隠れ家-かけらの世界-

今日感じたこと、出会った人のこと、好きなこと、忘れたくないこと…。気ままに残していけたらいい。

『白昼夢』~不器用な「はじめの一歩」

2021年04月09日 20時18分09秒 | ライブリポート(演劇など)

2021.04.08(木)



2021.04.07
『白昼夢』
 at 本多劇場(1時間35分 休憩なし)

作・演出: 赤堀雅秋
出       演: 三宅弘城/吉岡里帆/荒川良々/赤堀雅秋/風間杜夫


 M&Oplaysプロデュース「白昼夢」特設サイト | 作・演出:赤堀雅秋 | 出演:三宅弘城、吉岡里帆、荒川良々、赤堀雅秋、風間杜夫 (mo-plays.com)



 社会問題にもなっている「8050問題」がテーマと言えるか。
 (なんでもかんでも数字や略語で表してしまう現状は、たまにどうかな?と思うこともあるけれど)
 自宅の2階に引きこもって10年余りの次男・薫(荒川良々)。同居するのは妻を亡くした父親(風間杜夫)。
 家を出て家庭をもっている長男の治(三宅弘城)は長男としての責任と捉えているのか、ただ家族のことが気になるのか、支援団体に協力を求め、家にもたまに来てなんやかやと現状打破を狙って、少しピントのずれた行為を繰り返す。
 そして、その支援の手を差し伸べるのが責任者の別府(赤堀雅秋)と、まだ新人の石井(吉岡里帆)。

 闇を抱えるのは中年の引きこもりの薫かと思いきや(たぶんそれはあるんだろうけど)、実は冷静に周囲の人間を観察していたり、自分の中のもやもやを言葉にする術も心得ている。
 ときに爆発するいら立ちも、度を越すことはない。これくらい家庭内ではよくあること?と思わせてしまう。


 そしてすぐに癇癪を起して大声を出す短気な父親。不安定な精神を石井に向けて発したり、体の不調を抱えていたり、そのあたりも含めて、前時代的に想像すれば、決して珍しいタイプの男ではない。
 常軌を逸して薫に危害を加えた長男を制して、「生きているだけでいいじゃないか!」と薫のかばうところでは、深いところで引きこもりの息子を受け止め、ひょっとしたら支えにしていたのかもしれないと思わせる。
 そのあたりは、きっと見る人それぞれに異なるであろう、複雑な心理。


 長男の治はたまに実家を訪れ、「このままではまずいだろ」と改善を試みようとする心遣いを見せつつも、家族を引っ張っていく器ではない。心遣いが空回りしたりずれていたり。
 普通に妻と受験期の子どもがいて、会社勤めで少々疲れ気味の中年男子は、どこにも拠り所がなくて、実は引きこもりの弟と父親がいる実家が生きる支柱となっていたのか。そんなことさえ感じさせる。
 石井と深い仲になり、一時、家からも仕事からも逃避していたが、それもどこまで本気だったのかわからないまま、もとの暮らしに戻ったようだ。

 別府はどういう人かいちばんつかみにくい人で、善意の人だとは思うけど、仕事は仕事を割り切っているのか、それ以上の気持ちがあるのか、最後までつかみきれなかった。よくいる、それだけの人なのかもしれない。

 コロコロときれいな声で笑い、男だけの空間に清涼剤のような石井が、実はもっとも底の知れないものを抱えて生きているのかもしれないと思わせる。
 引きこもりの過去を持ち、ときどき理由もなく自分を追い詰めてリストカットをしたり、スナックで知り合った年上の恋人の言動に振り回されている幕切れが、彼女の将来の闇を想像させたりする。

 自分という存在に実感がなく、いつもまわりに合わせて、ふわふわ~っと納得して諦めて生きているような・・・、そんな危なっかしい女性か。


 高橋家のダイニングと居間。
 そこを舞台に、季節の移り変わりで、物語は前に進んでいく。
 彼らの台詞の微妙な間、関係の小さな変化。
 
 そして、最後には今までのだらしないジャージ姿の薫が爽やかに?ストライプのシャツを着こんで、引っ越しの準備をしている。
 手伝う兄、別府、石井・・・。
 兄は弟の拾い物のコレクションのトロフィーをうたた寝をしている父親に持たせ、「勝利者インタビュー」と称して、「あなたのしてきたことは間違ってはいなかったんじゃないの?」と語りかける。
 そこは救いのシーンだ。
 
 家を出て、とりあえずは一人暮らしをして自立の一歩を踏み出そうとする息子、そして、その旅立ちを待っていたかのように息絶える父親。
 それはひとつの時代が終わったことへの印としてポジティブに捉えるべきなのか、あるいは問題を抱えた息子との暮らしがすでに大きな日常になっていた父親の悲しい最期と捉えるべきなのか。
 「それでも生きていく。喜劇。」という文言を素直に受け止めるならば、先々に何が待ち構えているかわからない、薫をはじめ、それぞれの登場人物の「不器用なはじめの一歩」へのエール、と感じていいのかもしれない。

 役者がそれぞれに、人物の平素の顔や暮らしぶりを想像させる演技で、とても魅力的。

 赤堀雅秋さんの作・演出は、2014年の『殺風景』以来だった。
 これもすごかったなあ。
  https://blog.goo.ne.jp/kakera1221/e/9a76a4310bf7b35354518eb4e5021a53
 役者としては、『南部高速道路』(ココ)と『鼬』(コチラ)という長塚圭史演出の作品に出演されていた。



                              



■ 下北沢
 久々の下北沢は、想像以上の賑わい。
 昨秋の雰囲気とも異なる。
 東京の田舎で暮らして、リモートで仕事したりしていると、あの空間に慣れて、浮世離れしている自分に驚く。
 エスカレーターにはもうソーシャルディスタンスは不要なの?とか、喫煙所に人が溢れて、外で吸ってる人もいるよ・・・とか。
 終演後、すぐに電車に乗って、地元のすいているラーメン店で遅いランチをとり、即帰宅・・・。
 「まん延防止等重点措置」の発令で、私たちは今までとどう違う暮らし方をすればいいのか?
 

■イチローさんの言葉
 SMBC日興証券のイチロールーム。
 いつもTwitterで楽しんでいる。
 
 もしもイチローが社長だったら!?|SMBC日興証券 (smbcnikko.co.jp)

 おしえて!イチロー先生|SMBC日興証券 (smbcnikko.co.jp)

 人生100年 イチロー人生すごろく|SMBC日興証券 (smbcnikko.co.jp)


■ 七夕の日に
 https://spitz-web.com/news/6356/
 7月7日、七夕の日に、「『紫の夜を越えて』-アートエディション」(完全数量限定生産盤)がリリースされる。


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