2019.12.8 21:00~
「草野マサムネのロック大陸漫遊記」
at TOKYO FM
草野「街はすっかりクリスマスモード。ハロウィンが終わってクリスマス、あっという間にバレンタインモード・・・。それが終わると卒業、入学の新生活モード? しばらくすると夏休みモード。で、秋になって、またハロウィン・・・」
(たしかに、ときどきそのスピードについていけない自分を感じて、ああ、別についていかなくてもいいんだ、と思ったり。そういう年齢でもないし)
商売とかでは、このルーティンに乗っかってしまえば簡単なんだろうけど、「ひと月前から煽られると、ああ、ハイハイって気持ちにもなるかな、正直なところ」と。
(あるある・・・)
時には知らないエリアのお祭りで盛り上がってみるのもいいかも、と草野くん。
草野「今年はクリスマス一回お休みして、ひょっとこ踊りでいきます・・・みたいな」
ひょっとこ踊りは宮崎県のお祭りだそうです。
草野「そんなこと言いながら、今夜はクリスマスソング『Do they Know it’s Christmas?』をつくった『ミッジ・ユーロで漫遊記』」。
ミッジ・ユーロ・・・、「70年代前半からロックミュージシャンとしても活躍したUKロックの歴史のような方」。
「でも意外に知名度低くねえ?」ってことで特集です。
(こういう選び方、この番組らしくていいなあ)
オンエア曲
01 快速(スピッツ)
02 Do they Know it’s Christmas?(Band Aid)
03 Requiem(Slik)
04 Young Girls(Rich Kids)
05 New Europeans(Ultravox)
06 Hymn(Ultravox)
07 If I Was(Midge Ure)
08 帰っておいで(Jitterin' Jinn)
漫遊前の一曲は、「今日もニューアルバムから聴いてください」、スピッツで「快速」(2019年、17thアルバム『見っけ』)。
「快速」というネーミングの個人的に惹かれてしまう。いつも乗っている私鉄には「快速」があるんだけど、これがまたやたら停車駅が多くて、鈍行と変わんない?と思わせる。だけど、「快速」という響きはなんとも心地よくて。そのギャップがおかしい。
この楽曲でも、「流線形のあいつ」に負けないで、と言っているところで、なんだかスピッツらしくて。
それでいて、聴いていると空に浮かび上がるくらいの心地よさとみの軽さを感じさせてくれる。
気持ちのいい、いつまでも聴いていたくなる曲。
「吊り革」とか「レール」などの電車関係の単語が巧みに挟み込まれていて、そこがあざとくなく自然で。それでついつい、この人、本当に、電車によく乗ってんだろうな、とか思わせる。
「流線形のあいつ」って、やっぱりあれなんでしょうかね。
最初の曲は、「ミッジ・ユーロさんといえば、やっぱりこの曲でしょうか」、Band Aidで「Do they Know it’s Christmas?」(1984年)。
(敬称略しますが)(笑)、ポール・マッカートニー、デヴィッド・ボウイ、ボノ、ジョージ・マイケル、スティングなどのビッグアーティスト20以上が集結した「エチオピア飢餓救済のためのチャリティーイベント」のバンドエイドのナンバー(ボブ・ゲルドフ作詞と/ミッジ・ユーロ作曲)。
Band Aid - Do They Know It's Christmas? (Live Aid 1985)
草野「こういう曲だと、いろんなシンガーの声を聴き比べできるね」
ボウイ・ジョージの声はいいな、とか。当時はまったく興味がなかったポール・ヤングにこの曲がきっかけで興味を持つようになった、と。
ミッジ・ユーロとは?
1953年スコットランド生まれ。高校卒業後、工業系の大学に進み、エンジニアとして働き始める。
この頃最初のバンド「サルヴェイション」のキャリアが始まり、同バンドに二人Jimがいたことから、彼のほうはJimをさかさにしてMij(ミッジ)と名乗るようになったとか。本名はジェームズだそうです。
草野「日本で言えば、タカシさんがシータカさんになるような感じでしょうか」(笑)
(そんなのきいたことない・・・)
1974年、サルヴェイションというバンド名が「スリック」(Slik)になったあたりから、彼はボーカル & ギタリストとして存在感を増していく。
草野「スリックは写真を見る限り、ベイシティローラーズを感じさせるアイドルっぽい感じ」
それもそのはず、両バンドは同じプロデューサーだったそうで、「ミッジさんはアイドルグループのセンターだった」。
次の曲は、その頃の録音で、Slikで「Requiem」(1976年、4thシングル)。
(なんとも明るい「レクイエム」)。
Slikには前年の「Forever and Ever」というヒット曲もあるそうだけど、「今聴くと、こっちのほうがポップでいいかな、と。暗いAメロから明るいサビ、というのがいいなと思います」と。
そして、ご多分に漏れず、Slikはアイドルグループからの脱却を図る。バンド名をPVC2?にかえて「パンクの流れを乗ろうとした」。
それもうまくいかず、ここを脱退。
その頃、セックス・ピストルズの前身スワンカーズに誘われていたそうで、「ひょっとしたら、セックス・ピストルズのボーカルになっていたかもしれない」と。
そして77年、そのセックス・ピストルズを脱退したメンバーと、新しいバンドRich Kidsを結成。そういう意味では、このバンドは「パラレルなセックス・ピストルズと言えるかもしれないですね」。
草野「でもミッジさんがボーカルだったら、ジョニー・ロットンのセックス・ピストルズほどセンセーショナルで破天荒なバンドにはなっていなかったかも、と思わせるRich Kidsの曲です」
次はそのRich Kidsで「Young Girls」(1978年、1stアルバム『Ghosts Of Princes In Towers』)。
(ミッジさんの曲だそうです。破天荒じゃないぶん、ポップでわかりやすくて軽快な曲ですね)
このアルバムは以前に特集したミック・ロンソン(ココ)のプロデュース。
草野「曲は最高なんですけど、ピストルズと比べると、曲は真面目な感じがしますよね」
その後、Rich Kidsをやめた彼は、シンセを使った音楽を志向して、スティーヴ・ストレンジと、バンド「ヴィサージュ」を結成。
このヴィサージュはニューロマンティックのバンドとして重要であり人気もあるそうだけど、「オレとしては苦手な音なんで、今日はヴィサージュの曲はかけません。ハイ、すみません」(苦笑)
というわけで、かけないならよけいにどんな?と知りたくなって・・・。
1980年、1stアルバム『Visage』から「Fade To Grey」のPV。
Visage - Fade To Grey (Official Video)
この頃のミッジさんは、旧知の仲であるフィル・ライノットの依頼で、シン・リジィに曲を提供したり、失踪したメンバー、ゲイリー・ムーアの代わりにツアーにサポートとして参加したりしているそうだ。
草野「ミッジさん、大忙しの時代」
(来日公演にも同行していたそうですね)
草野くんは当時の『ミュージックライフ』でシン・リジィの来日公演の写真に見慣れない男が映っているのを見て、「誰や、これ?」と「失礼なこと」を思った記憶もあるとか。
その後、Ultravoxに参加。
次はその頃の曲、Ultravoxで「New Europeans」(1980年、4thアルバム『Vienna』)。
サントリーウィスキーのCMにも使われ、草野世代には知名度の高い曲、と。
(シャカシャカいうリフが心地よい)
こちら、映像をどうぞ。
Ultravox - New Europeans (Full Version, stereo)
Ultravoxでの能力が高く評価される一方でソロでもヒット曲をとばし、「80年代を代表するロックミュージシャン」に。
次は、もう一曲、Ultravoxで、「Hymn」(1982年、6thアルバム『Quartet』)。
ビートルズのプロデューサーとして有名なジョージ・マーティンを迎えて制作したアルバム。
草野氏にとって、「ミッジ・ユーロ、ウルトラヴォックスといえば、この曲」だそうだ。
「メチャメチャポップで、サビは一緒に歌いたくなるようなメロディー。音は80年代ばりばりのシンセサイザーを使った音なんだけど、どこかミッジさんの故郷スコットランドの冬の景色を思わせる、哀愁のある、湿り気のある曲」と。
Ultravoxはミッジ加入前のジョン・フォックスのときもクールなニューウェイブサウンドがカッコいいので、興味のある方はぜひ、と。「ジョン・フォックス時代のほうが好きだよ、という方も多いかも」
音源だけですけど、「Dangerous Rhythm」と「My Sex」。
Dangerous Rhythm - My Sex — Ultravox! (1977)
最後は、ソロアルバムからシングルカットされた「If I Was」(1985年、『The Gift』)。
84年にBand Aidを大成功させたあとのソロアルバム。
草野「Ultravoxよりさらにポップで、穏やかなサウンド」
あの時代の雰囲気を彷彿とさせるものがあるなあ。泡と消えたけれど、豊かだったかもしれない時代?
深夜にヘッドホンで一人で聴いていたら、ちょっと泣けてくるかもしれない。
その後は、ライブも音源リリースも精力的にこなし、2005年、大英帝国勲章を叙勲。
2008年にUltravox再結成で、10年かけてツアー。2012年にはアルバム『Brilliant』をリリース。
オフィシャルサイトによると、ヴィサージュ、ウルトラヴォックスをフューチャーしたライブ進行中とか。
年明けには観客との対話ありのライブを計画しているとか。
草野「これ、座談会みたいなもんですかね。お客さんもドキドキですよね。手を上げたのはいいけど、『質問すること、忘れました』ってなりそう、オレ」(笑)
特集の最後に。
草野「ロックミュージシャンのなかでは、基本、常にポップなフィールドにいらっしゃる」
今日の曲を聴きながら「バランス感覚のいい方」という印象を改めて感じたそうだ。
草野「クリスマスシーズンに、『Do they Know it’s Christmas?』が流れてきたとき、ミッジ・ユーロさんを思い出してくれたらなと思います」
そして今夜も最後は、「ちょっぴりタイムマシン」のコーナー。
曲は、Jitterin' Jinの「帰っておいで」(1991年、5thシングル)。
草野くんのJitterin' Jinn好きは結構有名。
草野「2000年にホワイトベリーがカバーした『夏祭り』が有名だけど、ほかにもいい曲たくさんあるんで」
ラジオで彼らの曲をよくかけていたら、それをきっかけに「リーダーのジンタさんにお会いすることがあったのですが、お互いにもじもじしてしまって静かな時間だけが流れたという記憶があります。リスペクトだけはしっかり伝えたのですが、覚えていらっしゃるでしょうか」と。
いいなあ。声も気持ちいいし、はっきりした言葉たち、少しアンバランスなリズム。どれもまさに、Jitterin' Jinn!
そして来週は、「ビートルズのカバー曲で漫遊記」。
この秋、映画『イエスタデイ』を見て、改めて「ビートルズってすげーな」と感じた草野マサムネが「いい感じのビートルズカバー曲」を独断で選んで聴かせてくれるそうだ。
これはちょっとうれしい。