kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ

2016年05月10日 | ★★★☆☆
日時:5月7日
映画館:バルト11

毎回、もういいやと思いながらも、ついつい劇場に足を運んでしまうマーベルの「アベンジャーズ」シリーズ。今回は思想の相違から遂に両雄が激突してしまう。

シリーズとして、これまでの経緯のおさらいが必要なので、必然的に前半部分は長くなってしまう。
割と能天気な雰囲気が良かった本シリーズだが、今回は「映画のフレーム外の描かれない数多くの死傷者」に触れられ、重苦しいハードな空気が漂う。

政治的な手続きを踏んで実力行使するか、自らの正義に従い悪を罰するかで逡巡するヒーローたちは、9.11以降のアメリカの姿を如実に表していると思う。
ただ、彼らの立場は「ノブレス・オブリージュ」とも言えるので、あまり感情移入できる余地がない。ここら辺が同じ戸惑いがあったとしても、70年代の映画と違うところだ。

主人公は一応、キャプテン・アメリカとアイアンマンなのだが、やはり一番の見どころは「内戦(シビル・ウォー)」。お互いの陣営が助っ人を集めるくだりは、「その道のプロ大集合」ものの定番を思わせて、なかなか良い。

両陣営のヒーローたちがその能力を活かして激突する様は興奮もの。このシーンが本作の一番の見どころだ。
その中でも特に光っているのは、アントマンとスパイダーマン。前者は先の映画を観そびれたことが悔やまれて仕方ないし、後者は新シリーズの開幕が楽しみで仕方ない。(サム・ライミの3作は観たが、アメージング版は未見。)さらにこの二人が登場したことで、重々しい雰囲気が払拭され嫌味がない。

ワンダ・マキシモフを演じるエリザベス・オルセンも何とも言えない妖しい雰囲気と超パワーがいいです。(本作、女優陣が異様に充実しています。)

その後、シベリアでの最終対決となるが、クライマックスに至る伏線の張り方が見事。ちょっと時系列に無理がないこともないが、そこは目をつむろう。(ちなみにトニー・スターク母を演じるのは、ホープ・デイビス。どこぞで見た顔だと思ったら、「ウェイワード・パインズ」の先生だった。)
今回の悪役ジモ大佐を演じるのは、ダニエル・ブリュール。なかなか、おいしい役どころ。(「虐殺器官」のジョン・ポールを思わせる。)

10年越しの展開でどんどんキャラクターと風呂敷を広げて、ちゃんと畳んでしまう力技は相変わらずすごいとしか言いようがない。

ところで、新スパイダーマンシリーズのメイおばさんの演じるのは、問題男子の救いの女神、マリッサ・トメイ。こんなエロい人がおばさんって、だめでしょう。(笑)






題名:シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
原題:Captain America: Civil War
監督:ルッソ兄弟
出演:クリス・エヴァンス、ロバート・ダウニー・Jr、スカーレット・ヨハンソン、セバスチャン・スタン
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マネー・ショート 華麗なる大逆転

2016年05月08日 | ★★★☆☆
ワタシの映画評価基準は3通りあって「面白い映画」「楽しい映画」「よくできた映画」なのだが、この映画は決して「楽しく」はない。
単純に「面白い」という訳でもない。「よくできていて、面白い」映画というべきだろう。

2008年に起きたリーマンショックと世界恐慌を予測した銀行マンやファンドマネージャーの活躍を描く・・・と言えば聞こえはいいが、実は「暗闘を描く。」といった方がかなり正確。世の中の経済システムが狂っているなら、その狂気に乗っかって大稼ぎしてやろうという山師の映画だ。

その、とにかく複雑な金融と経済システムを解説しつつ、ちゃんと娯楽映画に仕上げている。

一応、この映画には4人の主人公がいることになっており、このアウトロー4人がさも手を組んで・・・みたいに思えるのだが、実は4人にはほとんど接点がない。ブラピなどに至っては、他の3人と全く顔を合わせない。

残念ながら、個人的にこの4人には感情移入できる要素が全くない。こういった銀行マンにも証券マンにもファンドマネージャーにもお目にかかったこともなければ、知り合いにもいない。日々の株式市場が今の生活に直結していることもない。彼らが血眼になって動かしている金融市場もスケールが分からないから、ことの重大さがピンとこない。
これが「誤って人を殺した。」とか「浮気が奥さんにばれた。」とかいうような話だったら、もっと慌てようもあるのだが、「○○億ドルの損失」って言われても・・・。

劇中で語られるように結局ババを引くのは、無知な低所得者層の人たちで、金の亡者がしっぺ返しを食らうことはない。形だけのカタルシスも描かれず、とても楽しい映画とは言えない。

時系列で事態を追いかけても面白くなさそうな話を面白くしているのは、その表現手腕。色んなたとえ話を盛り込み、登場人物が事態を説明し、フラッシュバックの映像で時代をつなげる。スコセッシの表現をもっと慌ただしくしたようで、それでいて分かりやすい。コメディとかギャグマンガの手法なのだが、それが功を奏している。

4人の中で印象に残り、輝いているのはスティーブ・カレル。世の中全てに腹を立てていて、それでいてその世界の上でメシを食っている。さらに有能で見立てが素晴らしいから、4人の部下も従っている。そんな自分に釈然としないから、セラピーにも通っている。極端になりそうなキャラを微妙なサジ加減で演じている。

で、この旦那を支える妻がマリッサ・トメイ。「レスラー」とか「リ:ライフ」とか女神様のような女優ですね。(笑)






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バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生

2016年04月10日 | ★★★☆☆
日時:4月8日
映画館:バルト11

ワタシのような世代で「正義の味方対正義の味方」と言えば、東映まんがまつりの「マジンガーZ対デビルマン」とか「グレートマジンガー対ゲッターロボ」を思い浮かべるわけですね。当然のことながら、本格的に衝突するわけではなく、言い争いか、せいぜい先陣争いくらい。

バットマン対スーパーマンと言っても結局は・・・という匂いを感じるのです。

もちろん、どういう展開でそうなるのかというのが、話の見せどころなのですが、二人が衝突にいたるくだりはいささか、まどろっこしいし、しょっちゅう場面が切り替わるので落ち着かない。さらに元々、二人のいる世界観が違うので何か上手くかみ合えない。暗躍する傭兵部隊なんて住んでいる世界がちょっと違う。

そこで活躍するのが、本作の悪役、ジェシー・アイゼンバーグ扮するレックス・ルーサー。若き天才で猫背に甲高い声、異様に高いテンションで悪事を推し進めていくパートが一番面白い。中盤、彼の悪事が一つの成果を上げるシーンは一番ワクワクします。

監督のザック・シュナイダーは映像の見せ方は手慣れたもので、決めの構図とか緩急のつけ方とか原作付きのこの手の映画を作らせたらさすが、劇場で観た一瞬だけは興奮できますね。(一応、ほめ言葉)

クライマックス(といっても30分以上あったような気がする)、バットマンとスーパーマンが力まかせの対決をし、さらにラスボスが登場して、メトロポリスとゴッサム・シティは火だるまの大惨事。石油コンビナートまで爆発して、強烈な環境破壊でもはや人間の住める状態ではないな。両市の市民の皆さまはご愁傷さまというしかない。

今回、面白かったのが、キャスティング。
ブルース・ウェインを演じるのは、ベン・アフレック。悪くはないのだが、彼の役柄の広さ(「ゴーン・ガール」とか)が裏目に出なければ良いのだがと思う。今後、正義の味方軍団を引っ張るトニー・スタークとかキャプテン・アメリカの役割を担えるのだろうか。

そのウェインの執事がジェレミー・アイアンズ!?かって「運命の逆転」の伯爵役でオスカーを受賞した御方なるぞ。マイケル・ガフやマイケル・ケインと役者の種類が違うんじゃないか。引退したブルース・ウェインがアイアンズで、その後を継いだロビンが今のベン・アフレックじゃないかと思わせるね。

議員役がホリー・ハンター、スーパーマンのお母さんがダイアン・レイン。二人とも同世代の女優さんだけど、すっかりおばあちゃん(役)になってしまった・・・。時代の流れは残酷だなあ。

このシリーズ、これから5年は続くらしい。実はそのお膳立てをしたのはレックス・ルーサー。結局、この映画の主人公は彼だったのではないだろうか。不安材料がないこともないが、お付き合いできる水準を維持してほしいものだ。

ところで、今回、無理やり登場させられたとしか思えないワンダーウーマン。演じるのはガル・ガドット。この響き、どう聞いてもスタートレックのカーデシア人の軍人ですね。(そう思っている人は多いはずだ。)
題名:マネー・ショート 華麗なる大逆転
原題:The Big Short
監督:アダム・マッケイ
出演:クリスチャン・ベール、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット、スティーブ・カレル






題名:バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生
原題:BATMAN v SUPERMAN : Dawn of Justice
監督:ザック・シュナイダー
出演:ベン・アフレック、ヘンリー・カヴィル、エイミー・アービング、ジェレミー・アイアンズ、ジェシー・アイゼンバーグ
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マッテオ神父の事件簿(TVシリーズ)

2016年03月14日 | ★★★☆☆
AXNミステリーで日本初放送が始まったテレンス・ヒルのテレビシリーズ「マッテオ神父の事件簿(DON MATTEO)」。本国イタリアでは15年10シーズンも続く大人気シリーズで、今世紀に入ってからのテレンス・ヒルのインタビューはこの「DON MATTEO」の話ばっかしである。

日本では第7シーズンからなので、シリーズの全体像をちゃんと把握していないかも知れないが、テレンス・ヒルが演じるのはイタリアの田舎町グッビオのマッテオ神父。同地で起きる数々の事件をカラビニエリ(軍警察)を助けて解決していく。(グッビオはほのぼの田舎町なのだが、事件の8割は傷害事件、2割は殺人事件という隠れ凶悪な町。)

マッテオ神父は実は様々な隠れ技能を持っており、その才能を活かして事件の解決に結び付けていく。どこで身につけたかわからない技を持っているあたり、ノーボディやトリニティに通じるところがあり、「飄々としたスーパーマン」というのが、イタリア人がヒルに期待する役柄ってことなんだろうな。

このシーズンでは荒馬乗りのシーンもあり、70歳を超えても、さっそうとした手綱さばきを見せてくれるもんだから、涙が出そうになったよ。(さすがに神父なのでクイックドローはしてくれないが・・・)

マッテオ神父は職業柄、力づくではなく、人の心に訴えかける説教で事件を解決する。これが刑事ものなどの他のミステリーとは一味違うイタリアらしい心温まる解決方法で、そこが15年も続く人気の秘訣なんだろうなと思う。
ワタシもテレンス・ヒルに人生を諭されたら、すぐ自供してしまうな。

その一方でイタリアらしいコミカルでオーバーアクトなパートはカラビニエリやグッビオの住民が担っており、上手くバランスを取っている。(日本人受けするかどうかは別だが。)

ゲストスターに「黄金の七人」のフィリップ・ルロワやシドニー・ローム、ニーノ・ベンヴェヌーティなども出ており、まったく油断ができない。

ところで日本では1週間で4話の一気放送。さすがに追いかけるのが大変なのだが、ぜひ他のシーズンも放送してほしいところだ。

2018年6月追記
ようやくシーズン8を観終わったので追記。
元々、テレンス・ヒルはイタリアで人気があったが、本シリーズで人気は不動のものとなったようだ。

【ストーリー】
田舎町グッビオで何からの事件が発生し、事件に関わったマッテオ神父(自分からは積極的には関与しない)が解決するのが基本ストーリー。
ほとんどが金や家庭内の揉め事が事件の発端で、根っからの悪人は登場しない。移民やシングルマザー、環境問題、福祉制度など社会的な問題が背景になることも多く、その辺、イタリア的かも。
マッテオ神父は生真面目な性格で派手な捜査もしないので、それでは1時間持たない。そこでカラビニエリと司祭館の皆さんが起こす瑣末なトラブル(基本痴話喧嘩)がサイドストーリーとして進展する。

【登場人物】
マッテオ神父(テレンス・ヒル)
我らがマカロニウエスタンのヒーロー!なのだが、我々におなじみの口八丁手八丁のキャラではなく、物静かな神父であり卓越した推理力でイエスの愛を説いて、事件を解決する。ある意味、一番地味な人物。

■カラビニエリ(軍警察)側
ジュリオ・トンマーゾ大尉(シモーネ・モンテドーロ)
カラビニエリの若き署長。有能だが、マッテオ神父がなんだなんだと事件を解決してしまうのを快く思ってない。
副官であるチェッキーニ准尉の愛娘、パトリッィアと交際している。

ニーノ・チェッキーニ准尉(ニーノ・フラッシカ)
マッテオ神父の親友。チェス友達でいつも捜査の相談に乗ってもらっている。トンマーゾ大尉とは通りを挟んで隣同士。
おっちょこちょいでおせっかい焼きという典型的なコミカルパートな人で、事件以外のトラブルの8割は彼が引き起こしている。

セヴェリーノ(ジュゼッペ・サルファロ)
新任警官。チェッキーニ准尉のいとこで、彼の使い走りもやらされる。堅物で古臭く回りくどい言い回しが特徴。

ギゾーニ(ピエトロ・プルチーニ)
警官。グッビオのカラビニエリで唯一揉め事を起こさない有能な人物。

コンティ検事補(エレオーノラ・セルジオ)
グッビオを所管する若き検事補。若くて美人なので、何をしても誤解を招いてしまう罪な人。

■司祭館側
ナタリーナ(ナタリー・グエッタ)
司祭館を取り仕切る口やかましいしっかり者。我が強く、事件以外のトラブルの2割は彼女が原因。実生活ではいてほしくないタイプ。

ピッポ(フランチェスコ・スカリ)
聖具係の男性。ナタリーナの相方的役回り。

ラウラ(ラウラ・ロマン)
司祭館で生活しているシングルマザー。クールな性格で皆に心配されるが、根は優しい。

■その他
パトリッツィア(パメラ・サイノ)
チェッキーニ准尉の愛娘。法律を勉強中(後に弁護士)。トンマーゾ大尉とお付き合いしているが、その道のりは平坦ではない。
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スティーブ・ジョブズ

2016年02月15日 | ★★★☆☆
日時:2月14日
映画館:バルト11

アップルのスティーブ・ジョブズの強烈な個性を、ダニー・ボイルが独特の手法で描く。

彼の生涯を通り一遍に描くのではなく、マッキントッシュ、NEXT、iMacの3回の商品発表の場を舞台とし、あとは登場人物の会話と回想で映画を成立させる。映画そのものが演劇舞台のようであり、大仰な音楽の使い方はオーケストラボックスで実演されているかのようだ。

登場人物も絞り込んで、関係者たちを女性広報担当重役のホフマン、かっての事業パートナーであるスティーブ・ウォルズニアック、ジョン・スカリー、アンディ・ハーツマン、娘のリサの5人に集約し、彼らとの会話を通して、ジョブズの人となりを浮きだたせていく。(ウォルター・アイザックスのベストセラー「スティーブ・ジョブズ」を読む限りでは発表の場で劇中で描かれるようなトラブルがあったかどうかはわからない。)

ジョブズを演じているのは頭大きい、足短い、ナニがデカイ、ミヒャエル・ファスベンダー。はっきり言って、全然ジョブズに似ていないのだが、高慢で人間味に乏しい反面、激しやすいジョブズにふさわしいキャスティングだ。(ファスベンダーの役って、そんな役ばかりのような気がする。「イングロリアス・バスターズ」とか「X-メン ファースト・ジェネレーション」とか「プロメテウス」とか)もっとも引き込まれるような演技のおかげで先の著作に記されていた人間像が再現されている。

ホフマンを演じるのはケイト・ウィンスレット。80年代の大柄な眼鏡をしているから彼女と気づかないのだが、ビジネスパートナーと男女の感情の微妙な距離感が切ない。

全体に基礎知識がないとわかりづらいのだが、多分、基礎知識があっても分かりづらい構成だろう。多分、この映画が描くのはアップル=ジョブズのビジネス成功譚ではなく、悩める一人のややこしい男なんだろうな。逆説的だが、アップルの基礎知識がない人の方が飲み込みやすい映画かも知れない。(そもそもアップルに興味のない人が観客になるのかどうか疑問だが。)

面白いと感じたのは、大胆な手法・語り口の映画であるにも関わらず、製作サイドで一定の興業成績が見込めると判断されたであろうということ。それはやはりこれがジョブズの物語であったからであり、アメリカ人にはジョブスの人物像とサクセスストーリーが日本以上に認知されていることが見えるような気がした。ビジネスパーソンではなく、現代の偉人として位置づけられているのだろうな。

ところで、クリスアンを演じたキャサリン・ウォーターストン。最近見た覚えがあるのだが、どうしても思い出せない。劇場の帰り、ハワイアンパンケーキの店の前で「もっとパンケーキを!」とつぶやいて思い出した。先日見た「インヒアレント・ヴァイス」に出てたんだ。






題名:スティーブ・ジョブズ
原題:Steve Jobs
監督:ダニー・ボイル
出演:ミヒャエル・ファスベンダー、ケイト・ウィンスレット、セス・ローゲン、ジェフ・ダニエルズ
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スター・ウォーズ/フォースの覚醒

2015年12月28日 | ★★★☆☆
日時:12月26日
映画館:サロンシネマ
パンフレット:A4版1,000円。これでもかっというくらい盛りだくさんの内容。もちろん、全体の5分の1はグッズの広告。(笑)

本当は年明けにでも見に行くつもりだったのだが、「行きつけバーの常連さんたちで連れ立って行こう!」と前半は何だか大人っぽくてカッコいいが、後半は中二病という展開で今年最後の映画となりました。

結論から言うと、「良くも悪くも無い」。

今回、観ている時から感じたのが、「スターウォーズ」に対するジレンマ。
遠い遠い昔、「スターウォーズ」と言えば、見たことのない世界を展開させてくれるものだったような気がする。
ところが、このシリーズが先陣を切ったことで、特殊効果技術が格段に進歩し、いまやCG技術によって見たことない映像がほぼほぼ想像できなくなってしまった。(エピソード1~3のプロダクションデザインにあった突飛すぎる現実味の無さは、そんなことが裏目に出た結果ではないか。)

「スターウォーズ」の革新的な映像による新鮮味が薄れる一方で、かっての人気キャラクターが登場して世界観を維持しないと観客が納得しない。こうなることでますます見たことのあるような映像になっているように感じる。タイ・ファイターなんて、大気圏内を飛行されているとどっちつかずの感じで、ちょっと居心地が悪い。

「いつも一緒で、いつも違う」というのはシリーズものの鉄則だが、大ヒットゆえにどっちに転んでも批判を受けてしまうバランスの難しさに突き当たっているのではなかろうか?(その辺、長い歴史の中で上手に迷走してきたのが、007シリーズだと思う。)

また、今回は、ルーカスの世界観以上にJ.J.エイブラムス監督色が色濃くでているようにも思う。
新シリーズ第1作目ということで色々と伏線らしきものを張っているが、彼が製作したTVシリーズにあった「謎と風呂敷を広げるだけ広げて、全部畳みきらない」匂いがするなあ。「マルタの鷹」争奪戦は彼の作品の定番シチュエーションだが、今回のキーアイテムを誰がなぜ作ったのかは、永遠に解き明かされないんだろうな。

特に出生の秘密をめぐる展開が「エイリアス」の雰囲気に似ていなくもない。女声だったキャプテン・ファズマが「実はレイの腹違いのお姉さんでした。」というオチがついても驚きはしない。

ちなみに今回からの新キャラクター、Xウィングパイロットのウェクスリーを演じるグレッグ・グランバーグはJ.J.エイブラムス作品の古くからの常連さん。多分、エピソード9まで生き残るはず。

あと、思いついたことをつらつらと。

敵役の帝国軍残党ファースト・オーダーはこれまで以上にナチ色が強くなる一方、かっての帝国軍のように完全無欠ではなく、いろんな意味で隙だらけのところが新鮮。途中、解体せずにエピソード9まで頑張れるのだろうか。

Maz Kanataのモデルは、おじゃる丸のタナカヨシコ?
名前も雰囲気も似ている。
http://www3.nhk.or.jp/anime/ojaru/chara/popup/tanaka.html
ウソです。

J.J.エイブラムスの作品って期待させるだけさせて、最後は・・・ということが少なくないだけに、不安材料も残るのだが、いずれにしても次作を楽しみに待つとしましょう。

ところで、今回サロンシネマでの鑑賞だったが、劇場には2月上映予定の食人族映画「グリーン・インフェルノ」のチラシが。某氏の強いフォースを感じたなあ。









題名:スター・ウォーズ/フォースの覚醒
原題:STAR WARS THE FORCE AWAKENS
監督:J.J.エイブラムス
出演:デイジー・リドリー、ジョン・ボイエガ、ハリソン・フォード、キャリー・フィッシャー
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ヴィジット

2015年12月14日 | ★★★☆☆
日時:12月13日
映画館:サロンシネマ

久しぶりにシャマランらしい映画と評判の本作。確かにシャマラン節復活。

長らく疎遠で初めて会う祖父母の家に1週間のお泊りに行くことになった姉弟。大歓迎してくれた祖父母だったが、やがてその家には異様な雰囲気があることがわかり・・・
と、いつものように謎めいていて、時々ビックリするような描写が話を盛り上げてくれる。

今回、お姉ちゃんが自主ビデオ作品を撮影しているという流行りのPOV映像なのだが、2台のカメラを使っているという無理のない設定で画面展開もさほど無理はない。

シャマラン映画はオチを知ると「な~んだ」と思うことが多く、途中の展開も「3家族であんなに出産できるかい!(ヴィレッジ)」とか「水が苦手なら、何で地表の7割が水に覆われた惑星に攻めてくるねん!(サイン)」とか思ってしまうんだけど、やはり展開の上手さは抜きんでている。

実はワタシは途中でオチが分かっちゃったんだけど、まあ、「姉の妄想」から「宇宙人の侵略」まで10コぐらい当たりをつけていたら1つぐらいは当たるわな。(笑)とは言え、やはりストーリーの盛り上げ方とか謎の広げ方、ミスディレクションの手法とか手慣れたもの。

シャマラン映画には、結構、下敷き、モチーフとなる名作映画があると思うのだが、(以下、暗号化してネタバレを書きますので、気になる方は読み飛ばしてください。)
今回はジョン・大工の10月下旬のイベントをタイトルにしたホラー映画を思わせる。エスケープ・フロム・アサイラムな人という設定や白く盛り上がる場面はまんまだし、寝る場所の下に誰かいるというのも伝説そのもの。ストーリーそのものは全然違うが、後半はトリック・オア・トリートな映画を意識しているなあ。

さんざんヒヤヒヤさせられながらも、シャマラン映画は納得の出来ない、後味が悪いオチにはならないので、その点は安心して見ていられたな。特に今回は子どもが主役だったし。

ところで、シャマランもひと昔前に流行ったから、今の若い人にしてみたら本作でも新鮮に映るんだろうな。






題名:ヴィジット
原題:THE VISIT
監督:M・ナイト・シャマラン
出演:オリヴィア・デヨング、エド・オクセンボウルド、ディアナ・ダナガン、ピーター・マクロビー、キャスリン・ハーン
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ジョン・ウィック

2015年10月25日 | ★★★☆☆
日時:10月24日
映画館:バルト11

キアヌ・リーブス扮するジョン・ウィックは病気で妻を失い、失意のどん底に落とされるが、その妻が残してくれたビーグル犬と新しい人生を歩もうとする。しかし、愛車の69年式マスタングに目を付けたロシア人のチンピラが強盗に押し入り、車を盗んだ上、子犬まで殺してしまう。
ジョン・ウィックの正体は伝説の暗殺者であり、ロシア人のチンピラへの復讐を誓うが、こいつがジョン・ウィックのかっての依頼主だったロシアン・マフィアのドラ息子で、父親は組織をあげて対抗してくる。

とまあ、腕に覚えのある者が大切なものを奪われ、復讐するという王道ストーリーで、伝説の殺し屋に対抗して、組織も殺し屋を雇ったりするから、一大殺戮劇が展開する。よくある話なだけに凡庸な映画になりがちなのだが、この映画は一味違う。

まず、絵がきれい。画面の精細さがよく出ていて、ブルーとグレーを基調にしたいずれのシーンも美しい。それだけで全然別のジャンルの映画のように見える。

さらにアクションとか暴力シーン以外の描き方が実に丁寧。最初、妻を失うまでのくだりがこの手の映画にしては珍しく、しっかりと描かれる。ジョン・ウィックが伝説の殺し屋ってことなんて、もう分かっているんだから、まどろっこしくもあるのだが、ここがしっかり語られていることで、その後の彼の行動に説得力が出てくる。

また、幕間劇として殺し屋ネットワークの存在が語られるのだが、これも描き方が丁寧。自宅に殴りこんできた暗殺部隊を一掃したら、死体をちゃんと処理してくれる「産業廃棄物」業者(このボスを演じているのが、デビッド・パトリック・ケリー!70年代から90年代頃までチンケな悪党役で活躍していた彼を起用しているあたり、ものすごく嬉しい。)がいるし、ニューヨークのど真ん中には殺し屋だけが使える一流ホテルがあって、いろんな面でサービス満点なら、地下の秘密クラブで情報交換も出来る。
実に映画の半分くらいはこのホテルとネットワークの話だといってもいいくらい、時間も手間もかけられており、そこが本当に面白い。

先のデビッド・パトリック・ケリーをはじめ、盗難車向けサービス屋がジョン・レグイザモ、殺し屋友達のスナイパーがウィレム・デフォーと絵に描いたようなキャスティングもいい。

キアヌは殺しのスキルを活かして、目標にむかって次々と邪魔者を排除していくのだが、弾着のCGとも相まって、なかなかテンポがよい。いささかゲーム感覚ではあるのだが、一昔前の「スタイリッシュな映像」って言葉を思い出したよ。

キアヌは銃だけでなく、格闘技やナイフでも殺しを遂行するのだが、微妙に老いや肉体の衰えを感じさせてくれる。年を経るごとに味わいが出てきていると思うのだが、なんと言ってもあの髪型、あのヒゲ面、あのファッションで主役を張って、違和感を感じさせないのはキアヌ・リーブスくらいじゃなかろうか。(笑)

ところで、エンドクレジットでプロデューサーにエヴァ・ランゴリアの名が。「デスパレートな妻」だった彼女も今やプロデューサー業に転身とはね。







題名:ジョン・ウィック
原題:John Wick
監督:チャド・スタエルスキー
出演:キアヌ・リーブス、ミカエル・ニクヴィスト、ウィレム・デフォー
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ナイトクローラー

2015年10月10日 | ★★★☆☆
日時:10月5日
映画館:シネツイン

チラシを見たとき、主演がワタシの好きなクライブ・オーウェンかと思ったのだが、実はジェイク・ギレンホールド。一瞬、躊躇したが、予告編が面白そうだったので、劇場へ。

ロスで屑鉄泥棒とかをやって日々生活をしているチンピラまがい、ルーは、ある日、事故現場を取材する独立系映像取材クルーを見て、一発狙いの真似事で取材を開始。(映像機材の原資は、もちろんコソ泥で稼ぎ出す。)モラルの低い取材で撮影したどぎつい映像を地元CATVに売り込み、その道で仕事をしていくことになる。世間知らずの若者をただ同然に雇い、むちゃくちゃな取材でセンセーショナルなネタを連発。落ち目の契約ディレクター、レネ・ルッソと組んで、取材という名の犯罪がエスカレートしていく。

このルーを演じているのが、ジェイク・ギレンホールド。痩せこけた上にギョロ目のジェイクはほとんど喜怒哀楽を顔に出さず、したり顔でビジネスの心得を知ったげに説教する全然感情移入できないキャラクター。まあ、そこは俳優としての彼の思惑通りだろう。

ただ、成り上がらんとするルーのエネルギーとバイタリティはなかなかのもので、いい画をモノにするためには重傷者を見栄えのいい位置に移しかえることなど意にも介さない。
彼に映像製作者として教育や経験があれば、一定のモラルがあり、職業人として越えてはならない一線があったのだろうが、元々チンピラの彼にはそんなものが一切無く、金になると見れば歯止めがかからなくなっていく。

それを裏支えすることになるのがレネ・ルッソで、視聴率のためなら映像のネタ元や撮影方法には眼をつむる悪のビジネス・パートナー。若い頃からのキツイ顔立ちに加え、年の分、ドスまで効いて、ピッタリの役どころ。

フリーランスの取材クルーが活躍できるのは深夜とあって、ロスの夜景がルーたちの巣くう息づく闇をいい感じで表現している。ところどころだけが煌々と明るい感じと街灯しかない道路の暗さの対比がいい。

ジェイク・ギレンホールドのイヤな奴ぶりが際立っていて、「痛い目に会え」とか「早く死ね」とか心の底から願うのだが、なかなかしぶとく、そこがサスペンスを盛り立ててくれる。

決定的瞬間という名の悪趣味な覗き見映像がある限り、彼のような人間は現実でも生き残り続けるんだろうな。






題名:ナイトクローラー
原題:NIGHTCRAWLER
監督:ダン・ギルロイ
出演:ジェイク・ギレンホールド、レネ・ルッソ
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悪党に粛清を

2015年08月27日 | ★★★☆☆
日時:8月23日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版700円。

妻子そして兄を殺害されたハンニバル・レクター博士が悪党を追い詰め、そいつらを食べてしまうというウエスタン・カーニバル・・・もとい、カニバル・ウエスタン・・・って、色んな映画がごっちゃになってます。

広島での公開はほぼ2ヶ月遅れだったが、久しぶりのウエスタン、しかもデンマーク製。元兵士の移民が妻子を殺され、町を牛耳る悪党一味と戦うことになるという復讐たっぷりのマカロニ風味。Don't miss it !!

ロケ地はなんと南アフリカ。アメリカともスペインとも太陽の輝き方が違うし、デジタル撮影による色の発色が今までのウエスタンと一線を画すのだが、いずれにしろ背後に広がる荒野はいいなあ。

上映時間は1時間半ちょっと。シンプルなストーリーがてきぱきと進む。この辺もマカロニ的でいいなあ。
これに絡むのがエヴァ・グリーン扮する悪党側の情婦。一癖も二癖もあって、またしてもエヴァ・グリーンの猛毒っぷりが炸裂。彼女はこの方向で突っ走るのか。(残念ながら今回は脱がない。(笑))

銃撃戦は一味ちがうライフル中心で展開。遠方から狙い撃つちょっとズルい感じが、マッツ・ミケルセンの風貌とマッチして嫌味に感じさせません。

悪党側もメガネ野郎にコルシカ人と無国籍で個性的な顔ぶれを揃えてあたり、マカロニ的で嬉しくなるし、最近の映画にしては珍しく、情け容赦なく殺しを続けてくれる。悪党はこうでないと。
ただ、難を言えば、悪党のボスを演じるジェフリー・ディーン・モーガンに今ひとつ毒々しさが無い。やはり、この手の映画の悪役はもっとケレン味がないと。(「ウォッチメン」のコメディアン役が良かっただけに残念。)

やっぱり、バキュン!バキュン!の映画は良いです。

ところで、観たのは上映2日目、のべ4回め。観客はワタシ含めて2人・・・。バルト11さん、上映してくれてありがとう・・・。






題名:悪党に粛清を
原題:THE SALVATION
監督:クリスチャン・レヴィング
出演:マッツ・ミケルセン、エヴァ・グリーン、ジェフリー・ディーン・モーガン
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