2023.10.29
ロック大陸漫遊記
TOKYO FM
10月も最終週、そして11月へ・・・。
「今日も、運転中の方、お仕事中の方、暇こいている方、いろんなシチュエーションの方がいらっしゃると思いますが、ちょっとした息抜きにしていただけたらと幸いです」
特集は、【アートロックで漫遊記】です。
60年代の中ごろから後半にかけて、それまでシンプルだったロックの世界に、いろんな要素、サイケデリックやクラシックやエスニックなどを取り込んで、芸術っぽくなっていった時期があり、それが「アートロック」とカテゴライズされていた。
「そんなアートロックについて、今日は漫遊していきます」
セットリスト
01 ほうき星(スピッツ)
02 You Keep Me Hangin' On(Vanilla Fudge)
03 A Day In The Life(The Beatles)
04 Astronomy Domine(Pink Floyd)
05 In-A-Gadda-Da-Vida(Iron Butterfly)
06 Chasing Shadows(Deep Purple)
07 Fire(The Crazy World of Arthur Brown)
08 Understand(カルメン・マキ & カルメン・マキ Blues Creation)
09 醒めない(スピッツ)
漫遊前の1曲は、スピッツで「ほうき星」(1996年、7thアルバム『インディゴ地平線』)。
「なんとなくアートロックの香りがあるような、ないような・・・、そんな曲です」
曲終わりで、「これは作詞はわたくしがやっていますが、作曲はベースの田村です」。
(田村くん、テツヤくん作曲の作品がアルバムに収録されている時代もあったなあ。最近はやらないの?)
最初の曲は、Vanilla Fudgeの「You Keep Me Hangin' On」(1967年、デビューシングル/1967年、1stアルバム『Vanilla Fudge アートロックの騎手』)。
「アートロックといえば、このバンド。それまでのロックおよびポピュラー音楽の常識を覆して、長い尺の曲をリリースしたり、有名なヒット曲を独自の解釈でサイケにアレンジして、その後のプログレッシブロックやハードロックの源流となったバンド」と。
この曲もThe Supremesの曲を大胆にアレンジしている。
アルバムバージョンは7分越えの曲で、「そちらこそがアートな感じなんでそちらを流したかったけど」、今日は「いろいろ聴いていただこうという構成上」、シングルバージョンで。
(個人的にはやたら懐かしい曲です。カッコいい! このイントロ、すっかり忘れていた。)
動画で見られる、「ドラムのカーマイン・アピスのアクションがめちゃめちゃカッコいいんですけどね」と。
Vanilla Fudge "Keep Me Hangin' On" on The Ed Sullivan Show
「アートロック」について。
60年代後半に、それまでのようにシングル曲中心ではなく、より芸術性の高いロックを志向したアーティストが現れる。
それまではラジオでのプロモーションを意識して、「1曲3分くらい」というのがお約束だったが、それに拘ることなく、アート性を高める演奏、アレンジへと進化していった。
これには、多重録音などレコーディングにおける技術革新なども関係していて、より実験的な作品をつくれる環境になったということが、背景にあるようだ。
草野くんがもってきた、1969年4月号の『ミュージック・ライフ』にも、「アートロックは花ざかり」という特集ページがあり、そこには、Vanilla Fudgeほか、「ジミヘンさんやドアーズなんかも紹介されています」。
次は、The Beatlesの「A Day In The Life」(1967年、8thアルバム『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』)。
「ロックのアート化」というのは、「結果としてはビートルズの影響が大きかったと思います」。
彼らとは関係なく「ロックのアート化」の流れはあったんだろうけど、「ビートルズがやることによって、それが世界基準になる」ということだったのかな、と。
「極めつけは、この『サージェントペッパーズ』(『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』)というアルバムだったのでしょうね」、このリリース後、「世界中で、サイケとか大げさな仕掛けのロックミュージックが増えたと思われます」と。
(キャッチーなキュートな、それ以前の短い曲ばかりのビートルズが好きだったから、ずっと魅力がわからなかったアルバム。ずっとあとになって、オープニング曲からググっと引き込まれるようになったのは、なんでなんだろうなあ、とときどき考えます。大人になった??)
例のエンディングの構成については、「いろいろ聴いていただきたいので割愛させていただきます」とのことでした。(ふむふむ)
そして、次の曲は、Pink Floydの「Astronomy Domine」(1967年、1stアルバム『The Piper at the Gates of Dawn 夜明けの口笛吹き』)。
このアルバムは、さきほどのThe Beatlesのアルバム『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』と同じスタジオの隣の部屋でレコーディングされたそうだ。インタビューによると、それぞれのメンバーがお互いのスタジオを行き来して影響され合ったという。
Pink Floydの初期のメンバー、シド・バレットが在籍していたころの作品は、「のちのプログレッシブロックの路線からするとまだポップなところもあるが、すごいサイケでかなりアートな香りも強い」。
(個人的には、Pink Floydはまさに『Atom Heart Mother 原子心母』からなので)
次は、Iron Butterflyの「In-A-Gadda-Da-Vida」(1967年、3rdシングル/1967年、2ndアルバム『In-A-Gadda-Da-Vida』)。
リフを弾いて、「これが印象的な曲です」とご紹介。
(この曲、以前にこの番組でもかけて、ココで熱く語っていますね。また「特集 虫の名のバンド」でもこのバンドをとりあげています。コチラです)
1960年代後半の『ミュージック・ライフ』を古本屋で購入すると、「高確率でこのバンドの記事がある」ので、「日本でもそれなりに人気だったのでは?」と。
「ギタリストのエリック・ブランがアイドル並みのルックスだったので、そういうニーズもあったのかも」と。
(前の特集では、「ベイシティローラーズのメンバーみたいなルックス」と形容していましたね)
アートロックとされているサウンドは、「たいていオルガンが効いている」そうで、この曲も「オルガンがいい味を出している」。
この曲は、アルバムバージョンでは17分の「まさにアートロック!」という大作!
メッセージコーナー。
「毎週必聴のロック大好きおじさん」からのご提案、「ドラマーがリードボーカルのバンドの特集を!」と。
「結構いるかもね」と草野くん。すぐに浮かぶのがC-C-B。
この番組では、ココで8ottoを紹介した。
そして、カナダのTriumphもスリーピースで、「ドラムがボーカル」。いつかカナダのロックバンド特集をやるときの候補だそうです。
60年代のイギリスのバンド、The Honeycombsは女性ドラマーがボーカル。
「まだまだ探ればいそうだし、おもしろそうなので、考えてみます。貴重な提案、ありがとうございました」とのことです。
次は、Deep Purpleの「Chasing Shadows 影を追って」(1971年、3rdアルバム『Deep Purple III 素晴らしきアートロックの世界』)。
Deep Purpleは70年代になって、ハードロックのバンドとして大人気になる。「Smoke on the Water」「Highway Star」「紫の炎」など、「有名な曲がいっぱいありますが」。
しかし、60年代のDeep Purpleは「まだそこまで方向性が定まっていなくて、日本ではアートロックのカテゴリーに入れられてたみたいです」。
60年代には、Vanilla Fudgeをお手本にしていたようで、この曲が収録されているアルバムの邦題にも「アートロック」の文字がある。
曲終わりで、「前に(ココで)特集したことがあるロッド・エヴァンズさんのボーカルがステキです」。
最後は、The Crazy World of Arthur Brownの「Fire」(1968年、3rdシングル/1968年、デビューアルバム『The Crazy World of Arthur Brown』)。
Arthur Brownはイギリスのロックシンガーで、彼も『ミュージック・ライフ』1967年4月号の「アートロック」特集で取り上げられている。
「その後のロックの手法を先取りし、70年代以降のロックのひな型」のような存在。
フェイス・ペイントは、KISSやマリリン・マンソンなどに引き継がれている。
スクリーミングボイスは、メタル系のボーカルに影響を与えている。
火を使ったステージに演出も、いろいろなロックコンサートで使われている。
ただ彼はヒット曲がこの1曲だけなので、「一発屋扱いされてしまうところが残念」と。
曲終わりで、「Arthur Brownさん、現在81歳で現役でいらっしゃいます」と。
特集の最後に。
「60年代後半から70年代前半のロックが、聴いてていちばん落ち着くね。この辺の特集がロック大陸だなと再認識しました」と。
今日の曲たちが、「のちのちのハードロック、ヘビーメタル、プログレッシブロックにつながっていくわけです」。
そして、今日の「ちょっぴりタイムマシン」は、カルメン・マキ & カルメン・マキ Blues Creationの「Understand」(1971年、カルメン・マキ Blues Creationのコラボアルバムより/アメリカのバンド、ファンタジーのカバー)
(イントロは、「手毬」?)
日本のアートロックバンドというと、「ゴールデン・カップスやフラワー・トラベリン・バンドなどがそれにあたるのかな?」。
けれど、「当時のカルメン・マキさんの音源がめちゃめちゃアートロックの匂いがするので、これをセレクトしました」。
カルメン・マキさんは69年にフォーク調の楽曲「時には母のないこのように」がヒット。
「これは寺山修司ワールドのちょっとダークなイメージだった」が70年代に入って、「徐々にロックシンガーにメタモルフォーゼしていく、という、まさにサナギが羽化していく瞬間の唄声」と。
バックの演奏は、まだ新人だったクリエイション。18歳のギタリスト、寺田和夫さんは、「当時から天才ギタリストと言われていたそうです」。
(「カルメン・マキ&OZ」への過渡期の貴重な時期。ロックシンガー!)
カルメン・マキ&OZ 午前1時のスケッチ '95
来週の特集は、「『DOLL 1985年12月号』で漫遊記」です。
ロック専門誌を地図代わりに漫遊する回。
『DOLL』は、どちらかというと、「パンクロック、オルタナティブロックを専門に扱う音楽雑誌」で、「1985年は、ポジティブパンク、ゴス、ポストパンクが盛り上がっていた時期」と。
「草野さん、靴下の束縛感が苦手なんです」
(うーん、ちょっとわかる。)
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