 エリア51
■第七話 小さき者の戦い
■解説 ―花咲舞の物語、東京第一銀行の物語― 村上貴史
『たそがれ研修』は、取引先の飲食店レッドデリの内部情報が、競合他社の喰らうど亭に漏洩した事件を巡る物語、、、
「花咲」と「相馬」が事件を追うと、業務統括部の副部長「畑中康晴」に辿り着き、情報が漏れた理由が明らかになる… 数十年、必死に銀行のために働いてきた管理者が、銀行に裏切られたと感じたときの気持ちはわからなくもないけど、共感はできないな。
タイトルの『たそがれ研修』は、シニア管理者向けの、銀行に頼らず第二の人生を切り拓くことを求められる研修です… 確かにモチベーション下がるかもしれませんね。
『汚れた水に棲む魚』は、新橋支店の主要取引企業アクアエイジとの小切手の資金化問題を巡る物語、、、
「花咲」と「相馬」は、アクアエイジの銀行口座の不自然な資金の流れに疑問を持ち、反社会的勢力のマネーロンダリングに使われていることを明らかにする… でも、その反社会的勢力をアクアエイジに紹介したのは、元新橋支店の支店長だった。
清濁併せ呑むと言えば聞こえがイイですが… やはり不正は許せないですね。
『湯けむりの攻防』は、別府の老舗旅館白鷺亭への融資問題を巡る物語、、、
黒川温泉や湯布院などのライバルとの競争力をつけるため、白鷺亭は別府温泉の町おこしを目的に10億円の追加融資をメインバンクの東京第一銀行にお願いするが、なかなか融資が決まらず、「花咲」と「相馬」は打開に向けた力添えを依頼される… そんなタイミングで東京第一銀行と産業中央銀行との合併を突如発表され、同じ頃、産業中央銀行が白鷺亭へ融資することがすんなりと決まる。
その陰には、産業中央銀行の若手ホープ「半沢直樹」の巧妙な策略が… これにより合併後の別府支店統廃合では、産業中央銀行の方が優位なポジションに立つことができたのだ、、、
うーん、ここで「半沢直樹」が登場するとは… 驚きましたね。
『暴走』は、四谷支店で住宅ローンを断った人物が暴走事故を起こした事件から企業不正が明るみになる物語、、、
ミキサー車運転手の「富樫研也」は、東京第一銀行に住宅ローンを断られた後、世の中への不満を理由に新宿駅東口繁華街で三十人超の重軽傷者を出す暴走事故を起こす… その頃、四谷支店の主要取引先で150億円の新規融資をした直後だった舟町ホームの手抜き工事による不正が発覚し、融資が回収不能となるが、東京第一銀行と同じく舟町ホームに融資をしていた産業中央銀行は、不正が発覚する直前に150億円の融資を全額引き上げていた。
「花咲」と「相馬」は、この謎を調べるうちに、暴走事故と舟町ホームとの繋がりが明らかになっていく… 自らの成果のために不都合な真実を隠そうとするなんて、許せないですねぇ。
『神保町奇譚』は、寿司屋で隣り合わせた年配の女性の亡くなった娘さんの通帳のお金が数千万円単位で動いていたという事件を巡る物語、、、
娘さんは、医療系のベンチャー企業バイオテクスに勤務していたが、娘さんの死後に倒産… 社長の「平岡秀紀」は東京大学で研究をしていた優秀な人物だったが、倒産後、行方をくらましていた。
「花咲」は意外なところから「平岡」がバイオブレインという医療系のベンチャー企業を立ち上げ、上場予定だということを知る… 他の作品とは趣が異なり、心が温まるような作品で、本作品の中で一服の清涼剤のような役割を担っていましたね。
『エリア51』と『小さき者の戦い』は、二話で本書全体の4割程度を占める内容で、大手電機会社の東東デンキが巨額の粉飾決算をしていたとスクープが出た事件を発端に、東京第一銀行内に潜む闇が暴かれる物語、、、
東東デンキへの融資を担当していた東京第一銀行の第3営業部は、東東デンキの不適切会計を事前に知っていたが、問題を黙認するだけでなく、東東デンキに対し隠蔽を指示… 「花咲」と「相馬」は真相に近付くが、彼等の報告書は社内の圧力により葬られる。
いずれ隠蔽工作が暴かれることくらいは想定できた第3営業部が、なぜそのような判断をしたのか… 異動した(左遷された)「相馬」が融資課長を務める希望ヶ丘派出所に臨店指導に赴いた「花咲」は、クセのある所長「小安」が直々に取り扱っていたシマタニ不動産への3億円の運転資金融資が東東デンキの株式投資に使われ、インサイダー取引により巨額の利益を生み、その金は東京第一銀行会長「高橋」が懇意にしている民政党幹事長「石垣信之介代議士」の政治資金となっていたことに気付く、、、
真実を知った「花咲」は再度報告書を仕上げ… 『湯けむりの攻防』に続き、産業中央銀行の若手ホープ「半沢直樹」が登場し、事件の解決に一役買うという展開でした。
物語のラストを飾るに相応しい重みのある二篇でしたね… 物語のテンポも良いし、個性ある登場人物一人ひとりが存在感があるし、それに「花咲舞」の啖呵の痛快さが加わり、愉しく読める一品でした、、、
続篇を期待したいですね。
以下、主な登場人物です。
「花咲 舞(はなさき まい)」
東京第一銀行 事務部本臨店指導グループ。相馬健は代々木支店時代の上司。
「相馬 健(そうま けん)」
東京第一銀行 事務部臨店指導グループ調査役。
優秀な融資係だったが、課長代理として栄転した赤坂支店で当時の副支店長と衝突し出世コースから外れた。
代々木支店時代の部下が花咲舞だった。
優秀なテラー(窓口担当者)で、代々木支店時代は人気の花形テラーだった。
「芝崎 太一(しばざき たいち)」
東京第一銀行 事務部次長。
「辛島 伸二朗(からしま しんじろう)」
東京第一銀行 事務部長。
「昇仙峡 玲子(しょうせんきょう れいこ)」
東京第一銀行 企画部特命担当調査役。
「紀本 平八(きもと へいはち)」
東京第一銀行 企画部長。
「吉原 俊二(よしわら しゅんじ)」
東京第一銀行 営業第三部長。
「菊川 春夫(きくかわ はるお)」
東京第一銀行 専務取締役。
「羽田 重康(はた しげやす)」
東京第一銀行 副頭取。
「牧野 治(まきの おさむ)」
東京第一銀行 頭取。
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