器用貧乏海珠堂

”魚大好き海珠堂”のほうがいいかな・・・?

銀(925)と七宝焼き

2018-11-14 11:45:06 | ジュエリーの作り方
江戸時代の金工(主に貴金属の加工)で名を残した名人達に挑む・・・
そんな意気込みで製作したのがこちらの鯉

・・・自分程度の腕では相手になってないんでしょうが(苦笑)



色のついている部分は七宝焼きという伝統工芸です。
・・・ガラスを溶かしつける・・・って感じかな・・・。
七宝焼きは壺とかお皿に施されたものが有名です。


小さな銀(925)のアクセサリーにこの七宝焼きを施す工程をご紹介します。

七宝を入れてない状態のカエル
ヤスリ等で磨いたあと焼き鈍してあります。

溝の部分に七宝焼きの釉薬をのせていきます。


ピント合ってなかった・・・ごめんなさい!

釉薬が乾いたら800℃強まで温めた電気炉へ・・・
窯で焼かれるアマガエル・・・


大きさによりますが・・・多分2分くらい?で溶けます。
・・・時間測ってないのでちょっと適当ですが・・・。
時間よりも窯の中の釉薬の溶け具合を目で見て判断します。
溶け切っていないのは勿論駄目だし焼きすぎも駄目です。

ちょうどよく溶けたとこ

室温で冷まします。
冷めはじめ
銀に彫ってある溝にガラスが溶けてへばりついた状態です。
銀の枠でガラスが守られているのでそうそう簡単には割れません。
大事にして頂ければ一生お使い頂けます。

まだ熱いのでさわれない・・・


常温・・・
緑になります。


余計な部分を削り落として・・・
研磨剤で磨いて・・・
完成

カエルはこちらで詳細がご覧になれます。
creema 海珠堂 アマガエルのペンダント

工程ははっきり言って単純・・・
・・・なんですが、温度、自分の使っている電気炉のクセ・・・
銀の枠の厚み、形状、釉薬の盛り加減・・・
言い出したらきりがない感じでコツとか失敗して覚えた経験なんかが必要だと思います。

・・・ご同業で興味のある方もご覧になると思うので・・・
やってみて失敗して覚える・・・って感じでした、自分の場合は。

材料の釉薬、砂状になっています。

水で湿らせた状態で、小さなスプーンで銀にのせていきます。
・・・ものによって湿り加減を変える・・・
っていうのもコツかも・・・こうやって書いていると気が付きます。
普段は勘に頼ってやってるので・・・
そういうんじゃ駄目なんだろうな・・・(苦笑)

こちらはアオウミウシのピアスに釉薬をのせたところ
黄色は焼きすぎると色が悪くなるので青から先に焼きます。


黄色の入る部分に青が入らないようにやるんですが・・・
このサイズで完璧に何個も続けて仕上げようとすると・・・
・・・途中で本当に参ってしまう・・・
なので、黄色部分に少し青が入っても気にしないで焼いてます。
・・・で、後で余計な青を削り落とします。
こうしたほうが早いし負担も少ない・・・こういうのもコツのひとつかな・・・


上3本がリューター(小さな電気ドリル)の先端工具
金属に穴開けたり削ったり・・・という用途で使います。
・・・で、下はそれを加工して作った小さな手作り工具

左は先に紹介した小さなスプーン
次が釉薬を平らにならしたり寄せたりするもの
それから七宝を削り落とすためのもの
叩いて割るために鈍く尖らせたもの・・・
ピンバイスに挟んで使います。


完成したアオウミウシ

細かい作業は・・・やっているうちに得意になったかな・・・
もともと出来た訳ではない・・・と今、これ書いてて気が付きました。
・・・性格は大雑把です・・・(苦笑)


こちらは真鯛のピアス


赤やピンクは銀と反応して変色してしまうのできれいに入れるのが非常に難しいです。

サバの縞模様は先に紺色を模様の溝に入れて焼き付けます。
その上から薄くマリンブルーをのせていきます。
写真は途中までマリンブルーをのせたところ
盛りすぎると紺色の縞模様が見えなくなるのでほどほどの量にします。
写真撮るために固定してありますが、普段は手にもって盛りつけてます。


完成

旨そう(笑)


形、色等々に合わせて磨く、焼く、削る、焼き鈍し、酸洗い、また焼く・・・だったり
作業の順番変えたりします・・・
あと、まとめて無駄な時間作らないようにやったり・・・
・・・こういうのが言い出したらきりのないコツの部分です・・・。

未完成品の山・・・


次のイベント出展は12月1日2日いきもにあ
用意しようと思ってたのに間に合わなかったものもいくつか・・・
いつもそんな感じになってしまうんですが・・・
これからもうひと頑張り。


こちらは帯飾り(根付)用のパーツ
最近用意致しました。


ペンダントは全て帯飾りと兼用に出来ます。


こちらでご覧になれます。
creema 海珠堂ギャラリーページ












鋳造しないジュエリーの作り方

2014-01-19 19:37:53 | ジュエリーの作り方
手づくり、とか鍛造と呼ばれる指輪の作り方を紹介します。
貴金属のアクセサリー、ジュエリーの多くは以前紹介させて頂いた鋳造(ロストワックス)で作られています。
鋳造の場合、型をとるので量産ができます。
今回はご紹介するのは、金属を直接加工しひとつひとつジュエリーをつくっていく方法です。
材料の金属を押しつぶすことにより密な状態になるので、鋳造でつくられたものより強度のある指輪になります。
手間がかかるうえに、材料を切ったり削ったりすることによりロスも出るので鍛造でつくられたもののほうが鋳造でつくられたものより高くなります。


まず必要な量の材料を熔かして塊にします。
今回使うのはプラチナ、写真は熔けた状態です。
プラチナは融点が高いので、熔かす場合2000℃近い高温に加熱します。




ペコっとへこんでいたらOKです。
へこみは熔けて液状になったプラチナが吸収したガスを凝固したときに吐き出した証拠です。
・・・ガスを吐き出していない=中に空洞ができてる・・・ってことになります。
そのままだと指輪の強度に問題出る可能性があります。




叩いて四角くしていきます。
プラチナは粘りがあるのでこの手の加工はやりやすいです。




金属は叩いて形がかわると内部の結晶に歪みができて硬くなっていきます。
空き缶や針金を何度もまげていくとだんだん硬くなっていき、最後に切れる・・・っていうのと同じ現象です。
この硬くなっていく現象を加工硬化っていいます。
切れたら指輪に出来ないのでこの加工硬化を焼き鈍しという方法でもとの硬さに戻します。
加熱することにより内部の結晶の歪みがとれます。
加熱して真っ赤になった状態で水に入れ急冷します。
叩いて延ばす→焼き鈍し→叩いて延ばす→焼き鈍し・・・・・と繰り返して棒状にしていきます。
写真は加熱されたプラチナです。




ある程度四角くなったら延圧ローラーというもので押しつぶすように細長い棒状にしていきます。
写真後ろがローラー、手に持っているのがプラチナです。
延ばしていくと硬くなるので、その度に焼き鈍しをします。




ちょうどいい長さ,厚さになったら両端を切りそろえます。




棒状の材料を叩いて丸めます。





丸めた棒の両端をロウ付けという方法で繋げます。
溶接みたいなもの・・・です。




削って形を整えた指輪です。
結婚指輪なので男性用と女性用の2本です。

これから上の平らな部分に立体的な模様を彫っていきます。
今回も彫るのは真鯛ではありません・・・(笑)。
真鯛の結婚指輪



石目

2013-12-17 17:49:41 | ジュエリーの作り方
・・・魚の話ばっかりしてるな・・・・・



今日はジュエリーの作り方です。

猫の表面の艶消しのような仕上げについて説明させて頂きます。


まず鋼の棒・・・タガネって呼ばれています。
これを真っ赤になるまで加熱します。


まだ赤い(熱い)うちに石にタガネの先をあてて金づちでたたきつけます。
鋼が加熱されて柔らかくなっているので、叩きつけることにより石の表面がそのまま鋼の棒の先に転写されます。
・・・鉄は熱いうちに打て・・・ってやつです。






次に再度このタガネを加熱して今度は水に入れて急冷します。
刀鍛冶がまっかな鋼をカンカン叩いて水に入れる・・・まさにそれと同じです。
焼き入れって言います。これで鋼が硬くなります。
・・・・・写真うまく撮れませんでした・・・作業しながら写真って難しいですね・・・。
・・・それと今さらやっと気がつきました・・・
カメラも右利きの人が使いやすいように出来てるってことに・・・。



タガネはこれで完成。
このタガネで猫の表面を叩いていきます。
鋼のほうが銀より硬いので、タガネの表面にある石の模様が銀に転写されます。


全体をムラなくきれいに打っていきます。
”石”という自然の材料を使うので表面がより自然な感じに仕上がります。

この猫のペンダントは
↓こちらで販売してます。
Creema 海珠堂ショップページ

ロストワックス

2013-12-02 07:23:29 | ジュエリーの作り方
海珠堂のジュエリー製造工程を紹介させて頂きます。



今回は写真の銀の猫の指輪の鋳造です。
大部分の銀製品はこの鋳造という方法で作られています。
ジュエリーの鋳造は一般的にキャストと呼ばれています。

鋳造しないジュエリーの製造方法は、別に紹介させて頂きます。
鋳造しないジュエリーの作り方
こっちはプラチナの指輪です。


写真はそのコピーの元になるオリジナルで、原型といいます。
立体的なデザインの貴金属製品は裏側が空洞になっている場合がほとんどです。
これは軽くするため・・・でもあるのですが、実はうまく鋳造のためっていうのが一番の理由です。
溶けた金属が固まるときに収縮します。
あまりに厚みのあるものを鋳造すると、縮んで形が歪みます。
場合によっては、穴や空洞ができて製品に仕上げられないことになります。これを防ぐため、裏側を抜いて一定の薄さにしておきます。







まず原型をシリコンゴムで型取りします。

普通はここでホットプレス機という機械を使います。
・・・ホットプレスを持って無いので、海珠堂では手軽に型取りできる液状のシリコンゴムを使っています。
指輪を立ててその周りに枠をつけ、その中に液状のシリコンゴムを流し込みます。
12時間で硬化します。


シリコンゴムが固まったら2つに切り開き中の指輪を取り出します。
これでシリコンゴムの中に原型の指輪と全く同じ形の空洞ができます。
このシリコンゴムはゴム型と呼ばれています。


写真の青い機械はワックスポットです。
ポットの中でワックスを温めて溶かし、射出口から溶けたワックスが飛び出すようになっています。
ゴム型の中にワックスを流し込むと、原型の指輪が入っていた空洞部分に溶けたワックスが入って行き、原型と同じ形になり固まります。
写真右下が室温で固まったワックスです。


ワックスの猫の指輪2本をY字に立てます。
指輪を立てている棒はこのあと熔けた金属の流れる道になります。
サイズ調整もここでやっておきます。
ステンレスの枠をかぶせて、その中に水と石膏を混ぜたものを流し込みます。
このあとすぐに真空脱泡機で石膏の中の気泡を抜きます。


石膏が固まったらステンレスの枠ごと電気炉にいれて焼成します。
このステンレスの枠と固まった石膏を鋳型と呼びます。
電気炉で焼かれることによって石膏の中にあったワックスが溶け出して無くなります。
ワックスが無くなるので、固まった石膏の中には猫の指輪2本と全く同じ形をした空洞が出来ます。
ワックスが消えて無くなる・・・ってことでロストワックス鋳造法と呼ばれています。


鋳型が十分に焼けたらやっと鋳造に入ります。
写真は鋳造機です。
海珠堂で使っているのは非常にシンプルな遠心鋳造機です。
るつぼに銀を置きその後ろに焼けた鋳型を置いたら準備OKです。
ちなみに海珠堂の鋳造機は台湾製。
中国語の名前を直訳すると“バネ式遠心鋳造機”・・・・・。
非常に味気ない名前なので海珠堂で新しい名前をつけました。
鋳造機「キャス太郎!」


鋳型をセットしてバーナーでるつぼの中の銀を溶かしています。
銀が溶けたら鋳造機を回転させます。
その回転の遠心力で、るつぼの後ろの穴から鋳型のほうへ熔けた銀を押し込みます。


写真はちょうどキャス太郎が回転しているところです。
ストッパーをはずすとものすごい勢いでブンブン回ります。
この回転の遠心力で鋳型の空洞の隅々まで熔けた金属を流し込みます。
・・・まぁ、ただバネで回るだけの単純な機械なんですが・・・。

ちなみに立派な工房や鋳造を専門に請け負う業者さんでは、高周波で金属を熔かす,デジタルで温度制御,真空中で鋳造・・・という高性能な鋳造機を使います。



鋳型を鋳造機からはずして熱いうちに水に入れます。
急冷され石膏がゴボゴボと音をたてながら崩れていき、中から鋳造された指輪が見えてきます。

目的が違うので全く同じではありませんが、金,銀製のジュエリーの鋳造は歯科技工士さんの銀歯の制作と基本的に同じです。


鋳造後(写真左)銀の表面が黒い被膜に覆われているので黒猫です。
水色のワックスの指輪2本をY字に立てたものと全く同じ形です。
これを薬品で処理すると白猫になります。
さらにワイヤーブラシで磨いて表面の被膜を落とすと、やっと銀猫です。
ここで鋳造は完了。この先は仕上げの作業になります。


普段はまとめて鋳造します。
写真下の猫達は仕上げの工程も終え製品として完成したものです。
仕上げの工程は別の機会に紹介させて頂きたいと思います。
最後まで見て頂きありがとうございます!

指輪は↓こちらで販売してます。
Creema 海珠堂ショップページ