- 税務条例によるコンプライアンス要求
2.1 商業登記証
香港会社は登記設立を行う際に、同時に商業登記証を申請・受領する必要があります。商業登記証は会社の税務登記証でもあり、商業登記証の番号は会社の税務登記番号(税務身分証:TIN)でもあります。香港会社は1年又は3年有効な商業登記証を選択できます。
会社は商業登記証の有効期限が切れる前に定額の商業登記料を支払い、商業登記証を更新する必要があります。会社は既存の商業登記証の有効期限が切れる1ヶ月前に商業登記証を更新できます。
現在、1年有効な商業登記証の登記料は290米ドル(2,250香港ドル)であり、3年有効な商業登記証の登記料は720米ドル(5,950香港ドル)です。商業登記証の更新が遅れた場合、40米ドル(300香港ドル)の罰金は発生します。裁判所による起訴及びより高額の罰金が科せられる場合もあります。
「税務条例」第88条により、所得税の免除資格を取得している保証による有限責任会社は同時に商業登記料の納付が免除されると見なされます。
2.2 雇用主支払報酬申告書
税務局は、課税年度の第一営業日(4月の第一営業日)に、全ての雇用主(有限責任会社、パートナーシップ、独資会社)に前年度の雇用主支払報酬申告書を発行します。雇用主は、雇用主支払報酬申告書を受領した日から1ヶ月以内に提出する必要があります。雇用主支払報酬申告書の目的は、雇用主が前年度に従業員へ支払う賃金、賞与などの情報を申告し、税務局がその情報に基づいて従業員に個人所得税申告書を発行することです。
雇用主支払報酬申告書にはフォームBIR56A及びフォームBIR56Bが含まれています。従業員を雇用しているか否かを問わず、会社はフォームBIR56Aを記入・申告する必要があります。従業員を雇用している会社は、従業員ごとにフォームBIR56Aを記入・申告する必要があります。
雇用主支払報酬申告書の提出が遅れた場合、385米ドル(3,000香港ドル)の罰金は発生します。
さらに、期限内に雇用主支払報酬申告書の提出に加えて、新社員の入職又は従業員の離職もしくは長期間香港を離れる予定の場合、会社は関連する申告の期限前に税務局に申告し、当該従業員の個人情報を提出する必要があります。
2.3 利得税申告書
毎年の4月1日、香港税務局は関連する全ての会社(設立から18ヶ月未満の会社を除く)に利得税申告書を発行し、関係者が通知で指定された期限内に記入済み申告書を税務局に返送することを要します。利得税申告書の目的は、会社が経営状況を税務局に申告し、税務局が会社の課税所得を査定することです。
利得税申告書を提出する同時に、会社は、利得税申告書の説明書類とする監査済み財政状態計算書及び課税所得(又は税引後の損金)の計算書を添付する必要があります。会社は年間売上高が200万香港ドル以下である場合、監査済み財務諸表を提出する必要がありませんが、依然として税務局の必要な調査に対応するために監査人に委託し監査報告書を発行させる必要があります。
一般的に、税務局は納税者に納税申告書を完成させて提出するために1ヶ月を与えます。納税者は合理的な理由がある場合、申告期間の延長を申請することができます。但し、延長を許可できるか否かは税務局によります。
会社は申告書で記載されている提出期限前に完全な利得税申告書を提出しなかった場合、1,200香港ドルの罰金が課せられ、且つ罰金通知書で記載されている指定日付前に利得税申告書を提出する必要があります。会社は依然として指定日付前に利得税申告書を提出しなかった場合、裁判所で税務局に起訴され、裁判所によってより高い罰金が科せられる場合があります。
さらに、利得税申告書の提出が遅れた場合、税務局長官は個人的な判断に基づいて課税対象となる会社に対して税額査定を行うことができます。会社が1ヶ月以内に異議(異議通知書の提出時に証明書類を提出する必要がある)を提出しなかった場合、査定された税額は最終的な課税所得となります。最終的な課税所得が推定利益より高い場合、税務局はその差額について査定を行います。
2.4 免税申請
香港「税務条例」第88条(慈善団体とも呼ばれる)は、香港税務局が関連する条項に基づいて慈善団体に免税資格を付与する基準です。事業利益が慈善目的にのみ使用され(即ち団体の利益がメンバー又は管理者に配当しない)、且つほとんどの利益が香港内に使用され、香港社会に利益をもたらし、公益を保護する保証による有限責任会社は、免税許可を申請することができます。
- 強制性積立金計画条例によるコンプライアンス要求
雇用主として、香港会社は18歳以上65歳未満の従業員を強制性積立金計画(MPF)に加入させる必要があります。会社は登録されている信託会社が管理している1つ又は複数のMPFを選択でき、従業員をその計画に加入させます。
MPF拠出金が従業員の賃金の10%によって計算し、雇用主及び従業員の双方が5%ずつを負担しなければなりません。但し、MPFは賃金の上限額及び下限額に対して7,100~25,000香港ドルという制限があります。従業員の月間賃金が7,100香港ドル未満の場合、従業員はMPFの支払が免除されますが、雇用主は依然として従業員の月間賃金の5%を負担する必要があります。従業員の月間賃金が25,000香港ドル超の場合、雇用主及び従業員は超える部分に対して積立をする必要がありません。
- 労働者補償条例によるコンプライアンス要求
香港「労働者補償条例」により、全ての雇用主は法律(コモンローを含む)上の責任を負うために、従業員の契約期間や種類(正社員又はアルバイト)を問わず、労災保険に加入する必要があります。さもなければ従業員を雇用することができません。
労災保険の最低保険金額は下表の通りです。
従業員数 |
1事故の保険金額 |
200人未満 |
1億香港ドル以上 |
200人以上 |
2億香港ドル以上 |
法により労災保険に加入しない雇用主は起訴され、有罪判決を受けた場合、12,820米ドル(100,000香港ドル)以下の罰金及び2年間の懲役が科せられます。
また、香港条例第365章の「労働者補償支援条例」により、労災保険の強制加入に違反した雇用主は労働者補償支援基金管理局に追加料金を納付する必要があります。
- コンプライアンス・コスト
香港保証による有限責任会社の申告・維持責任は法定年次申告責任及びその他の維持責任に分けられます。それに応じて、会社の年間維持費用も基本的な法定維持費用(定額)及びその他の維持費用(オプション)に分けられます。法定維持費用は「会社条例」の規定に基づいて会社の存続期間中に必要な固定費用であり、会社の事業性質又は取引回数によって変更されません。その他の維持費用は会社の実際の経営状況によって変更される場合があります。
下表に記載されている基本的な法定維持費用及び会計、監査及び税務サービス費用は会社設立後2年目の推計費用です。会計費用は会社設立後に即時発生する可能性があります。下表はあくまでも参考用です。特に会計及び監査サービス費用は、会社の事業性質又は取引回数によって変更されるため、実際の費用が推定金額より高い可能性があります。
表2:香港会社のコンプライアンス・コスト
順番 |
項目 |
金額(米ドル) |
備考 |
基本的な法定維持費用(定額) |
|||
1 |
商業登記料 |
0/年 |
|
2 |
年次申告書の登記料 |
14/年 |
|
3 |
会社秘書役 |
450/年 |
|
4 |
登録住所 |
350/年 |
|
5 |
年次株主総会書類の作成 |
160/年 |
|
6 |
会社指定代表者 |
160/年 |
|
合計: |
1,134 |
||
会計、監査及び税務(オプション) |
|||
7 |
会計サービス |
250~ |
|
8 |
財務諸表の法定監査 |
1,000~ |
|
9 |
利得税の計算・申告 |
400~ |
|
10 |
雇用主支払報酬申告書の記入・申告 |
85~ |
|
合計: |
1,735~ |
備考:
5.1 現在、1年有効な商業登記証の登記料は290米ドル(2,250香港ドル)であり、3年有効な商業登記証の登記料は720米ドル(5,950香港ドル)です。経済状況により、香港政府は2021/2022年度の商業登記料を引き下げました。従って、会社は250香港ドルの商業登記料のみを支払う必要があります。税務局からの第88条免税資格を取得している保証による有限責任会社は商業登記料を納付する必要がありません。
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