ちょっと実験的な感じで書いてみた第三者視点。
金曜日の仕事終わりにはいつも駅前のカフェに行く。オーク材を使った扉を開けると、店の奥の座り心地の良いソファに腰を下ろして一息ついたのを見計らったように、顔なじみのウエイターが水を持ってくる。今週のおススメの中からバニラマカデミアのフレーバーコーヒーを注文した。
バッグの中から手帳を取り出し、週末の予定を確認すると見事に空欄になっている。
(明日は服の入れ替えでもしようかしら)
などと手帳を机の上に放り出してテーブルに頬杖を突いた。何気なさを装って窓際のテーブル席に目をやると特徴的な頭頂部のくせ毛が観葉植物の陰から見えた。
(あ、工藤新一)
「平成のシャーロック・ホームズ」としてマスコミなどに取り上げられている名探偵を知ってはいたが、遠くの世界の存在だと思っていた。それがこの店に通うようになってから何度か見かけるようになっていた。
TVの向こうにいる人たちが持っていると思っていた「有名人」という雰囲気を漂わせているわけではないが、整った顔立ちや落ち着いた物腰に一目見た時から目が惹きつけられるのを感じた。それ以来、金曜日にこのカフェで工藤新一に会えると何となくウキウキとした気分で週末を迎えている自分がいる。
と、そこにウエイターが注文してきた飲み物を運んできたので、慌てて手帳を閉じバッグの中に放り込む。テーブルの上に置かれたカップを手に取ると甘い香りが鼻孔をくすぐる。夏の間はあっさりとしたブレンドを飲んでいたのが、少し秋めいてきたのでフレーバーコーヒーを選んだのはどうやら正解だったようだ。
(美味しいコーヒーに、工藤新一も居たし。この週末は良い事ありそう)
一口飲むと口いっぱいに広がる甘く温かな味わいに一週間の疲れも吹き飛ぶようだ。
チラリと視線を窓際に送るといつもは本を読んだり、資料に目を通したりしている彼が珍しく窓の外を眺めていた。
(なにかあったのかしら?まさか難事件とか?…なんてね)
肩をすくめてカップを口に運ぶと、バッグから雑誌を取り出した。
しばらく雑誌のページをめくっていたが、ふと顔を上げて工藤新一をみると今日はなぜか妙にソワソワしているように見えた。気遣わしげに腕時計と窓の外を見比べていた彼が、ふいに破顔した。
(へえ、工藤新一ってあんな表情するんだ)
TVで見ている理知的な顔でもなく、たまにこの店で見る落ち着いた様子でもなく、年相応の普通の少年の表情。
その時、カフェの扉が開いて明るい紅茶色の髪の女性が入ってきた。
「志保」
工藤新一が嬉しそうに女性に手を振る。
「ごめんなさい。遅くなってしまって」
「気にすんなって。いつもはオレの方が待たせてるんだからよ」
立ち上がって女性の荷物を受け取って席にエスコートするその顔はバニラの香りの様に甘やかだ。
(…よ~し!明日は出かけて美味しいものでも食べてこよう!)
何となく落ち込む気持ちを振り払うように気合いを入れて甘いコーヒーを飲み干した。
以前に書いた「珈琲と彼女」という小話の新一Ver.です。新一が推理をまとめたり、捜査の息抜きに行くカフェの常連客視点、のつもりです。
警視庁の側の店なので、事件解決後に志保さんをデートに誘った待合わせという設定だったり。
金曜日の仕事終わりにはいつも駅前のカフェに行く。オーク材を使った扉を開けると、店の奥の座り心地の良いソファに腰を下ろして一息ついたのを見計らったように、顔なじみのウエイターが水を持ってくる。今週のおススメの中からバニラマカデミアのフレーバーコーヒーを注文した。
バッグの中から手帳を取り出し、週末の予定を確認すると見事に空欄になっている。
(明日は服の入れ替えでもしようかしら)
などと手帳を机の上に放り出してテーブルに頬杖を突いた。何気なさを装って窓際のテーブル席に目をやると特徴的な頭頂部のくせ毛が観葉植物の陰から見えた。
(あ、工藤新一)
「平成のシャーロック・ホームズ」としてマスコミなどに取り上げられている名探偵を知ってはいたが、遠くの世界の存在だと思っていた。それがこの店に通うようになってから何度か見かけるようになっていた。
TVの向こうにいる人たちが持っていると思っていた「有名人」という雰囲気を漂わせているわけではないが、整った顔立ちや落ち着いた物腰に一目見た時から目が惹きつけられるのを感じた。それ以来、金曜日にこのカフェで工藤新一に会えると何となくウキウキとした気分で週末を迎えている自分がいる。
と、そこにウエイターが注文してきた飲み物を運んできたので、慌てて手帳を閉じバッグの中に放り込む。テーブルの上に置かれたカップを手に取ると甘い香りが鼻孔をくすぐる。夏の間はあっさりとしたブレンドを飲んでいたのが、少し秋めいてきたのでフレーバーコーヒーを選んだのはどうやら正解だったようだ。
(美味しいコーヒーに、工藤新一も居たし。この週末は良い事ありそう)
一口飲むと口いっぱいに広がる甘く温かな味わいに一週間の疲れも吹き飛ぶようだ。
チラリと視線を窓際に送るといつもは本を読んだり、資料に目を通したりしている彼が珍しく窓の外を眺めていた。
(なにかあったのかしら?まさか難事件とか?…なんてね)
肩をすくめてカップを口に運ぶと、バッグから雑誌を取り出した。
しばらく雑誌のページをめくっていたが、ふと顔を上げて工藤新一をみると今日はなぜか妙にソワソワしているように見えた。気遣わしげに腕時計と窓の外を見比べていた彼が、ふいに破顔した。
(へえ、工藤新一ってあんな表情するんだ)
TVで見ている理知的な顔でもなく、たまにこの店で見る落ち着いた様子でもなく、年相応の普通の少年の表情。
その時、カフェの扉が開いて明るい紅茶色の髪の女性が入ってきた。
「志保」
工藤新一が嬉しそうに女性に手を振る。
「ごめんなさい。遅くなってしまって」
「気にすんなって。いつもはオレの方が待たせてるんだからよ」
立ち上がって女性の荷物を受け取って席にエスコートするその顔はバニラの香りの様に甘やかだ。
(…よ~し!明日は出かけて美味しいものでも食べてこよう!)
何となく落ち込む気持ちを振り払うように気合いを入れて甘いコーヒーを飲み干した。
以前に書いた「珈琲と彼女」という小話の新一Ver.です。新一が推理をまとめたり、捜査の息抜きに行くカフェの常連客視点、のつもりです。
警視庁の側の店なので、事件解決後に志保さんをデートに誘った待合わせという設定だったり。
おねえさんの週末の憩いの場が…工藤と同じ店に通ったばっかりに可哀想に(否定はしない)。